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こんなはずではなかった!  作者: ナッシュ
2/2

アーサーJr.

今日もアーサーは上機嫌である。

町の正門に立つアーサーの元気な挨拶が今日も門に響く。

「おはよう!ブルーノ」

「おはよう。今回は山を越えてバニョの街まで行くから3~4日戻らない。」

「行ってらっしゃいぃ」

ブルーノはこの町一番の韋駄天である。

その為、この小さな町では配達依頼はもっぱらブルーノの専売特許なのだ。

町から離れられないアーサーに、良くお土産を持って来てくれる気の良い青年でもある。


「キャロルさんおはようございます!」

ブルーノとのやりとりの横から篭を持った中年女性にも目敏く挨拶するアーサー。

「おはようアーサー」篭からリンゴを一つ取ってアーサーに手渡す。

「やっと食べ頃になってきたわよ」

「これはこれは。ありがとうございます!

ご馳走になります。」

「大げさねえ。」ケラケラ笑うキャロル。

この町ブルッセのリンゴは名産なのだ。リンゴの木がそこら中にあるため、いくら取っても起こられない。

青く酸っぱいが、火を通すと甘味が出るため、都会ではタルト等にして喜ばれているらしい。

「キャロルさんがもいでくれたリンゴは味が違うのです。」ウィンクするアーサーの金髪が朝日に照らされて輝いている。

「ありがと。今日も頑張ってね」苦笑気味なのだが、いかんせんアーサーは本気なのである。


往来する人々と挨拶を交わし、アーサーは今日も上機嫌である。


小さな町だが、アーサーに身寄りはいない。

母はアーサーを生んで直ぐに亡くなったと聞いている。

父はその後直ぐに戦死した。退役直前で、この町から初めて出た百人隊長だった。

数々の戦役で生き残った父は、息子の誕生と妻の悲報を聞き、絶望と希望を抱えて亡くなった。

決して自棄になったわけでは無い。

厳しい戦いだったのだ。

敵に包囲され、反転攻勢の先頭に立ち、

途中大将首も取った為に追撃が緩み、部隊が無事帰れたのは父アーサーのお陰と皆が口を揃えている。

無事に戦役から戻った町の男は14人。

父アーサーを除いた全員が無事に戻った。

1人残されたアーサージュニアはこの部下達とその家族によって蝶よ花よと育てられた。

全員が父であり、母も9人いる、兄弟まで含むとちょっとした村である。

12才の時にソルジャーの適性が見いだされ、兵士見習いとして勤め初めてから、門に立って10年である。

毎日門に立っているが、戦役が終わって20年以上が経ち、すっかり平和である。

毎日門の前で素振りをしているアーサーを子供達や野次馬達が見に来るにはまだ早い。

大きな四角い盾、スクトゥムをごそごそと持ち出して、左右に軽く振る。次に素早く頭の上に掲げて戻す。ひたすら繰り返すのである。

義父達にしつこく教えられた型で、これが出来ないと軍隊で生き残れないと教わり、物心ついた時から繰り返している。

しかし、子供達や野次馬達には槍や剣の方が評判が良い為、盾の素振りは朝一に行うのである。

アーサーいつもの朝である。

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