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時には昔話を

時には昔話を 『聖女愛梨はただの日本人になり、家族と猫と幸せになる』

作者: 桜田 律 

タイトルが何度か変わりました。

現在はシリーズとして統一しました。

「ねえ、おかあさん。おはなしして」

「ぼくも」

絵本を持って二人が駆け寄ってくる。


3歳の娘は大のアニメ好きで、魔女っ娘になることに憧れるおしゃまさん。

2歳の息子はもふもふ好きで、いつも猫のセインを追いかけ抱きついている。

どちらも可愛いあたしの子。

もちろん旦那様は幼馴染の蓮で、300年の付き合いだ。


え、300年ってなに?って。

今は普通の日本人よ。

ただ300年繰り返し聖女なんていう職業をしていたから、色々あるの。


子供達には、異世界で聖女が悪者を懲らしめて、めでたしめでたしの話をする。

うん。嘘は言っていない。

絵本を読んでいると子供たちはいい子守唄となったのか、いつの間にか眠っていた。


「セイン。起きてる?」

『ああ、起きてる』

「良かった。まだまだ元気でいてね」

『無茶を言う。まあ、まだ大丈夫だ』

「そう、良かった」


『・・・幸せか?』

「もちろんよ。セインは・・・」

『我はもう、独りじゃない。そうだろ?』

「うん、ありがとう」

『少し寝る』

「おやすみ」


異世界から連れ帰ったセインは、向こうで力をほとんど失った。しかも魔力のないこの世界では猫の姿をとるのが精一杯で、寿命も短くなったと思う。

寝ることが多くなってきたセインが、このまま消えてしまわないか不安になることも多くなった。

もうちょっと、もうちょっと、頑張ってほしいというのはあたしの我がままでしかない。

それでも・・・。


セインを抱き上げ、膝に乗せる。重みと温かさがあることに、ホッとする。

あたしたち出会ったのは遥か昔なのに、こうやって触れ合うようになったのは最近なのよ。だから長生きしないといけないの。

もっとあたしたちと旅をしましょう。

勿論、蓮と子供たちと一緒に5人でよ。



今から300年前から、ちょっと昔の話をしましょう。

あたしが聖女と呼ばれていたことのある時代の話を。





幼馴染の蓮と二人で学校からの帰り、突然光があたしを包み込みその渦に飲み込まれそうになった。

「なに!眩しい」

「愛梨、愛梨!!」

「蓮、どこ?!」

「手を」


必死になって伸ばした先に蓮の手が触れた時、凄く安心した。

きっと蓮と一緒なら大丈夫。

光が収束すると、まるで宮殿のようなところにいることがわかった。

ここ、みたことがある。

なんで・・・。


「よく参られた異世界の聖女よ。この世界に混沌を招く邪神を滅ぼす為の力をお貸しください」

突然声が聞こえたことに驚く。


声が聞こえた方向を向くと、跪いき首を垂れていた男たちがいた。

それだけで、何故か冷や汗が背中に流れる。

怖い、怖い、ここどこ!


男たちが顔を上げた途端に、あたしは割れんばかりの頭痛に襲われその場で倒れた。

「イヤ、いやぁあああああああ」

「「聖女様!」」

「愛梨」


いやよ、いや!思い出したくもない刻まれた記憶が流れてくる。

何故、この世界に戻ってこなければならないの?!だって、元の世界に戻れていたのに。またあたしは殺されに戻ってきたというの?

絶対に、いや。そんなことになるものですか!


あたしはこの世界に長きにわたり囚われている。あたしはあたしを救わなければならない。そして悪しきこの世界の理を壊すのだ。

蓮、いいえレイン、あなたはずっと助けられてばっかりね。


聖女と名ばかりの殺戮者にしたいこの世界の王たちから庇うように、あたしを抱きとめるレインに身を任せて意識を落とした。




ああ、またあの夢。蓮と知り合ってから見なくなっていたのに。

あたしは日本人の愛梨として生まれてから蓮と出会うまで、見続けていた悪夢がある。どの夢も物語のように聖女様と呼ばれる存在で、世界には蔓延る魔物から時には魔女と時には邪神から守るために戦っていた。


300年前愛梨アイリーンはこの世界で一番初めの聖女として、魔物たちと戦った。魔物を生み出し続けるダンジョンのコアを壊すという使命を各国の王子たちと共にやり遂げたのだ。

仲間たちと無事を祝い、これからの魔物に怯えなくてもいいと心底安堵した時、王子たちは態度を急変させた。


「アイリーン、もう聖女でなくてもいいよな?」

言っている意味が分からなかった。しばしの沈黙の後、王子たちの表情を見て悟った。そこには騎士とも紳士ともいえぬ卑猥な目で舌なめずりしていた。

清らかな乙女でなければ魔を退けることは出来ないとされ、聖女は婚姻のみでしか処女を捨てることは許されていなかった。その為に使命を果たすまでは手を出さなかったのだと言う。


「何を考えて」

「アイリーンが聖女として戻ると困るのですよ、わたしたちは」

「どういう・・・」

「わからないか?お前を娶れとどの国の王は言う。だけどお前は一人しかいない。アイリーンを娶れなかった俺たちは無能扱いされる。国の為に命を懸けて戦った俺たちが!!」


「平等に分け与えることが出来ないですから、無いものとした方が都合がいいのです」

「だけどな、たた壊すだけじゃもったいないだろ?」

「う、うそ」

「体の奥から溢れる熱いものを受け止めてくれる器があるのだから、使わないとな」


男3人の力には勝てなかった。恥辱され乙女を散らされた後は何の力も持たないただの女。首を切られ命が散る寸前に壊れたダンジョンコアに血が飛び散り、紅く光った。

『望みを』

『男たちに復讐を、この世界に混沌を』

「レイン、ごめんね」


唯一男たちを止めようとして、あたしより先に殺されたS国の心優しき第二皇子。横柄な他国の王子たち相手にも、嫌な顔一つせずずっと付き添ってくれていた唯一心を許せた存在が居なくなった今、孤児で平民だったあたしに後悔はない。



その後すぐに聖女がいなくなったことでまた魔物は復活し世界を混沌へと招いたが、同時に生まれるはずの聖女は100年間この世界に生まれることはなかった。



それから年月をかけ秘法を完成させ、異世界から聖女を召喚すると言う術を生みだし、邪神と戦うことを願う。

呼び出された聖女は戸惑いながらも、元の国に戻してもらう約束の元邪神を封じるために付き添うことになった。

最後勇者として各国から集まった精鋭たちだが、邪神は余りにも力が強く倒すことは出来ない。パーティーの半分を失いながらも、聖女として邪神を封印することに成功した。


異世界の聖女アイリは願う。

あなた達の願いは叶えた。元にいた世界に戻してください、と。

だが、その願いは残酷にも否定された。


それだけは叶えられない。


この世界に聖女が生まれない可能性があることを踏まえれば、異世界の聖女を帰すことは出来ない。それどころか、帰還の術さえ始めから持っていなかった。

そのことを知った異世界の聖女アイリは、・・・泣き崩れた。

「元の世界に戻りたい」


各王たち泣き叫ぶアイリに困り果て、非情な決定をした。

異世界の聖女アイリは、共に戦った各国の王子たちと結婚すると各々の国民に通知したのだ。

一妻多夫という日本人の感覚では到底受け入れられない取り決めと、好きでもない男たちとの結婚はアイリには恐怖でしかなかった。


悲観したアイリは唯一婚姻を反対していたレンに、逃がして欲しいと懇願する。

そして手を取り合い逃げ出したところで、二人で殺された。

邪神なんて封じなければ良かったと涙を流しながら。


『我に望みを』

「元の・・・にもど・・して」



目を覚ました愛梨は、心配そうに覗き込むレインと目があう。

ああ、元の世界に魂は戻れたのに、また呼び出されてしまった。


この世界がなくなれば召喚されることもなくなるのに。

自分が邪神とも魔女ともいえる思いを胸に抱く。


聖女として生きること5回。

その度に殺されているのだから、自分自身が邪神になったとしてもおかしくないと言いきれる。


この世界に終わりを告げよう。どんな手を使ってでも。

目には目を歯には歯を。今までの利子をつけてかえしてあげましょう。

蓮には心配を掛けたくないので、普通に振舞った。


「愛梨、大丈夫か?」

「大丈夫、ここは?」

「召喚された王宮の客間だ。聖女の傍に男は居るべきではないと言われたが、愛梨の傍から離れるわけにはいかないから、この世界の常識と同じにするなと言っておいた」


「・・・ありがとう」

「いいんだ。愛梨が辛い目にあうのは間違っている」

「うん」


そう返事をしながら、異世界に召喚されたというのに落ち着き払った蓮とレインが重なって見えた。

もしかして・・・。


「どうした?」

「ねえ、蓮はレインの記憶はある?」


何故その名前を知っているのかと驚愕していたが、落ち着き払っているあたしを見て、あたしもまた記憶があるのだと悟ったようだ。


「思い出したんだね」

「そうよ。あの忌々しい男たちの顔を見て、思い出した」


あの屈辱を味合わせた男たちのことが、心の底から憎い。今顔を見たら思わず殺気を放ってしまうほどに。

だけど根本的なことはそこじゃない。この世界のシステムを壊さなければ、ずっとあたしも蓮も囚われたままだ。


「蓮、ごめんなさい。巻き込んでしまって」

「これは僕が望んだことだ。300年前のアイリーンの時から愛梨を逃がすことさえ出来なくて、君を傷つけてばかりだった。もう、そんな自分は嫌なんだ。君に思いをつけることも出来ずに、無駄に命を散らしてばかりの無力な自分は、もういらない」


「・・・ありがと」


静に穏やかにあたしを見つめいた、心優しき皇子だったレイン。

どんな時も味方でいてくれて、いつもフォローをしてくれる幼馴染の蓮。

どんな時もあなたが居てくれたから、希望が持てた。

あなたがずっと傍に居てくれるなら、きっと・・・。


「行こうか」

「うん。早く縁を切りたい」


邪神の神殿はいつの時代でも同じ場所だった。ダンジョンのあったあの洞窟。

昔の記憶とともに過去使えた魔法は全て使えるようになっていた。

「転移」


記憶にある神殿のまま、そこにあった。

邪神の神殿と言われるほど、禍々しさはない。ただそこにあるのは、憐みだろうか。

不思議な感情に戸惑いながら、祠に触れた。


『来たか』

「うん」

『息災で何よりだ』

「あなたは・・・」

『我はここに在るだけのもの、それ以上でも以下でもない』

「それでも、感情があるでしょ?独りでは寂しいでしょ?」

『もう、忘れた。いつか消えゆく、それまで人の営みを見ているだけだ』

「じゃあ、あたしが貰ってもいいわね?」


『ああ・・・はあぁ?!』

「言質はとったから、行きましょ?」

『我は、・・・』

「人間の都合で邪神にされただけの、心優しき精霊王さん。消えゆく運命なら、あたしと居てもいいと思う。あたしもこの世界から縁が切れるし、あなたも独りじゃなくなる。win―winでいいでしょ?」


両手をチョキチョキとさせながらいうと、蓮が呆れたように言う。

「諦めた方がいいよ。愛梨言い出したら聞かないし」

当たってるけどさ。


「――そうよ。諦めが肝心よ?いつだってあたしの望みを叶えてくれてたのだから、今回も聞いて」

『・・・望みは』

「精霊王のセインと蓮と愛梨ことあたしと、仲良く日本で暮らすこと」


『セイン、良い名だ』

「契約成立ね!」

豹のような姿になったセインと共に、意気揚々と三人で呼ばれた王宮に戻った。


王宮では姿を消した聖女を探す捜索隊で埋め尽くされていた。そんなところに豹の姿をしたセインを連れて愛梨が戻ってきたので、更に大騒動になった。


「聖女様。召喚されてすぐに倒れられていたのに、今までどこにおいでになられたのですか?」

言葉は丁寧だが何かあれば自分のせいになるから勝手なことをするな、目がと告げている。


この男の身勝手さは何度死んでも直らなかった。激しい性格を示すような燃えるような赤髪の男を一瞥する。一番始めに穢したこの男が憎い。


殺気を漲らせていると、窘めるようにタシタシと柔らかな肉球で叩かれた。

「セイン」

我に返り殺気を収め、顔を緩める。


セインの頭を撫でながら、「命拾いしたわね」と呟けば、ビクッと大きなセインのもふもふの体が揺れた。

本当に邪神を演じていたのかしら?邪神をしていた割に、この精霊は怖がりで困る。


「あなた方の都合に、私たちが合わせる必要はない」

どうせ女のところにしけこんで、気付きもしなかったくせに。という蓮の呟きが聞こえた。

やっぱりそんな男だったのかと、今更ながらに思う。


「ここにおられましたか、聖女よ」

貼り付けたような笑みで穏やかに装う青髪の男。

いつも宥めるふりをして、パーティーを取りまとめているように装うのに長けていた。

裏では自尊心が一番強く冷徹なこの男は、いつも誰かを傷つけ欲望を発散させていた。


この男のDNAは残してはいけないものだ。

死に逝く時に穢すことに悦を覚えるサディスト、今すぐにでも切り落としてやりたい。


なによ。二人ともそんなに縮こまらなくてもいいじゃない。

しかたないから、もふもふして気分を落ち着かせる。

セイン、豹になるなんてナイスだわ。

男の命拾いしたな、という蓮の呟きは無視をする。


「聖女様も、二人ともここにいたのですか?」

常に長い物には巻かれる緑髪の男。ごめんねなんて、脅されて仕方なくという態を取りながらあたしを犯し、流されて生きていくだけの小物。蓮とともに止めてくれていたら、負の連鎖は起きなかったのに。自分の罪にさえ気づかない愚か者。

自分の罪を知ればいい。


さて、役者は揃った。

過去の清算を致しましょう。

It's Showtime!!




「なにか御用でしょうか?」

「用があるから、呼んだのだ」


それで?

続きを話してよとばかりに目を見ただけなのに、後ずさるとかどういうことよ。

『威圧してる』

セインに呟かれ、仕方なく目を逸らした。


「ところでその獣は何でしょう」

「何だと思います?あなた方にはとても深い関係がありますよ」


「そんなことよりも、早く邪神を」

「そんなものは、この世界に居ません」


「何を訳の分からないことを、言っているのだ」

「わかりやすく説明したはずですが、これでわからないなんて、この国は大丈夫なのでしょうか?」


「おい、女!うだうだ訳のわからないこと言ってないで、さっさと旅に出ろ!」

「聖女なんて都合のいい称号で誘拐しておいて、奴隷のように命令するとかこの世界の教養は最悪ですね」


「なんて不敬な女。体にいうこと効かせても宜しいのですよ?」

「いうこと聞いていたほうがいいよ」


なんてお粗末な男たち。張り切って論破するほどもないとか、フラストレーションが溜まって仕方ない。

それに・・・徹底的に叩きのめすほどの価値もないなんて、本当に残念過ぎる。300年の間に魂は痩せ細り、取り繕うこともできないほどに馬鹿になっているなんて。


どうしてくれようか、この格好がつかないこの中二病発症した時のような、いたたまれなさ。

ざまあ劇場を始めることさえできないとか、予測不能だ。


ああ、めんどくさい。こんな男たちのせいでこの世界に囚われている時間がもったいない。

もういいや。

気がかりだったセインはここにいるし、レインとともに三人で日本に帰って幸せに暮らそう。


「セインも蓮も日本に帰ってめでたし、めでたしでいいよね?」

「「君がいいのなら」」

「じゃあ、決まりね」


「何を言ってるのだ」


まあ、皇子や王子という立場の者が、全く相手にされないなんてこと今までなかったでしょうから、いきり立つのはわかるけど、捜索隊が沢山いる中、聖女として敬う格好ぐらいは見せたほうがいいんじゃないの?

苛立ちが顔に出すぎて、醜悪さが隠せてないわよ?


「あなたは変わってないわね。300年前からずっと・・・。自分の見栄と下半身だけが働くなんて」

「下半身・・・ぷっ」

誰かの一言が可笑しかったのか、失笑だ。

すぐになんのことだかわかるぐらいには、女に溺れていたのだろう。

男は真っ赤な顔をしてこちらを睨んだが、無視しておいた。


「どうしたのですか、聖女」

「あなたもその誰かを見下した目は健在ね。あなたの周りにいた女性たちは、生きている?」

「どういう意味だ」


「そのままの意味よ、残酷なサディスト。この男の国の方々、この男の周りでもし不審な死を迎えているひとがいるなら、調べたほうがいいわよ?」


「まさか!」

「まさか、彼女も?」

ざわざわとざわめきが大きくなるのを、側近たちが押さえている。

思い当たる人が何人もいるなら、間違いなく同じことをやらかしている。


怯えている男に向き合った。

「あなたは相変わらずどっちつかずで、日和見ばかりね。ただあたしが死んでいくのを見ていた。自分だけが可愛い自己弁護者。あなたがレイン(蓮)と一緒に助けてくれていたら、この世界は邪神に呪われることはなかった。最終的に、あなたが招いたのよ?知ってた?」


「どういう・・・」

「そのままの意味よ。300年前聖女アイリーンとして生きてきたけれど、平民だから壊れてもいいと、あなたを含めたここにいる三人に殺された。息を引き取る直前に壊れたダンジョンコアが憐れみ、最後に望みを叶えてやると言ったから願ったの。この世界に混沌を」


「お前のせいか!」

「違うわ。あなたがた3人が聖女を穢さなかったら、混沌は来なかった。自業自得じゃない。それに邪神なんて始めからいなかった。だけど民衆から税金を巻き上げ、名声を高めるためには敵が必要だった。その当時人間に与していなかった精霊王を卑劣な手段でとらえ、邪神として封じたからこの世界の魔法は弱体化した。自業自得でしょ?」

「何を根拠に・・・まさか」

「ええ、精霊王をお助けしたの。あたしたちの国に招くから大丈夫よ」


「だから、この世界でやることなんてもう何一つない。お暇させて頂きますわ」

「蓮、セイン、帰りましょ」

「待て、待ってくれ。精霊王を連れていかれたら」


「ええ、人質だった精霊王が解放されたなら、精霊は人間に一切力を貸さないでしょう。魔力が生まれなくなくなるのだから、魔物も生まれないし、ダンジョンも枯れる。憂いがなくなって良かったわね?(魔法も使えなくなるけど)もう二度とお会いすることなんてないでしょう。さようなら」


「頼む、すまなかった」

「待って欲しい。償うから」

「ごめんなさい。ごめんなさい」


今更ね。それに過去は変えられない。その分これからの未来で苦しめばいい。


「転移」


きっとこの後の世界は激動の時代になったことでしょう。だけど魔法がないのなら、きっと生きることで精一杯で皆必死になる。

自国の王子たちの横暴さに、内乱が起きるかもしれないけれど、ボタン一つで国がなくなるほどのことはないし、地を這って生きればいい。

もう、あたしにとって過去の話だ。



それよりも。

「帰ってきた!」

豹ぐらいの大きさのセインは魔力がないこの世界に戻ってきたときに、すでに猫になって眠っていた。体力を回復させているのだろう。


「セイン、長生きしてね」

小さな温もりを感じながら、頭を撫でた。


「レイン、今までありがとう。蓮これからもよろしくね」

「ああ、アイリーン助けてやれなくてすまなかった。これからはずっと守っていくよ、愛梨」


その言葉の通りただの幼馴染だった彼は、あたしの恋人になり、今は夫となり幸せに暮らしている。



読んで頂きありがとうございます。


時には昔話を「我はセインという猫である」


https://ncode.syosetu.com/n8373fs/


合わせてどうでしょう。


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