第3話 見た目と違って
次の日、みんな朝から体操着に着替えて全学年の生徒が、体育館に集まっていた。
学年事に始めるので、まずは高学年の生徒は体育館での測定。低学年の生徒はグラウンドでの測定がじまった。
まずは準備体操を始めてから。順番に測定が始まった。
最初は垂直飛び。それから、反復。体の柔らかさを図る前屈、上体反らし。順次計測が終われば、次はグラウンドでの計測だった。
私は、運動が得意では無いので、こんな日は早く終わって欲しかった。
男子とは別れての測定だから、彼の姿をなかなか見れなかった。それに私の推測だか、見た目がとても運動向きには見えなかった彼も同じ想いかも。体は細く、メガネが運動の邪魔になるのではと。勝手な推測。でもなんで、こんなに佐藤くんの事ばかり考えているのかな?
休み時間を挟みながら、次はグラウンドでの測定だった。
まずは、走り幅跳び。鉄棒。走り高跳び。ボールの遠藤。最後は50メートル走。 記録が終わった生徒達は、教室に戻り体操着から服に着替えて、記録されたカードをみんなそれぞれ見せ合ったり、教え合ったりしていた。
このクラスの男子達は仲がいいのか、いつもみんなで集まっている。
このクラスには足の速い森山くん、伊藤くんと二人もいる。
この二人は、学年で1、2番の速さだそうで、みんな盛り上がっていた。
しかし、学年で一番速かったのは、森山くんでも伊藤くんでもなかった。彼、佐藤くんだった。
タイムも明らかに二人より速かった。これには本当に驚いた。
人は見た目で判断は出来ない。
あと、遠投や、走り幅跳びなんかも凄い記録だったらしい。
らしいと言うのは、後から友達から聞いた話だから。
どうも、山崎さんが直接本人から聞いた話だった。
また私の心の中でモヤモヤするものがあった。なんだろう?
しかし、今ならわかる。山崎さんに焼きもちを妬いていた。
隣の席で、教科書が無い為机をくっつけて授業を受ける二人。家が近いので。登下校もいつも一緒。それに山崎さんの性格なのか、わりかし男子達とは気軽に話している。もちろん、彼にも。
私は羨ましかった。私も彼と話がしたい。
だって、今だに話をしていない。遠くの席から見ているだけ。
今日は、給食の後に、掃除をして帰るだけ。
教室で帰る準備をしていたら、姉がやってきて、
「えみ~早く帰ろう~。」
「お姉ちゃん、ちょっと待って。」
私は急いで教室を出る。
帰り道、今日の記録の事を報告し合って、急に姉から彼の話題が出てきた。
「えみ、あの転校生の佐藤くん。足が凄く速いだってね。うちのクラスの男子が言っていたよ。」
「うん、なんかそうみたい。」
「なに?その私は興味ありません。みたいな態度。」
「別に。そんな事ないよ。」
「だよね~。まぁえみ本人がまだ自覚していないからね~」
「お姉ちゃん、なんの事?」
「何でもないよ~。」
姉にからかわれ、家に着いてからも、姉の謎の行為になんの事を言っているのかが、全然分からなかった。
そして、明日も彼に会える。
そう想いなから、眠りについた。
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
短編小説ですが、良かったら最後までよろしくお願いいたします。