逆ハー令嬢取り巻きCの事情
ありきたりですが
「お前にはこの娘の取り巻きになってもらう。」
「は?」
トントン、とデスクに置かれている写真を叩きながら物語の悪役の様な笑みを浮かべる。
親父に書斎に呼び出された。その時点で嫌な予感がしていたが間違ってなかったらしい。ついに頭がイカれたのか親父。
「お前も知っているだろう?」
唖然としている此方を気にする事もなく話を続けられる。
「この国で知らない者のいない程の企業や病院、政治家のガキ共を侍らしている庶民様でしょ。」
まあ、知っているかと言われたら知っているとしか言えない。俺の通っている学園に特待生で入るやいなや、お坊っちゃま方を虜にしてやまない魔性(笑)の女だ。
女達には嫌われているし、少しは考える事の出来る奴なら間違いなく遠巻きにして目も会わせないだろう。
「そんなの放っておけば良いじゃない」
放っておけば我が家にとってライバルである企業やら何やらへの悪影響になるんだから。それに出来ることなら見える地雷は回避したい。
「確かにそうなのだが……。しかし上手くいけば他家への借りが作れる。お前の働き次第だがな。」
そう言って嗤っている親父。
この時点でろくでもない事を考えているのは分かるが、もう少し分かりやすく説明してほしい。
「コイツらが阿呆な事を考えているのが判明している。」
そう言って複数の写真がデスクに出される。写真には侍らされている御曹司達。
「ふぅん。」
全く興味がない。
「コイツ等に現在婚約者がいる事は知っているな?」
「知ってるよ」
「コイツらは婚約を解消する事を前提に動いているらしい。」
「それはまた」
アホくさい。
正確には何人かは婚約ではなく、婚約予定って感じだった筈。まあ、婚約を前提に提携したりしているんだから、この問題は企業などにとっては、さぞかし頭の痛い事だろう。
「お前には、そちらの企業の方へ恩を売る為に情報を流してもらう。」
「つまりスパイの真似事でもしろと?」
「ああ」
また面等な事を考えたものだ。放っておいて自滅を待てばいいのに。
「はいはい、了解しました。」
「任せたぞ」
俺がこの話を安請け合いしたことを後悔するのは、思ってもいない展開になってからだった。
こんな感じの話を読んでみたかったので、出来心