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「宮廷魔術師を引退します。」
堂々と俺はいい放つと、騒ぐ外野に踵を返して謁見の間を出ようとする。
しかし、
「・・・これは、どういうおつもりです?・・・ベネット王子?」
武装した十数人の騎士に包囲されてしまった。
騎士の後ろから着飾った顔立ちのいい青年が現れる。
青年の名はベネット・S・ラインハルト。
この国の王の実の息子であり、王位継承権一位。
武学ともに才があり、ルックスもよく地位もある。
国民からの信頼された完璧な男だ。
「どういうつもり?そんなの決まっているではないかヨハン殿。
あなたにはまだまだこの国のために働いてもらわねば困るのですよ。」
ベネットは笑みを浮かべて返答する。
「ほう?それで武装した騎士で私を取り押さえようと?」
「私も本当は心苦しいのですよ。だがこれもこの国にすむ民のため。申し訳ないが考えを改めてはもらえないかね?」
「脅迫ですか?あいにく私には愛国心と言うものがなく、この国の民にも関心がないのですよ。」
「この場であなたを斬ると言っても?」
「わかりやすい挑発はお止めなさい。王子。斬って私が動けなくなるのでは結局私がやめるのと結果は同じですよ。」
両者とも顔は穏やかな笑みを浮かべてはいるものの、眼光は鋭く相手を射ぬいている。
「では、この国を巨大な結界で覆い、魔物や的軍。あらゆるものを弾きましょうか?」
おとしどころが見えなくなりつつあったので俺は提案を申し出る。
「はっ、そんなことが可能なのか?やれるものならやってみるがいい。しかしできねばお前はこの国に忠誠を誓い働くのだぞ。」
「ええ、いいでしょう。」
(・・・どうせこの国には何も思いなどないのだから)