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 第八話 覚悟



 九月、月日は三カ月過ぎた。

 この間は変わったことなく、イラつきばかりであった。

 治る方向に行かないからだ。

 膠着状態、それに尽きる。

 そのためかこれといった出来事に、気づかなかった。

 良い意味で慣れたのか、悪い意味で慣れたのか……止めよう、考えるのは。



 九月の土曜日、俺は耕助と二人で病院を訪れている。

 傘に大量の雨粒が、ぶつかり激しいパーカッションをしていた。

 

 「すごい雨だね」


 耕助が言った。

 俺は頷き、その場を逃げる様に急いだ。



 病室。


 「パパ、お兄ちゃん」


 真奈美の元気な声を、ベッドから聞いた。

 少し絵本を読んでいたのだろか? 絵本が裏返しされていた。

 その前には真奈美の学校のクラスメートの寄せ書きがあり、思い思いの応援メッセージがあった。

 

 一人で真奈美は闘っていない。


 寄せ書きは真奈美より、俺が勇気を貰っている。

 自然と笑みが溢れ、それが真奈美に伝わったようで、満面の真奈美スマイルが見れた。

 何時しか髪も伸び、俺の知ってる真奈美になる。

 なんだか、ホッとした。


 「大丈夫?」


 声をかけたのは、耕助だった。

 何気ない一言だが、今の真奈美にとってはこの笑顔も嬉しかったに違いない。

 二人が何気ない話を始めた。

 俺は蚊帳の外、まあいい。


 俺は部屋を見渡す。

 真奈美の病室は、四人部屋で同い年の子供達がいて、みんな自分との闘いをしている。

 どの子も瞳は綺麗で、諦めない勇気と未来を見つめる希望に溢れていた……が、一つだけ違うのに気づく。

 ベッドの一つが、いやその周囲の空間が綺麗に片づけられていた。

 確か幸久クンのベッドだった。

 俺はベッドの名前プレートを見ると、何時しか名前がない。

 退院したようだ。

 

 「真奈美、あそこ空いてるね。病気治ったんだ」


 耕助もいないベッドに気づき、真奈美に聞いた。


 「うん、退院したんだよ」


 真奈美が言った。

 そうか……しかしその後、真奈美の言葉に俺は凍りつく。


 「幸久クン、もうお薬いらないんだよ。お医者さんが言ったんだって! お母さん、お父さん、泣いてたんだよ。それにもうお勉強もしないって、家族といっぱい遊ぶんだって喜んでたんだ」


 俺は幸久クンのベッド、いや幸久クンがいたベッドに視線が釘付けになった。

 真奈美が言った意味、それは途轍(とてつ)もない呪いだ。

 おそらく……。


 「どうしたの? パパ」


 真奈美が頭を傾げる。不思議そうだった。

 俺は「トイレ行く」と言い、部屋を出て行く。

 誰かに聞いてみないと!


 部屋を出ると、同じように闘う子供の家族とバッタリ会った。いまから部屋に入ろうとしている。

 俺は軽く会釈する。

 すると相手方も、会釈してくれる。


 「あの、いきなりで、すみません、幸久クンは?」


 口が勝手に開き、言葉が溢れてしまった。

 こんなことは、聞くものではない。少し後悔した。

 相手方の家族は、顔を見合わせていた。

 すると家族の一人、旦那が口を開いた。


 「幸久クンの家族、覚悟を決めたそうです。医者から、すみません、と頭を下げられたなんて噂もあるようです」


 振り絞るように、目線を合わさず淡々と語ってくれる。

 俺は「ありがとうございます、すみません」そう答えて、部屋に戻った。

 皮肉な内容ほど、早く答えが出る。

 ささくれ、これを隠しながら真奈美の励ましをしていた。

 

 「治るかな? 幸久クンみたいに」


 真奈美の問いに、俺は作り笑いしながコクコク頷くしかなかった。

 情けない……それだけだった。

 気の利いた言葉は、思い浮かばないのだから。


 「幸久クン、良いなあ」


 隣の子供の言葉が耳に入る。

 そこには先程の家族が居て、複雑な顔をしていた。

 何故か、ホッとする。


 気の利いた言葉、思い浮かばないのは俺だけではないと。

 悪い人間だな……俺は。


 

 第九話 魔王の空間


 十月、いきなりの緊張が襲う! 真奈美が頭痛を訴えて緊急手術となった。今回は「部分的で大きなものではない」と、説明はされたが、俺は信じていない。

 手術は上手く行ったと微笑んではいたが、医者の目が気に入らない。



 そして、十一月。



 俺と嫁、そして耕助、香奈美、みんなが真奈美を見ていた。

 頭に包帯をして、ネットで固定されている。

 十月のあれだ。

 ピンポイントで大きくはないと、強調していたが信用はしていない。真奈美の痛々しい姿に説得力は、まるでない。

 

 真奈美の四人部屋にたくさんの看護師が集まり、真奈美の引っ越しが始まった。

 引っ越し……手術が終わった後少し日にちが経ってから、医者から言われた。

 

 

 回想、十月の終わり。



 「真奈美チャンを、ある子供と同室にさせて下さい。この子も大変重い病気と闘う男の子です」

 「は? 部屋を替えるんですか?」

 「はい、費用は全てその家族持ちで……」

 「理由は!」


 カネの話をし出したことで、俺はキレてしまった。

 医者はカネの話をせず、「病気さえ見ていればいい」とほざいたくせに真っ先に口を開いたのがこれだからだ。


 「その子は個室で闘っています。相部屋ではなく院内学級にも、あまり顔を出せない状態です。言ってしまえばかなり重い病気です。そんな子がこの前、部屋から出ました。脱走です。一人の時間が多く寂しかったこと、これが理由でした。お願いです! 真奈美チャンを彼の遊び相手にそして話し相手になって欲しいんです」


 医者は少し狼狽えながら、答えた。

 

 「何故、真奈美なんですか?」

 「これは病院で私を含めた医師達で話し合いました。そして真奈美チャンになりました……しかし」

 

 医者の顔が曇る。やるせなさを感じ、痛い! そんな表情だった。


 「しかし、私は大反対しました。あり得ないんです!」


 悔しそうに、医者は言った。

 俺は頭を傾げる。

 何が、あり得ない? のだろうか。

 医者が唇を噛む。

 その表情には、何処か人間味があった。今までの医者の態度からは想像がつかなかった。


 「お父さん、お願いです。真奈美チャンをその子と居させて下さい。しかし、私はまだ……」


 そこまで言うと、医者は黙ってしまった。

 そしてただ頭を下げた。

 俺は仕方なく、了承した。

 医者の熱意に負けた。

 引っ掛かりを残しながら……引っ掛かりとは。

 「私はまだ……」の後の言葉がなかったことだった。


 時間を戻す。

 今、俺達家族はエレベーターで最上階の二つ前で降りた。そこからその男の子の個室を目指す。

 真奈美はベッドて膝を抱え不安そうだ。

 何日か前に説明はしていたが、不安は不安だ。

 まして慣れた部屋から、違う部屋に替わるのは大変だと思う。


 部屋の前に来ると、そこにはネームプレートがあり真奈美の名前がある。何時しかちゃっかり、作っている。

 そして真奈美の名前の横に、輝と書かれたプレートがあった。


 輝クン。


 ふうん。俺はそんな感じだった。

 もう一つ言えば、カネ持ちだなあ。

 最上階に近い場所の個室なんて、そうそう入れない。そこだけは素直に興味が湧いた。

 さてと……。


 個室に入る。

 そこは意外なくらい広い空間で、それでいてどこか無機質に思える空気が支配された別空間を感じる。

 真奈美の居た子供部屋とは明らかに何が違い、不思議……だった。

 俺達家族はその空間空気に、触れている。

 嫁や耕助、香奈美、みんなは喜んでいるようだ。

 しかし真奈美は、相変わらず表情が硬い。

 当然だ。

 俺達家族は替わったで済むが、真奈美にとっては前居た場所から移されたのだ。ストレスは計り知れない。

 俺は少し後悔した。

 辞めた方が良かったと。


 「あの、すみません」


 俺はその声に振り向く。

 するとそこには、目鼻整い引き締まった男だ。

 その横には同じく上品そうな清楚な女もいた。

 この部屋の子……輝クンの両親に間違いない。

 

 「あっ、真奈美の母です。これから、お願いします」


 嫁が答える。

 素晴らしい笑顔で、負けていない。

 畜生! 俺だけ格落ちかよ!

 

 「アナタ!」


 嫁の声に俺は割れに戻る。

 形式的でもいい、頭は下げないといけない。

 ボソボソと何かを呟き、俺は頭を下げた。

 顔を上げると、家族が笑っている。

 内面は……わからない。


 「フーちゃん!」


 真奈美の声に俺は振り向いくと、手にクマのぬいぐるみがある。

 この部屋にあったものらしく、なんだか似つかわしくない。

 なんだかとぼ)けた奴だなあ。

 少し吹いてしまった。

 何時しか、真奈美は、笑っていた。

 俺は拍子抜けする。真奈美の順応性の高さ。

 これが無邪気と言うものか?

 

 窓の外を見る。

 スマホをから午後三時がわかった。

 太陽はかなり傾いている。やはり秋、晩秋である。

 もうすぐ冬、今年の冬はどうなるか?


 さて、どうなる。



 第九話 輝クン


 十二月、クリスマス。

 俺は手ぶらで、真奈美がいる部屋に行った。

 プレゼントはない。いや持って行けないなが正しい。

 今の部屋は、そんなことに厳しいのだ。

 全てが管理されているのだ。


 

 部屋。



 俺は部屋に入る。

 部屋か……本来は病室だな。

 しかし何故か部屋がしっくりくる。

 

 真奈美は居なかった。

 ただ輝クンが、ベッドに居る。

 塗り絵をしているようで、アニメキャラクターに色鉛筆で色を付けていたようだ。


 「こんにちは、真奈美チャンのパパさん」


 輝クンが笑う。

 弱々しい笑みに、どこか寂しさが滲む。

 

 「真奈美チャンは、お友達といます。少しの間、お留守番です」


 輝クンがしっかりした口調で、説明してくれた。

 とても利口な子だと関心する。俺が同い年の頃は、こんなしっかりはしていない。

 部屋の隅にある、置き時計を見る。

 かなり年期のある時計で、よく動いてるなと関心する。

 時間はまだまだある。

 その横には、あのクマのぬいぐるみ。

 惚けた姿だ。

 しかし肝心の真奈美は、帰ってくる様子はない。どうやらしばらく待ちぼうけになる。

 

 「あの」


 輝クンが言った。

 俺は視線を合わす。

 

 「なんだい?」

 「ジュース、美味しいですよね」


 輝クンがいきなり伏し目がちに、言葉を漏らす。

 俺は、は? そんな顔だった。


 「真奈美チャンのお兄ちゃんと、ジュース飲んでましたよね」

 「何時くらい?」


 俺は聞き返す。

 全く見覚えがない。


 

 「すみません、良いんです。僕は特別だから」


 輝クンが頭を下げる。

 俺は少し引っ掛かった。


 「輝クン、特別なんだ」

 「はい、僕、特別なんです。先生から、それとお薬の国のメイドさんから言われる」

 「お薬の国?」


 俺は聞き慣れない言葉に、眉をひそめる。


 「病院のこと。僕にはお薬の国」


 輝クンが言った。

 なるほど、俺は頷く。

 発想の柔らかさ、素晴らしいと関心する。

 例え寂しさを紛らわすための、発想だとしても大したものだ。

 

 真奈美はしばらく戻って来ない。

 その間、輝クンとの話し相手になっていた。

 彼は礼儀正しい、しかし発想に幼さがあり、勉強もあまり得意でない様だ。しかしこれは彼が闘っている大病が起因している。そのため真面(まともに学校へ行けず勉強できないこと。それに尽きる。

 

 心臓……そこが異様に弱いのだ。

 

 輝クンは僕の心はない、穴があり全てそこから落ちる。この穴が治れば皆みたいになる。

 そう瞳を輝かす。


 「僕、生きたい。みんなと、笑いたい! 真奈美チャンと笑いたい!」


 綺麗な瞳で、正に輝クンだった。

 名前はその人の姿を見せる。

 

 そこに真奈美が戻って来た。

 看護師に付き添われ、車椅子に乗って。

 俺は、ん? と思った。

 車椅子、それが全てだ。


 「あっ、パパ! 来たんだ」


 真奈美が驚いていた。

 おいおい、そんな表情でおれは応える。

 

 「真奈美チャン、お帰りなさい」


 輝クンが笑う。

 何だか、待ちに待ったお楽しみが来たように。

 実際、輝クンには真奈美は今の全てなんだろう。

 純粋に喜んでいる。

 

 「パパ、もう少ししたら、看護師さんがクリスマスの踊りを見せに来てくれるんだよ。いっしょに見よう!」


 真奈美が言った。

 俺は、遠慮する。

 

 「そろそろ、耕助達に会わないと!」


 その場しのぎの嘘だ。

 真奈美と居たいが、別に今でなくていい。

 それくらい、輝クンとの話が濃かった。

 真奈美の顔に寂しさがあった。しかし、顔を上げた真奈美は、澄んだ冬の青空のような瞳と、とびきり笑顔をくれた。

 許してくれたのだな。

 胸をなで下ろす。


 部屋を出ると真奈美を車椅子で引っ張っていた看護師が、俺に続くように出る。

 扉を閉め軽い会釈をして俺の横を逃げるように抜けようとする。


 「すみません」


 俺は声をかける。

 看護師は少しビクッとした。

 どうやら、逃げるは正しいらしい。


 「真奈美、車椅子に乗ってました。歩けないんですか?」


 背中から看護師に話しかける。

 するとこちらを向き……。


 「体力的に歩くのは厳しいみたいです。お医者様からも、車椅子の補助がいると言われました」


 再び会釈して、歩き始める。幾分早歩きだった。

 真奈美は、悪くなっている!

 俺はそう感じた。


 この感じ……間違いでなかった!

 そして俺にとって、人生最大の苦痛が襲うことになる。その苦痛は決断を伴い……。



  第十話 魔王レシピエント



 正月明けの一月上旬、外は雪が降っていた。

 今年の冬はかなり降るらしく、天気予報で大雪注意報ばかり出ていた。

 


 俺は今、嫁と二人で病院のヒアリング室なる場所へ来ている。

 ヒアリング室、つまり相談室なる場所と見ていいはず。

 少し前に仕事場へ病院から連絡があった。

 必ず来てくれと念を押された。

 俺は少し疑問を感じたが、ここまで「必ず」と念を押す。しかし真奈美の病状には一切触れない。


 「話にならない!」


 キレ気味に話す。

 すると……。


 「お願いします。来てください。お願いします!」


 お願いしますの安売りを始めた。

 仕方ない……ため息を吐いてわかったと言った。

 しかしヒアリング室と聞き、何故と疑問が湧く。それは嫁も同じようで、頭を捻っていた。

 しばらくヒアリング室で待っていると、二人の医師が入って来た。

 一人は真奈美の医者だ。

 相変わらず、湿気た顔だった。

 もう一人は唇を真一文字にした医者で、見たことない医者だ。しかしその顔には、何だか決意があるように見えた。

 決意……何故?

 そんな気持ちを感じながら、真奈美の医者が喋り始めた。


 「本日はすみません、大変な雪の中をお呼び立てしたをお許し頂ければ……」

 「本題に入って下さい」


 俺はイラッとしながら、早口で言った。

 嫁は宥めたが、俺はイライラを募らせる。

 

 「わかりました。それではまず、今の真奈美チャンの状況を言います」


 そして喋り始める。

 開き直ったかのように、目がしっかりしていた。


 「十月、真奈美チャンが頭痛を訴えて、緊急手術をしたときのことです。本来は大きな手術になり春先のような大手術を行う予定でした」

 「行う予定?」


 嫁の顔が曇る。

 それは俺も同じだ。


 「しかし手術は、しませんでした。いいえ、できませんでした」

 「何故ですか?」


 嫁が声を上げる。

 少し高い声に、怒りが入っている。


 「真奈美チャンの腫瘍は、脳の大切な神経に纏わり付き侵されていました。手術は痛みを取り除くだけのものになり、規模縮小になりました」

 

 俺はその言葉に、喉の渇きを覚える。

 目は視線が定まらず、少し息苦しさが出てきた。

 

 「真奈美は?」


 嫁が言う。

 勇気を振り絞って、声を出した。

 

 「今の私には……できることが、ありません! 申し訳ない気持ちでいっぱいです」


 真奈美の医者から、終焉を聞かされた。

 終焉と軽い響きだ。しかしコイツの申し訳ない気持ちは、それくらい、いやそれ以上に軽かった。

 我が子の命を預け、ダメでしたと言われたのだ。

 

 「ダメでしたで済むかあ!」


 俺はいきなり大きな声を出した。

 その時、部屋の中にたくさんの看護師、医者が入って来た。

 そして俺を宥め、医者との間に壁を作った。

 尋常な雰囲気ではなかった。

 この意味は一体?


 俺がそんな雰囲気に、怒りが削がれる。

 すると壁となった連中が、部屋から出て行く。

 しかしこれでわかった。

 連中は外で聞いていて、また何かあったら入って来る!

 つまり俺も嫁は、包囲されている。


 「すみません、済ませるつもりはありません。私だって無念で仕方ないんです。悔しいんです」


 医者の舌が円滑になっている。


 「味方を周りに集め、強気になったのか? 馬鹿野郎があ」


 俺は口から本音を出した。

 医者が何かを言おうとして、もう一人の医者が制する。

 

 「後は自分が話をします。退席して下さい、そして外の皆にも自分の仕事に就いて貰って下さい」


 上擦った声で、もう一人の医者は言った。

 

 「わかった、後は頼んだ」


 早口で言うと、真奈美の医者は立ち上がり俺と嫁に深々と頭を下げヒアリング室を出た。

 部屋には俺と嫁、そしてもう一人の医者がいた。


 「真奈美チャン、この前初めて見ました。輝クンと同じく綺麗な瞳ですね。自分は輝クンの主治医です」


 そう言うと、頭を下げた。

 俺は頭を捻る。何故、輝クンの医者が居る?


 「まず、真奈美チャンの主治医を責めないで下さい。彼はやれることの全てをやりました。これは信じて下さい。そして自分のあり得ない主張を断腸の思いで聞いてくれました」

 「断腸の思い?」

 「輝クンの病室へ、真奈美チャンを移す約束です」

 「え!」


 俺は驚いた。

 そして嫁も、驚いている。


 「お父さん、自分は恨まれることを承知でこれをやりました。そして自分は、殺されるかも知れない! しかしどうしても、自分がしたいことを、言わなければいけません」


 輝クンの医者は、真っ直ぐに俺を見ていた。

 逃げない! そんな瞳に俺は、取り込まれている。


 「輝クンの心臓は、ガラクタです。治りません。だから……だから! 取り替えるんです」

 「取り替える?」


 嫁が聞いた。

 わからない、そんな表情だ。

 そして俺もわからない。


 「輝クンは、レシピエントです」

 「レシピエント?」


 俺が眉を顰める。

 

 「レシピエント、貰う側のことです。その反対は……ドナーなんです」


 ドナー……ドナー! 俺はこの医者が言いたいことが漸くわかった。

 つまり!


 「真奈美の心臓を、よこせ! と言うのか!」


 大きな声で、立ち上がり医者に詰め寄る。

 すると医者は、言った。


 「そうです! 輝クンを助けて下さい! 輝クンは新しい心臓があれば未来が開けます」

 「そのために、真奈美に死ねと言うのか!」

 「真奈美チャンは、未来がもうないんです。彼女は生きられる時間が限られたんです。お願いです、真奈美チャンの心臓を、輝クンに移植させて下さい。輝クンを真奈美チャンの心臓で生かせて欲しいんです」


 医者は言い切った。

 肩が震え、唇を強く噛んでいる。

 瞳は厳しく、鼻息が荒い。

 闘っているのだ。

 俺と! そう、コイツは俺と闘っていた。

 

 「自分には……いいえ、自分にもわかるつもりです。もし立場が反対なら、自分もお父さんと同じことをしています。お父さんは当たり前をしています。しかし! 自分は悪魔と呼ばれてもいい! いいから、こんなことをお願いしています。お願いです、輝クンを助けて下さい」


 その言葉に、俺は意地を削がれた。

 真っ直ぐな言葉は、怒りを消し去る。そして今ある現実を、見せてくれた。

 今ある現実……それは、真奈美は助からない。

 それだった。

 そして心臓を求めている。

 つまり真奈美の死は、家族に委ねられた。いや、家族ではない。俺に委ねられたのだ。

 俺は家族の長である。

 つまり俺の言葉一つで、真奈美は決まる。

 とんでもない、神からの仕打ちだった。

 

 「直ぐに答を出せない。しばらくはこのままだ」


 俺が言った解答だ。

 こんな難しいこと、俺に突きつけやがって……。

 

 「話は終わりですか? そろそろいいですか? 真奈美を見舞いたいんです」

 

 嫁が言った。

 幕を引くために、強引に口が開いた。そんな感じだった。

 俺は、それに乗る。

 疲れたからだ。

 本当に、疲れた。


 「もう一度言わせて下さい、すみません! そして、輝クンを助けて下さい! お願いします!」


 背中から聞こえる悪魔の声に、俺は虚脱感が漂う。

 本当に、疲れまくる。

 本当に……。



  第十一話 信じる


 二月、雪は止んだ。

 どうやら、峠を越えたようだ。

 しかし夜は寒く、ヒーターが必要だった。

 今、俺と嫁は、家でお茶を飲んでいる。


 「眠れない」


 その一言でお茶になった。

 耕助、香奈美はぐっすり寝ている。

 それだけは、ホッとする。

 

 あの時の話から、俺は真面に眠った日々はない。

 眠れないのだ。

 眠りが浅い。

 あの日以来、俺の答はない。

 医者には保留の態度を崩していなかった。

 

 「昨日、私、真奈美を見舞に行った。そしたら……先生から」


 お茶を入れてくれた嫁が、椅子に座り涙声で話はじめる。


 「お願いします! なんて言われた」


 肩が震えている。

 俺は情けない気持ちだ。

 決断が迫っている。

 

 「痛!」


 嫁が腹を押さえた。

 古傷が痛むようだ。

 季節的なものと、ストレスと、両方を持っていると俺は感じている。

 

 「大丈夫か?」


 俺の言葉に、コクコク頷き笑顔を見せる。

 弱々しい嫁の姿に、何かがあったと感じた。


 「何かあったのか?」


 知らず知らずに、口が動いく。

 吐き出てしまった。

 

 「今日、病院へ真奈美を見に行ったら、『私の頭の中の悪者、全部やっつけたの?』なんなて聞いてきたの」

 「悪者……」

 「うん、私さ『大丈夫、やっつけた!』って、とっさに言ったの。そしたら真奈美、『そうなんだ』って弱々しく笑ってくれた。あの子、何だか知っているみたい」


 嫁は泣きながら、言葉を吐き出す。

 一言吐き出すことに、涙が一粒落ち、一粒落ち……何時しか号泣していた。

 俺は申し訳ない気持ちだ。

 嫁が嘘を言わないと、いけなかったこと。

 真奈美が今を知ったのではないか? いや知ってはいたが、とうとう口から言葉となり漏れたこと。

 そして何より、俺が頼りないこと。

 俺がこんなんだから、嫁に病状を聞いたのだ。

 母親は強く、父親は影が薄い。それは都合の良い言い訳だど感じた。つまり俺は頼りない。

 弱い、間違いない事実だった。

 

 「真奈美、死ぬって思っているんじゃあ……」

 「そんなことを言うな!」


 俺は大きな声を上げる。

 死ぬ……その言葉に熱くなった。

 しかしふと我に返と、嫁に「すまない」と言い頭を下げた。

 

 「アーン、ママがいない」


 寝室から香奈美の泣き声がする。

 今の大きな声で、起きてしまった。

 

 「スマン」

 「ごめんね、『死ぬ』なんて言葉使って、ごめんね。私達も寝ましょう」


 嫁は目を真っ赤して、無理矢理笑う。

 俺は無言で、見送る。


 「香奈美、ごめんね! さっ、寝ましょう」


 嫁の声がする。

 香奈美の泣き声が、小さくなっていく。

 おそらく眠ってしまうだろう。

 俺は一人残された。

 

 俺は……嫁の力になっているのだろうか?


 ふと、疑問を感じた。

 俺は真奈美のために闘っている……はず。

 しかしそれは嫁も同じ。

 知らず知らずに、俺は嫁のことを考えないでいた。そんな気がする。

 今の涙は俺が情けないから、流れ出たモノだと痛感していた。

 

 強いヒーローには、なれない。


 だからと言って、腐ることも許されない。

 真奈美の時間は……認めたくない。


 認めたくない! しかし!


 俺も疲れた。

 寝室にフラフラしながら入っていく。

 灯りは消えていて真っ暗な中を、スマホの光をライトにしながら布団に入る。

 

 「寝ましょう」


 嫁の声がした。

 まだ眠れていないのか。

 おそらく眠れないのだろう。


 「なあ」


 俺はポツリと呟いた。


 「なに?」

 「俺に任せてくれ」

 「え?」


 嫁が驚き、枕が軋む。

 俺を見たようだ。


 「任すって?」

 「俺はオヤジだ。みっともなくても、格好悪くても、真奈美のオヤジだ。俺が全て決める!」


 声を振り絞る。

 俺は男だ。男はオヤジだ。

 真奈美のパパで、ヒーローである……はずだった。

 暗い部屋は、俺の格好悪さを映さない。しかし皮肉なまでに、それが好都合だった。

 

 「はい……わかりました。私は信じますから」


 嫁は静かに言った。

 掠れた声だ。

 おそらく、泣いているのだろう。 

 

 信じる……重い言葉だ。


 そして怖かった。

 一体何を、信じているのだろうか?

 一体、何を……。




 第十二話 父親同士


 仕事は休み。

 俺は病院に来た。

 耕助、真奈美、二人を引き連れている。嫁は、来ていない。少し体調を崩した。疲れが出たのだろう。

 嫁を家で一人ゆっくり休ませる。

 俺ができる唯一の、手助けだった。

 

 病院に来るのは、久しぶりになる。

 あの時以来か?

 

 「パパ、早くいこ」


 香奈美の声に、俺は頰を緩ませる。

 

 「パパ、変な顔」


 耕助が容赦ない一言をくれる。

 俺は「こら!」と軽く言い笑う。

 

 「へん、へん」


 香奈美からも笑われる。

 子供達の笑顔は、俺を救ってくれた。

 何だかホッとする。

 ありがたい。

 さて、真奈美に会いに行こう。



 真奈美はベッドの上で、笑って出迎えてくれた。

 頭の包帯は外れ、髪もそれなりに整っている。

 美しい瞳に俺はどこかホッとする……が、体を見て肌の色艶を見て、どこか複雑になった。

 体の張りを感じず、白い肌も健康的とは世辞にも言えない。

 認めたくない、認めたくないが……わかってしまう。

 嫁の体調不良が、理解出来た。おそらくは、この姿に精神をすり減らしていたのだろう。


 子供達が無邪気に会話して、笑っている。

 そこに俺は入れない。入るつもりもないし、入りたくはない。

 俺が入っても、何だか意味がないように思えた。

 ここは静観していた。

 いろいろ話をし、いろいろ笑っていた真奈美がいきなり俺を見る。

 

 「ねえ、パパ」

 

 真奈美が声をかけてきた。

 俺は「ん?」と返事をする。


 「パパ、私、風になりたい」


 真奈美がいきなり言った。

 本当にいきなりで、訳がわからず驚くしかなかった。

 耕助、香奈美もいきなり目を丸くしている。

 おそらく、俺と同じく不意を突かれたようだ。


 「『がんばれ、わたしは、みんなをはげます、風になりたい』、国語のお勉強で習ったんだ」


 真奈美が笑う。

 国語授業で習った言葉のようで、今それを使ったと理解する。

 俺はホッとした。

 意味の理解ができたからだ。


 「これ、好き。私も風になったら、はげましてあげるんだ」

 「どうやったら、風になるんだ?」


 耕助が、聞いた。

 真奈美は少し俯く。その後顔を上げる。


 「わかんない。でも、風になりたい」


 満面に笑う。

 耕助、香奈美も笑顔が弾けている。

 しかし、俺はどこか引っ掛かった。

 

 真奈美は何かを悟っている。


 そう感じずにはいられなかった。

 まさか、気づいているのだろうか?

 自分の時間を、気づいているのだろうか!

 こんな小さな子が……。


 「パパ」


 真奈美が声を出す。

 

 「なんだ?」

 

 俺が聞き返す。

 

 「輝クン、いい子だよ。パパみたいなヒーローだよ。私、輝クンに助けてもらったんだよ。ありがとうだよ」


 真奈美が笑う。

 満面の笑顔は、まるで宝石のようだった。

 いやどんな高価な宝石でも、この笑顔には安くみえる。それくらい価値があった。


 悔しかった。


 何故なら輝クンは俺にとって、魔王だからだ。

 魔王! レシピエント、だからだ。

 輝クンは、真奈美の……真奈美の……。

 俺は自然と、拳を握る。

 腕は小刻みに震え、息が荒くなった。


 コンコン……。

 病室のドアが鳴る。

 誰かが、叩いている。

 少しして、イケメンが顔を見せる。

 イケメン……魔王の父親だった。

 かなり表情は硬い。


 「真奈美チャンのパパさんですよね」


 声を聞く。上擦り気味で、緊張をしていることごわかった。

 俺が真奈美に会いに来たことを、誰から聞いたかはわからない。しかしそこに魔王の父親はいた。


 「何ですか?」


 俺は聞き返す。


 「ここではちょっと、場所を替えて下さい」


 場所替え、つまりは真奈美や、子供達には聞かされないとのことか。

 ……いや、間違いないな。

 内容がわかる。おそらく、あのことだろう。

 逃げては、いけない。


 「わかりました」


 顔を強張らせ、俺は魔王の父親と病室を出て行く。

 魔王の父親、間違いない俺にとっては。


 

 俺と魔王の父親は、中庭にいた。

 それなりに広い場所で、陽当たりはよい。しかし時季が悪い。暦では春とは言え、肌寒さは冬を引きずっている。

 木々は葉を持たず、芝は少しジメッぽい。

 そのため人は疎らだった。

 

 中庭の真ん中辺りの芝の上、本来は心地良い場所である。

 少し前にここに連れていかれ、そして今、俺は魔王の父親と向き合っていた。

 魔王の父親……棘のある呼び名だが、俺はそう思うしかない。

 

 「お呼び出ししてスミマセン。今回は聞いて欲しいので、どうしても聞いて欲しいので」


 魔王の父親は言った。

 俺は逃げない! その意思表示を見せるために、目を見る。

 そこには、「決心」「覚悟」そんな思いが映る。だから俺は逃げない。逃げられない!


 「輝のことです。輝の心臓は動いてますが、ある意味動いてません。成長をすると心臓の動きができなくなり、生きていくことができなくなります」

 「……で」

 「輝の病気を治すには……治すには! いただく……これしかないんです」


 そう言い、頭を下げた。

 俺には言葉がない。

 罵声を浴びせること、怒り捲ること、殴り倒すこと、何故だかそれをできないでいた。

 ズボンの強く握り、おそらく小刻みに震えている。

 そして頭を下げ続ける、魔王の父親を見るしかなかった。


 いっしょだった。


 闘っている。此奴こいつ)も、一生懸命に闘っているのだ。

 そして今、自分の出来ることをやり遂げている。

 当たり前をしている。

 しかし、当たり前をする勇気に、俺は言葉が出ない。

 ほんの少し、時間が流れる。


 「男は損だな」


 ポツリと呟いた。

 魔王の父親が、顔を上げる。

 驚きと意外、それが顔に出ていた。

 もっと激しい言葉を覚悟していたことが、その表情からはわかる。


 「真奈美は医者から、見捨てられた。今はただ、待つだけだ。たが、俺はまだ諦められない。だから……」

 「だから?」

 「その日が来るまで、無言を貫く。真奈美が今以上に酷くなり諦めがついたら……親父として決断をする」


 これが俺の精一杯の解答だった。

 真奈美はまだ、笑っている。

 今日も笑っていた。

 つまり……まだ生きている!


 「その日が来たら、病院へ来てその時に欲しい言葉をやる」


 俺はそう言うと、背中を向けて歩き出した。

 これ以上は、辛かった。

 

 「待ってます! お願いします! 輝を助けて下さい!」


 背中から聞こえる甲高い、絞り出した声はどこか掠れている。

 俺はその声を、体に刻んだ。

 

 助ける……それは、真奈美を……。


 俺は首を振りながら、歩き続ける。

 真奈美に会いいった。

 

 

 病室に戻ると、真奈美、耕助、香奈美、そして魔王がいた。

 

 「お帰りパパ!」


 無邪気に笑う真奈美に、俺は少し笑う。

 真奈美はまだ笑ってくれる。

 つまりまだ、生きている。

 ふと魔王、いや輝クンが視界に入る。

 何だか言いたげな顔で、唇を少し噛んでいた。

 弱々しい姿は、とても健気だ。

 俺は視界に入らないように、真奈美と子供達だけを見ることにした。

 今、それが俺にできる抵抗だった



 時間は過ぎる。刻一刻と過ぎていく。

 そして、とうとう……。



 第十三話 生きる


 

 三月初旬、会社から俺は病院に急いでやって来た。

 真奈美の意識がなくなったからだ。

 とうとう、その時が訪れたのだ。

 

 病院には嫁がいた。

 耕助は学校で、香奈美は保育園だ。子供達は先生方の好意になり、病院へ送ってくれている。

 ありがたい。しかし見せたくない。


 「パパ!」


 半狂乱に叫ぶ嫁。

 どうやら真奈美は、終わりを迎えている。

 

 俺が現れると同士に、医者達が現れた。

 みんな硬い表情で、俺を見る。

 

 「真奈美チャンの脳が停止しました。今は延命治療していますが……お願いします! お父さんの意志で助けて上げて欲しいんです」


 一人の医者が、俺に言葉をぶつける。

 

 「真奈美を、見せてくれ。それだけで……いい」


 俺はポツリと言葉が漏れた。

 真奈美を見たいからだ。


 「わかりました」


 医者が、即答する。

 俺は頷いた。



 集中治療室に横たわる、真奈美がいた。

 肌色は白く、見た目はいつものようだ。本当に? 死んでいるのか? 俺は目を疑う。

 真奈美の周りには、たくさんの医者、看護師がいる。

 プレッシャーをかけられている。

 態度保留の俺に、決断を迫るように存在しているのだ。

 嫁は俺に寄り添い、そして真奈美を見て泣いていた。

 声を殺してはいるが、啜り泣く声が俺の耳に入る。 

 医者の一人が、俺の前に来る。

 この前の医者だ。

 真奈美の心臓を寄こせと、言い放った奴だ。


 「真奈美チャンは生かしてますが、いずれは死を迎えます。お願いします、輝クンを助けてください。私は医者です助けたいんです。それには真奈美チャンの心臓か必要なんです。とんでもない皮肉です。一人の命を救うために、一人の命を犠牲にする。しかし……お願いします!」


 医者が深々と頭を下げた。

 すると他の医者や看護師達が、頭を下げる。

 俺は嫁を見る。

 泣いている嫁の、肩を揺する。

 嫁が涙を流してながら、俺を見ていた。


 「すまない」


 俺は嫁に、詫びる。

 嫁が再び俯くと、大きな声を上げて泣き始めた。

 俺は弱いヒーローだ。

 強くも、格好良くもない。

 

 「好きにしろ!」


 ポツリと呟き、肩を落とした。

 完全敗北だった。

 

 「あ、ありがとうございます!」


 医者が嬉しさを噛み締めるように、言葉で俺を殴る。

 なんだかいろいろ、俺に言っていたが、耳に入ってこない。

 気がつくと、真奈美か眠るベッドが動かされている。

 俺はそれに気づき、声を掛けようとして……何もできなかった。

 そう、何もできなかった。


 







 

 

 

 


 



 


 

 

 



 

 

 

 



 


 

 

 


 



 

 

 

 




 

 









 

 


 

 

 

  

 







 


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