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優しい風
優しい風が吹き抜けた
青々とした木の葉を揺すり
伸びた草を擦り
蝶がはらはら飛ぶように
灰が煽られ舞い上がる
猫がじっとこっちを見てる
丁寧に前脚揃え
目を光らせて
髪が靡くと
頬を優しく撫でるように
ふわりと此処で風が止まった
薄い服のあいだを通り抜けていく
少し冷たい空気が
頭の中も空っぽにする
見上げると雲も無い
薄い水色の空が広がる
何も無かった。
そう、何も。
風がまた、木の葉を揺らす。
鳥が鳴いている向こう側の森に
舞い上がった灰が降る
風が吹くと消えていく。
僕の記憶が消えていく。




