3
子爵の跡取り息子の嫌がらせによりヨハンの両親は焼死。
けれど犯人は法で罰せられない。
ヨハンはそれ以来人と接することを極端に避けるようになった。
職場である王宮にも必要最低限しか顔を出さず、人知れず出勤したと思えば人知れずいなくなる。
(王宮、使用人たちの会話)
「ヨハンさん、この頃愛想が悪くないかい?」
「たしかに、以前は人のいい笑顔が特徴的だったのに今はどこか影がある。」
「あいさつも必ず返してくれたのに、最近返してくれないことがおおいのよね。」
「いやいや、ご両親がお亡くなりなったんだ。天才といってもまだ二十歳。心の整理が追い付かないんでしょう。」
「なんでも家が全焼したものだから、両親の思い出も品もまったく残っていないそうだ。」
「ああ、彼がいつも首から下げてるブレスレットが唯一の形見ときいたよ。」
「ブレスレットを開けて中を見ているのをよく見かけますね。」
「きっと唯一残っているご両親の写真を眺めているのよ。」
「ヨハンさん可哀そう。」
「ああ、だが仕事はちゃんとやってるんだよな。」
「悲しみを仕事で埋めるか。立ち直ってくれればいいが。」
「体壊さないといいけど。」
「ほんとにね」
(貴族の茶会場での会話)
「ヨハン殿は今、人と会うのを避けていると聞く。」
「ええ、以前より口数も減り、一人のことが多いと聞きます。」
「家と両親、思い出。全ても燃えてしまったのだからな。」
「では彼は今どこで生活をしているので?」
「確かに、宿をとっているという話も聞かないな。」
「噂では夢梟の森に入っていくのを見たと言う者がおります。」
「なに‼夢梟の森だと‼」
「たしかあの森は強力な魔物や、危険な食人植物が生息しているとゆう理由で10年ほど前から王が立ち入りを禁止いていたはずでは?」
「いえ、聞いた話によるとヨハン殿は過去に何度かあの森に足を運んでいると聞きます。」
「なにゆえにあの森へ?」
「さあ、わかりかねます。」
(???の会話)
「聞いたか。」
「聞いたとも。」
「あぁ厄介なことだ。」
「あの若造め、あの森にいっておる。」
「…忌々しいことです。」
「あの森か。」
「あの女がいる森だ。」
「忌々しい魔女のいる森だ。」
「やつは気づいているのか。」
「やつは知っているのか。あの女の存在に。」
「…おそらく。」
「…」
「危険な存在になりえるだろうか。」
「今のうちに消しておくべきであろうか。」
「いや、うまく取り込めばあの女の力を手にいることが出来るやもしれぬ。」
「だが、まだ魔女とつながりがあるかわからん。」
「…確かめねばなりません。」
「あぁ、正確な情報が必要だ。」
「『烏の賢者』に聞くべきか。」
「…いえ、彼らは気難しい者たちです。ここはわたくしにお任せを。」
「おぉ、では頼むぞ『宝石商』」
「…おまかせあれ。」
彼の悲劇に同情する者たち。
茶会の肴にして楽しむ者たち。
裏で暗躍する者たち。
とうのヨハンはそんなこともつゆしらず、今日もひとり『夢梟の森』へと足を運ぶのであった。
もしかしたらこれより前の話を編集するかも知れないです。