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もしも強さを数字で見ることができたなら  作者: 角刈りチーズ
第3章:帝国戦争編
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第7話:エールラインへようこそ

「それにしてもキーラ、今日はこんなに引き連れてどうしたんだ?単独行動ばかりの君が珍しいな。」

「ちょっとあんたの親父さんに用事があってね。」


そう言ってキーラさんはローエン宰相から受け取った手紙をひらひらと見せた。


「王印!?キーラ、君がそんな手紙を持ってるなんて一体・・・いや、下手に詮索はしないでおこう。友に失礼だな。すぐ案内しよう。」

「悪いね。すぐにわかるけど、急ぎなんでね。」


キーラさんへの信頼がアイシャさんから見て取れた。

二人がいい関係なんだと、今あったばかりの私にもわかる。

素直に羨ましい。


アイシャさんが懐から小さい鈴を取り出した。

チリーン、チリーンと数回鳴らす。

小さい優しい音なんだけど、何故か目の冴える音だった。

鈴の音を聞いた瞬間から視界がどんどん開けていく。

さっきまで森の木々が生い茂るど真ん中にいたはずなのに、みるみるうちに木が消えて、全てが霧に変わっていく。


「すごい!」

「これが常闇の森の正体だったのか。」

「幻術ってこと?」

「残念ながら半分正解。ただの幻術なら誰でも入れてしまう。アーティファクトだよ。」

「霧幻香ですね?」

「ジムくんは物知りだな。正解だよ。」


ジムが説明してくれた。

夢幻香はその名の通りお香の一種で、その匂いを嗅ぐと強力な幻影を見せることができるらしい。

森一体にその香りが漂っていて、エールラインを見つけられないし、森が常に夜だと錯覚していたとのこと。

遠目からも森が黒く見えたのは、香りがそこまで漂ってきてるが故だった。


「でも、そんな匂いの中で暮らしてるエルフの人たちはどうしてるんですか?」

「ふふふ、それは秘密。残念だけど、それはキーラにも教えてない。むしろ、エルフでも知ってる人は少ないことだからね。」

「はいはい!じゃあさっきの鈴は?」

「一時的に夢幻香の効果を消せる鈴さ。」

「・・・待ってください。そんなアーティファクト聞いたことありません。」


ジムがすごい食いついた。

(確かジムはアーティファクトが好きだったよね。)

学校にいるとき、ジムはアーティファクトの図鑑をよく読んでいた。

そのジムが知らないということは、未知なるアーティファクトなのかもしれない。


「そりゃ載ってないさ。これは作ったんだから。」

「!?」


ジムが更に驚いた顔をする。

(こんなに動揺するの珍しいな。)


「伊達にエルフは長生きしてないよ。アーティファクト図鑑を書いた故人ラナ=ジルコニアの意思を継いで研究をしたものが何人もいてね、今はアーティファクト工なんて自分たちで名乗ってるよ。」


それを聞いたジムの顔がパッと明るくなった。

(どうしたんだ?)

このとき誰もジムの夢なんて知る由もない。

ジムにとっては自分の夢、アーティファクトの修理に近づくための貴重な情報だったのだ。

そのためにジムが頑張るのは、また別のお話・・・


そんな話てる間に霧が晴れていた。

目の前には多くの大木と、それをもとに作られた街があった。

(木を使って住居にしてるんだ・・・)

幻想的な光景に私達は感動していた。


「改めて、ようこそ!エールラインへ。」

「エールラインを見て回りたいなら全てが終わった後だぞ〰今はバッカスのおっちゃんに会いに行かないとな。」


キーラさんの一言にハッと我に返る。

(遊びに来てるんじゃないもんね。)

これから待ち受けている困難を改めて思い出し、気を引き締める。


「姉さんの知り合いなんだから、事前に連絡さえくれたらいつでも歓迎するよ。」


アイシャさんが笑顔でそう言ってくれた。


「父は一番奥の家にいるんだ。付いてきてくれたらいい。」


そういってどんどんと町の奥へ進んでいった。

一際大きな木の家に入ると、そこは少し広いがごく普通の家だった。

サクラの家ぐらいの広さで、とても王様が住んでいるようには見えなかった。

入ってすぐ、女の人がいた。


「あらアイシャ、早かったわね。お客さん?」

「ただいま母さん。うん、キーラが父さん用事があるって。」

「お久しぶりです、メリルさん。」

「キーラちゃん久しぶりね。元気だったかしら?それに・・・この3人は?」

「あ・・・えっと私たちは・・・」

「レイア=スレイン、サクラ=バーバリア、ジム=ターナーだね。待っていたよ。」


奥から私たちの名前を言い当てながら男の人が出て来た。


「お久しぶりです。バッカスさん」

「久しいねキーラ。元気そうで何よりだ。」


キーラさんの急な真面目な態度、会話の流れからこの二人が誰なのかすぐに理解できた。

一気に空気が張り詰めた気がする。


「そんなかしこまらなくてもいい。そうしないために、私はわざわざこういう家に住んでるんだよ。改めて、私がバッカス=ルータムだ。一応このエールラインの国王をさせてもらっている。こっちが妻のメリルだ。」

「初めまして3人とも。いつも娘がお世話になってるわね。」


やはりダリアさんのご両親だった。

事前の情報で知っていたとはいえ、やはり国王を前にして緊張しないわけがない。

いくら大丈夫だといわれても、条件反射みたいなものだ。


「バッカスさん、この手紙を読んでいただきたくて。」


キーラさんがローエン宰相から頼まれた手紙を渡そうとする。


「不要だよ。何が書いてあるのかわかってるつもりだ。もう心は決めてある。力を貸そう。」

「!? 」

「さすがはバッカスさんというべきですか?」

「なに、古い友人から頼まれていただけのことだよ。」


バッカスさんは手紙を読まずしてOKを出してくれた。

(古い友人って誰なんだろう・・・)

私たちは疑問に思ったが、聞く前に話が始まった。


「父さん、さすがに説明してくれないと私たちはついていけないよ。」

「そうよあなた。何が書かれている手紙なのそれ?」


バッカスさんは理解していたようだったが、メリルさんとアイシャさんには伝わっていないようだった。

(確かに森でのアイシャさんは何できた?って聞いていたもんね)

バッカスさんはうっかりしていたという顔で2人に説明を始めた。

その説明の内容は手紙を読んでいないにも関わらず、正しい内容だった。

メリルさんとアイシャさんは取り乱す様子はなく、むしろ納得するような表情だった。


「確かに・・・あなたにしかできない役ね。でも、心配は心配よ。」

「ダイムくんもいるんだ、もしもなんてことは早々ないだろう。」

「私に手伝えることは?」

「アイシャは私がいない間、エールラインの守りを頼むよ。ここは帝国以外も狙うものが多いから。」


そういってバッカスさんは優しく二人を諭していた。


「さあ、時間が惜しい作戦だ。早速君たちにはエルフの祝福を受けてもらう。こっちに来なさい。」


そういってバッカスさんと共に、私達は奥の部屋へと進んでいった。

本当は色々書きたいことが多いエールラインですが、話の流れ上そんなに長居させられないというジレンマがありますね・・・

この章が終わった後、ジムにはゆっくりいける時間を作ってあげたいところです。

ジムが食いついてきた理由は番外編の内容を汲んでいますのでそこはご了承ください。

また、バッカスの古い友人も、気づいている方もいるかもしれませんが本編で相手からもバッカスを古い友人と表現していますので出てきています。

そのつながりがあると思っていただけたらと思います。


今までと違って1話1話結構時間をかけるような形で進めているなと感じています。

これを遅いと感じる人もいたら、楽しんでいただけている人もいると思っています。

私もこういう冒険パートは好きな方です。

エールラインではもう数話話続きますんで、もうちょっとお付き合いください。


今回も読んでくださった方々ありがとうございました。

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