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もしも強さを数字で見ることができたなら  作者: 角刈りチーズ
第2章:王都襲撃編
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番外編3:ジムとアーティファクト

幼い頃僕はスラム街にいた。

日々喧嘩の連続で、勝つことができると負けた奴らが牛耳っていた新しいエリアに入る権利がもらえる。

強いものが優先の世界、僕は負け知らずだった。


ある日入ることができるようになったエリアで僕は運命的な出会いを果たす。

部下と一緒に新しいエリアを見て回っているとき、金色の球体を見つけた。

少し中央にひびが入っていて、擦れや汚れが目立つが、よくよく見ると表面には精巧な模様が彫られている。


「兄貴、これなんですか?ガラクタにしては凝ってますね。」

「さあなんだろうな?取り敢えず俺が調べるために預かっておく。」


僕は冷静に対応していた。

しかし、そこはまだ10歳にもなっていない子供だ。

内心は初めてのわくわく感に包まれていた。

(なんだこれ!わかんねぇけど・・・めちゃくちゃかっこいいじゃねぇか!)

僕には当時価値はわからなかったが、表面の模様の精巧さは今まで見たことのない細やかで繊細なものだった。

僕は自分の住処に戻ってからそれをきれいに、ゆっくりと観察した。


「これ・・・ただの模様だと思ったけど、絵だ!」


きれいにしたことで初めて分かった模様の意味、多くの幾何学的な模様に紛れて、不規則な線が埋もれている。

スラム住みの自分には当然文字は読めない。

でも、絵ならわかる。

意味を理解しようと必死だった。

それからは日中は喧嘩に明け暮れ、夜に眺めて解析する毎日だった。


(時計回りに絵が進んでいる気がするんだよなこれ・・・)

球体なのでどこをスタートにするのかは難しい問題だったが、右回りにつながっていることがなんとなくだが理解できた。

そう考えて何週もしていくうちに、なんとなくだが流れをつかめたような気がした。


(一番最初の場面は人が死んでるだこれ。)

立っている人間と倒れている人間、倒れている人間の周りにふわふわと漂うものが描かれているように見える。

何日も見続けたおかげで、幾何学的な模様に僕の目はすっかり慣れていた。


(二番目は・・・よくわからないな)

二人の人が向かい合って立っている。

右の人間らしきものは片手に丸い球を、もう片方の手に棒を持っていた。

ただ、それ以外の情報はわからなかった。

ただ、三番目の絵に行くことでその謎は少し解明した。


(三番目は・・・左の人間がさっきの珠をもらったのか?)

描かれている人間は一人になってる。

そして両手で球を持っている。

さっき右側の人間が持っていた球のようだが、確証はない。


(四番目はそんなに変わらないな。)

同じように一人の人間が両手に球を持っている。

同じ絵が続いているようにも思えるが、よくよく目を凝らすと少し違う。

立ってる人間の周りに漂ってるものがある。

(これは一番目と同じものなのか?)


ん~なんとなくだが球を受け渡している絵だというのはわかるが、それ以上のことは謎だった。

でも、そこにロマンを感じていたのも事実、僕にとってその球は宝物になった。


その球が何であるのかを知ったのは学校に行き始めてからすぐだった。

僕は勉強のためによく図書室にいた。

その日は考古学の宿題をやっていた。

(歴史は本当に面白いな。)

昔の偉人や出来事、人々によって様々な手段で伝えられている伝承などはどこか遠い世界の話のように感じてしまう。

でも、実際には今自分が生きている世界で全て起こったのだ。

にわかに信じがたいその現実を認識できる瞬間が僕は好きだった。


その日の宿題はアーティファクトについての調査だった。

この世界には様々なアーティファクトと呼ばれている遺物が存在している。

大昔に作られたはずなのにいまだに作り方がわからない謎多き物体、それがアーティファクトだ。

僕は宿題のために最も詳しい辞典を引っ張り出してきた。

あまりの分厚さに敬遠する者も多いが、間違いなくこの世で最も詳しい書物。

魔王討伐PTの一人である『ラナ=ジルコニア』が書いたアーティファクト大全だ。

ラナ=ジルコニアは魔王討伐後学者として目覚ましい成果を収めた研究者だ。

魔王討伐の旅の影響で世界中のありとあらゆるものを見てきた彼女は、そのすべてを本にしようと考えた。

その結果、魔物、土地、アーティファクト、食料などありとあらゆるものの図鑑を書き上げていった。

そのどれもが今もなお世界の誰の書いたものよりも詳しい。

ただ、あまりにも詳しすぎるので、図鑑自体が分厚いのが難点だった。


僕はその図鑑の中で特に調べたいものがないかと流し見ていた。

僕をもってしてもすぐに読み終わることのない情報量に、ラナ=ジルコニアという人物への尊敬の気持ちが沸き起こる。

(生きている時にぜひ会ってみたかったな。)

ラナ=ジルコニアはハーフエルフだったが、さすがにもう生きてはいない。

この図鑑を見るたびに毎回そういう気持ちにさせられる。

僕は悲しい気持ちに浸りながら図鑑をめくっていた。


「・・・え!?」


図書室で僕は思わず声を上げてしまった。

たまたま開いたそのページには、幼い頃僕がスラム街で拾った金色の球が描かれていた。

何日も見続けた宝物を見間違うはずもない。

僕は声を上げそうになるのを必死に抑えて、中身に目を通した。


僕が拾ったのはアーティファクトで、それは「黄泉の鈴」と呼ばれるものだった。

死者と対話することが出来るアーティファクトで描かれている絵は死んだ者を憂いている人間に神が鈴を渡しているというストーリーだったようだ。

起動方法は呪文を唱えること。

その呪文も記されていた。

(試すしかない!)

僕は急いで図書室を飛び出して、家に帰りついた。

扉に鍵をかけ、黄泉の鈴を取り出した。

(間違いない、図鑑と同じだ!)

僕は興奮して書いてあった呪文を唱える。


「ー我、対話を望む。呼び起こさん亡者となりし・・・「ラナ=ジルコニア」ー」


最後に対話したいものの名前を言う必要がある。

僕は呼び出す魂をラナ=ジルコニアにした。

名前を知っている必要があったし、今一番最初に浮かんだ名前だ。

それに、憧れの存在と是非話してみたかったのだ。

でも・・・残念ながら黄泉の鈴は起動しなかった。

僕が拾ったときからある傷を眺める。

(拾った時点で壊れていたのか・・・)

アーティファクトなんて誰にも分らない技術を直せるものなどいなかった。

しかし、不思議なもので僕は悲しみよりも別の感情が大きかった。

(これを直せばラナ=ジルコニアと話すことが出来る!)


自らの憧れの存在と話す可能性、元々0だったものが非常に小さいとは言え出来たのだ。

(直すものがいないなら、僕が直せばいいじゃないか。)

僕の将来の目標が決まった瞬間だった。

その為にはお金も時間も必要だった。

そんなスラムを力でのし上がってきた僕が、お金のためにランカーになると決めるには、そこまで時間はかからなかった。

今回はジムの設定を少し深堀というか、本編には出す機会はないであろう設定を出す形にしました。

一応ベック戦にて出てきてはいるんですが、今後の本編にアーティファクトをガンガン絡ませるっていうつもりはありません。

0でもないですけど。

なので、軽く触れる感じで書きました。

やっぱり古代の遺物って夢がありますよね。

現実世界でも大好きです。

アーティファクトも技や魔法と同じで出来るだけ感じで表現できるようにと思っています。

ある程度名前聞いただけでイメージできるようなものを意識しています。


ラナ=ジルコニアに関しては人物像とか性格などきちんと考えてありますが、個人ということもあって本編には多分出てこないかな~と。

魔王討伐時の過去回想自体は考えているので、もしかしたらそのタイミングで出てくるかもしれませんが・・・

がっつりは出さない予定です。

ただ、書いている中で金問いが変わることは大いにありますので、その時は臨機応変に行けたらと思います。



今回も読んでくださった方々ありがとうございました。

番外編はもう一つぐらいを予定しています。

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