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風のように、空気のように
そこにあるもの。
当たり前にそこにあるのに、目には見えない。
ふと声が聞こえてきて、耳を澄ました。
でも、邪魔ばかりなんだ。
人の声も、自動車の音も、騒々しい。
空気がなければ、音は聞こえないのかもしれない。
そもそも、無かったら、なんてあり得ないんだけど。
僕が聞いた声はあり得ないものだったから、
あり得ない声を聞きたかったから
その声を聞くには、全てが邪魔で全てがうるさい。
そう、空気も風も邪魔だと思った。
ふざけるなよ。
この体はそんなに万能じゃないんだ。
小さな二つの目で見たものを其処にあると認識する。
皮膚で感じる空気の動き、温度、湿度。
匂いも音も、其処にあるというのに。
体と魂、全部で僕なら
僕は、全身全霊で全てを感じよう。
風のように、空気のように、
全てが其処にあると云うのなら。




