落命、そして転生へ
プロローグ
看護師は3k、つまり「汚い」「きつい」「くさい」仕事と言われている。そんな僕がなぜ看護師になったか、それは決して胸を張って言えない。僕は女の子と仲良くなりたいのだ。看護師になれば女の子とたくさんお話ができて、うまくいけば彼女ができるかもしれない。そのため僕は今年、女の花園である看護大学を卒業し、看護師になったのだ。
「ちょっと!患者さんの点滴なくなってるわよ!早く取り換えてこい!」
中年の先輩看護師に強い口調で言われる、僕は人より能力が低くいつも誰かに怒られている。
「あんた何で看護師なったの?あんたみたいな能無しが看護師なんて、ちゃんちゃらおかしいよ。」
怒られるのは慣れたが、胸に突き刺さることを言うやつもいる。
昼休みに入り、僕は物思いにふける。そりゃ、こんな職場にいるとストレスもたまるし、考えごともする。早くAIが全部やってくれる日がこないかな。
僕の職業はほとんどが女だった、友人は羨ましがるがそんな事は決してない。みんな気が強いのだ、さらに言葉がきつい。そんな環境の中僕はいつのまにか女嫌いを発症していた。
僕はある日、仕事で大きな失敗をした。患者の命に直結するミスだ。先輩にものすごく怒られたのは言うまでもない。仕事のミスが続き、怒られる頻度が増えるにつれ、僕はおかしくなった。
仕事でミスをする恐怖、先輩への恐怖が常に頭を離れないのだ。
そんな日が続き、とうとう僕は鬱になり首を吊って自殺した。
死んだというのに意識がある。
「ここはどこだ?」
暗い周りになにもない空間の中、僕の目の前には一人の女神のような女性が立っている。その女性は白い長い髪で、いかにも人間の妄想にでてくるタイプの女神だ。
「あなたは誰なんです?」
十中八九、女神だと分かっていたが俺はきいた。
「わたしは医を司る女神、メディスィア。あなたは今死んで魂だけの存在です。あなたが死んだいきさつはすべて天界から見ていました。さぞお辛かったですね。」
そうか、やはり俺は死んだのかと思った。それより、これから何が始まるのだろう。俺は天国に行けるのだろうか、それとも地獄なのだろうか。
「あのう、女神さん俺はこれからどうなるのでしょうか?」
俺は女神に聞いてみた。
「あなたは生前にした善の行いが少ないので天国に行けません。かといって悪人ではないので地獄に行くこともできません。そのため別の世界で転生し、善の行いを積んでいただく必要があります。」
「善の行いったって、俺は生きてた世界では何にもできない無能だぜ。どうすりゃいいんだよ。」
「あなたがこれから転生するところは誰もが魔法を使える世界、マジックランドというところです。そこでは看護の文化があまり進んでいません。そのため、ある程度医療の知識のあるあなたならきっと活躍できるでしょう。」
女神はにっこり微笑んだ。
そうか、この女神は俺を医療水準の低い世界で看護を発展させる伝道師でもさせる気なんだな。現実であんな目にあったのにまだナースをさせる気か、こいつは…
だが、俺は自分が無能なせいで死んだことを後悔している。きっと俺が死んで家族は悲しんでるだろうな。そんなことを考えてるうちに、俺もう一度人生にリベンジしたいと思うようになった。
「どうやら決まったようですね。」
「ああ、俺はもう一度人生をやり直したい。そして幸せになりたいんだ。だから頼む!俺を転生させてくれ!」
「いいでしょう、あなたなら絶対にやっていけると信じてます。」
女神が杖を地面を叩くと俺は意識を失った。