初めての草むしり。
小雨の降る中、ひたすら草を探す。
ギルドでもらった見本と見比べながら、探すのだが、似たような草が多くて思うように集められない。
とはいえ、この借りた五キロの米ぐらいの袋に一杯にして届けなければ依頼達成とは認められない為、多少違うような気がする草も突っ込んで行く。
もうなんだかんだ半日はやっていて腰が痛くなってきたし、
夕日になってきたので急いで町に戻らなければ‥
こんなところで日が落ちてしまったら町に戻れる気がしない。
なんとか袋を一杯にできたので、急いで道を戻る。
疲れているが全速力である。
やっと町に戻った頃には薄暗く、町の入口には松明を灯し初めていた。
「ナッシュ、遅いじゃないか。どこまで行ってたんだい?」
気さくに声をかけてきた門番の若者は、べたべたと馴れ馴れしい。
「直ぐそこの森だよ。薬草の採取依頼を受けたんだが、聞いてたより難しい。」
「あー。薬草はこの辺りでは取り尽くされてるからねぇ。もっと森の奥まで行かないと多くは生えてないんだよねぇ。」
この門番、名前はアーサー。ウェーブがかかった金髪が松明に照らされて輝いている。顔立ちも良くて優しい上に森を指差すポーズまでかっこいい‥。
「もうじき上がりなんだけど、どうだい?この後。俺のお気に入りの店に行かないか?」
いきなり誘われた!ここに来て2日目で、何一つ解らない身としては心底嬉しい。
即答しそうになるが、一瞬考える。
‥もち合わせがない。文字通りの文無しなのだ。
この薬草をギルドに届ければ、銅貨8枚もらえるはずだが‥。
「オーケー。是非行こう!」即答してしまった。
「おけ?では交代したら冒険者ギルドに向かえに行くから待っててくれ。」バチンと音が聞こえて来そうなウィンクである。
そんな仕草も違和感なく似合ってしまっている。
「きっとナッシュも気に入ってくれるよ!」
「あー楽しみにしてるよ。では後々。」手を振って街中に進んで行く末。いつの間にか雨も止み、足取りも軽くなる。
この町、この世界に着いて2日目の夜を向かえようとしていた。