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第2話 襲撃

旅の前に準備を始める勇者一行。荷物持ちとして勇者の仲間に加わった主人公は、勇者たちの荷造りを押し付けれれる。しかし、荷造りをしている主人公に突如魔物が襲い掛かり襲撃を受け、勇者たちは武器を取って戦うことになる。


 さて、とりあえず勇者パーティ―に加われたんだが荷物持ちって・・・。

 そんな俺は、勇者たちの荷物の荷造りをしていた。

「荷物持ち!早くしろよ!」

「早くしなさいよーノロマ」

「ホントにコイツ連れていくんですかー」

「そんなこと言うなよ。いざとなれば盾にも使えるだろ?」

「確かに!ウケるー」

 すごく不安になるような事を話している気がする。

 俺は、荷物の準備をしながらパーティーメンバーの顔を見る。勇者と俺以外は全員女であった。ハレームかよ。べ、別に羨ましくないんだからね!

「おい。あとどのくらい準備にかかる?」

「えっと・・・30分ぐらいかかるかも・・・」

「チッ。ふざけんじゃねぇよ!時間かかり過ぎだ!」

「すいません!」

 勇者に向かって頭を下げる。悲しい。怒鳴られたら自然に体が動いてしまう。

「準備が出来たら呼べよ。あの酒場に居るからよ」

 勇者はパーティーのメンバーを連れて酒場へと向かって行った。

 荷造りの準備を再び始める。

「あのーお手伝いしましょうか?」

 荷造りをしている俺にある女性が声をかけてくる。

「マリンダさん!いやーわざわざ手伝っていただかなくても大丈夫です!そのお気持ちだけでもいただいておきます」

 マリンダさんは、勇者のパーティーの中でも唯一やさしく接してくれる。女神だ。

「じゃあ何かあったら呼んでくださいね」

「はい!」

 マリンダさんは笑顔を俺に見せて酒場へと走って行った。かわいい。

「手伝います」

キーナちゃんが声をかけてくる。また、嫌味でも言われるのだろうか・・・。

「早く終わらせるために手伝います」

「でもみんな酒場に行ったぞ?行かなくていいのか?」

「言ったじゃないですか。早く終わらせるためです」

「まぁ・・・一人でするよりも二人でする方が早いけど・・・君に何の得があるんだ?」

 キーナは、荷造りをする手を動かしながら微笑んでいた。

「早く終われば、きっと勇者様が喜んでくれる」

 勇者様が喜んでくれる・・・ねぇ。勇者に相当お熱なんだね。

 その笑顔俺にも少しは向けてほしいもんだ。なんだかモヤモヤするなー。


「いやー勇者様!いくらでもお飲みください!」

「そうか?どんどん持ってきてくれ!」

「はい!少々お待ちを」

 ガランは酒場で仲間たちをはべらせ酒を飲んでいた。

「キーナはどうした?」

「あの子ならあのお荷物と一緒ににずくりしているみたい」

「馬鹿ねーあの娘も。一緒にいればガラン様にかわいがってもらえるし、美味しいお酒も飲めるのに」

「仕方ないじゃない。あの子は田舎者なんだから」

「まぁまぁそんなこと言うなよ。純粋でかわいいじゃないか」

 ガランは、酒場へ入ってきたマリンダを呼ぶ。

「ガラン様。何でしょうか?」

 マリンダは笑顔で答える。

「キーナを呼んで来いよ」

 ガランにそういわれ、マリンダの表情が変わる。

「えー呼び行くの面倒ですよー。誰か代わりに行ってきてー」

「うわー本性出てるじゃん」

「あっ!いっけなーい」

 パーティーメンバーが笑いに包まれる中一人の少女が手を挙げた。

「私が行きます」

「さすが仕事が出来るね。行ってきてよ」

「わかった」


「何でこんなに荷物が多いんだよ」

「仕方ないです。長旅なんですから」

「絶対いらない荷物もあるって!」

「口より手を動かしてください!終わりません!」

 キーナちゃんは手厳しい。でも、なんだかんだ言っても手伝ってくれてるし、優しいところもあるんだと俺は思いたい。 

 それに、めっちゃ酒場の方見てるし。行きたいって事がまるわかりだよ。俺も酒場の方を見る。

(俺だって酒飲みたいよ・・・冷たいビールとか飲みたいね!)

 そんなことを思いながら酒場の方を見ていると、こっちに向かってくる人影が見えた。

「あれ・・・アイスさん?」

 人影の正体は勇者パーティーの一人。職業スカウトのアイスちゃんだった。スカウトとは、主に偵察などの諜報担当の職業だ。

「キーナ。勇者様が呼んでる・・・早く来て」

「でも・・・」

「荷造りなら任せとけ!俺が全部やっとくから」

「元々は貴方の仕事。キーナは関係ない」

「と、とにかくだ!行きたかったんだろ?大好きな勇者様の所に」

「だだだだだ大好きって、なななななにを言ってるんですか!バカですか!」

 うん。わかりやすい反応だね。

「さぁ行ってきなよ。俺のことなんて気にすることは無いよ」

 キーナちゃんは、荷物と酒場を交互に見ながら考えていた。

「じゃあ行ってきます」

 そう言うとキーナちゃんは、酒場へと歩いて行った。

 その背中を見送り、俺は再び荷造りを始めた。

「ちょっといい?」

 すると、俺はアイスちゃんから声をかけられた。

「貴方・・・何者?」

 アイスちゃんは、俺を睨みつけてきた。俺でもわかるような殺気を放っていた。

「へやっ!・・・どういうことかな?」

 思わず変な声がでてしまった。

「何か普通とは違うものを感じる。貴方の出身は何処?」

「日本だけど・・・」

「二ホン・・・聞いたことがない。ただの田舎者?」

「一応東京っていう大都会に住んでるんだけど・・・まぁ生まれは田舎かも・・・」

「トウキョウ・・・それは何?」

「ああ。日本の首都だよ」

「首都・・・二ホンは村じゃない?」

「ははは!村じゃないさ!国だよ」

「笑わないで。知らなかっただけ」

「ごめんごめん」

 なんかアイスちゃんたちと話していると親戚の子供と話しているみたいで悪くない。今は話してもくれないけど。

「でも二ホンは小さな国?本当に聞いたことがない」

「まぁ今度ゆっくり話してあげるよ」

「そう。では、荷造りをお願い」

「がんばりますよー」

 アイスちゃんも酒場へと戻って行った。

「さて、やるかねぇー」

 俺は荷造りを始めた。

「あれは・・・」

 アイスは森の方を見て不穏なものを感じた。

「来た」


「おお。来たかキーナ」

「は、はい!お呼びいただきありがとうございます!」

「まぁ。硬くなるな」

「それで私は何をすれば!」

 ガランはニヤニヤしながらキーナの体を見る。

「お前って意外とかわいいよな」

「っ!急に何を!」

 キーナは赤くなった顔を隠す。

 恥ずかしがるキーナの頬にガランは手を伸ばし触れる。

「怖がることは無いさ。さぁ俺に身を預けて・・・」

 突然酒場の扉が開く。

「勇者様。魔物が出た」

「なんだよ・・・いいところで」

 ガランは、壁に立てかけていた剣を手に取り立ち上がる。

「さっさと終わらせるか」


 荷造りをしていた俺は、物音がしたので森の方を見てみた。

 そして、森の中で動く影を見つけた。

「なんだあれ?人かな」

 とりあえず声をかけてみることにした。

 しかし、返事が返ってくることは無かった。

「気のせい・・・ではないみたいだな」

 すると、森の中の影が近づいてくる。近づいてきた影はなんと魔物だった。

「化け物じゃねぇか!何でこんな所に居るんだよ!ここ街の中だろ?」

 化け物は問答無用で飛びかかってくる。これなんて無理ゲー?

 とりあえず逃げ回ろう。

「助けてくれー!」

 目の前にあった小屋に何とか逃げ込む。

「危ねぇー。死ぬかと思った・・・あれが魔物か?」

 小屋の窓から外をのぞくとたくさんの魔物がウロウロしている。こういう場合ゲームなんかでは小屋の中に、武器になりそうなものが置いてあるはずだ。

 小屋の中を探していると武器になりそうなものは・・・木の棒くらいか。RPGでも初期装備は木の棒っていうのはよくあると思う。せめて、木製の剣みたいな名前でもつけておくか。どう見ても剣には見えないけど、まぁ細かいことは気にしないでおこう。いざ魔物退治へ!

 もう一度外に居る魔物を見る。

 手に持っていた木の棒をそっと床に置く。いやいや無理だ。正直に言うと魔物がすごく怖い。

「でもこれが夢なら・・・木の棒でも某ゲームみたいに無双できるんじゃ・・・」

 意を決して再び木の棒を掴み、立ち上がる。

「俺が相手をしてやる!魔物ど・・・」

 その時、俺の顔まであと数ミリの所を拳ぐらいの大きさの石が通り過ぎていった。

 オークがこちらを見ながら再び石を持ち構える。

「えっと・・・やぁみんなこんにちは」

 地面に木の棒を置く。

「オマエ。ソンナモノデ、タタカウキ、ダッタノカ?」

 片言だけど普通に会話が出来るタイプのオークさんでした。

「あの・・・タタカウキハナイデス」

 自分も片言で喋っていた。

「タタカウキハ、ナイナラ、ナニシテル」

「えっと・・・逃げようかな・・・って」

 その言葉を聞きオークは、斧を持ち出す。

「立派な斧ですね・・・泉の女神様にでも頂きになられたのでしょうか?」

「ヨワイヤツ。キライ。コロス」

 何匹ものオークが斧を持ちこちらに走って向かってきた。

 逃げるしかないよね!

「なんでだよー!夢の中でくらい格好良くしてくれよ!」

 オークの集団からの逃げるために走っていると、次々と他の魔物たちもオークの集団に加わっていく。

 非常に危険な状態です。誰か助けてください。

「冒険が始まる前に俺の冒険が終了しそうなんですけど!まだ、始まってもないぞー!」

 もう必死に逃げるしかなかった。しかし、徐々に追いつかれ始める。

「誰かー!助けてくれー!」


「だらしねぇなーまぁ荷物持ちだから仕方ねぇか」


「避けれたら避けた方がいいわよー」

 突然目の前に現れたのは剣を構えた勇者達だった。

「魔物ども覚悟しろ・・・はぁぁぁぁぁぁ!」

 勇者は、剣を振り上げる。

 振り上げた剣がは徐々に光を帯び始める。

「なんかヤバい雰囲気じゃん!ヤバイ!ヤバイよ!」

 必死に逃げ回る。

「逃げるだけだじゃなくてちゃんと戦ってください!」

「いやいや俺ほんとに何もできないから!」

「努力してください!」

「とりあえず助けよ?人助けは素晴らしいよ!」

「なんか嫌です」

 勇者たちの姿にオークたちは気を取られる。

 ヒドイ!あのおじいさんはどこだー!またあのすばらしさを!・・・そんなことを思いながらとっさに物陰に隠れた。

「ママー!どこー!」

 子供?何処にいる?

 子供の姿を見つけるが、子供の背後には魔物が迫っていた。

 しかし、子供のもとへ行くことが出来なかった。足が震えて動けなかった。

(俺・・・何してんだよ・・・格好悪いな・・・)


「よわむし」

 

 アイスちゃんが俺の横を走って行った。 

 そして、キーナちゃんも走っていく。

「はっ!」

 アイスちゃんは、ナイフでオークを切り倒す。

 キーナちゃんは、子供を抱きかかえる。

「やった!」

 俺は思わずガッツポーズを取る。

「キーナ!はやく」

「うん!」

「あ、危ない!キーナちゃん!」

 キーナちゃんを他のオークが持っていた棍棒が直撃した。

 キーナちゃんの体は、吹き飛ばされ地面にたたきつけられた。

「キーナ!」

 アイスはキーナに駆け寄る。

「だい・・・じょうぶ・・・この子は無事だよ・・・」

「私が助ける」

(ウソだろ・・・)

 俺は勇者の方を見ると、剣の光は輝きを増し、今にも剣を振り下ろそうとしていた。

「キーナー!アイスー!早く逃げなさーい」

 勇者の横に立っている自称勇者の正妻のアルメニダさんが声をかけた。助けに来ればいいのに。

 逃げろと促すということは・・・勇者の攻撃は結構ヤバいものなのかもしれない。

「アイス・・・この子をお願い」

「だめ。一緒」

「おねえちゃん・・・」

「このままじゃ!」

 勇者の攻撃を止めんとするようにオークたちをはじめ多くの魔物たちが向っていく。

「勇者様早く!このままじゃ私たちまでやられちゃう!」

「たく・・・使えねぇな。まぁ、魔導士ぐらいすぐ見つかるだろ。・・・でも、アイスはもったいない気もするけどな。我を選びし剣よ。我に力を与えよ!正義の断罪ヒーロー・ジャッチメント!」

 勇者は、剣を振り下ろした。

 剣に帯びていた光は大地を割りながら魔物たちへと向かっていき、魔物たちを次々と飲み込んでゆく。

「キーナ・・・」

「大丈夫だよ。アイス」

 アイスは、子供を抱きかかえてその場を離れる。


「よわむし」


 頭の中にアイスちゃんに言われた言葉が浮かんだ。

 俺は、ただの一般人なんだよ・・・でも、夢だから・・・ってこれ夢じゃねぇか!

「夢の中だ!死ぬことはねぇはずだよな!」

 いつの間にか物陰から飛び出しキーナちゃんの所へ走っていた。

「夢の中でぐらいかっこよくてもいいよな!」


「あの荷物持ち・・・バカかよ」

「きっとあの男死んだわね」

「あーあせっかく便利なの見つけたと思ったのに」

「また探せばいいんだよ。罪人なら腐るほど居るしな」

「それに罪人なんてすぐ作れるし!」

「ここでは言っちゃダメよー」

「あは!ごめーん!」


 アイスは、心のなかで祈った。誰でもいい友達を助けてと・・・。

 するとアイスの目には、自分とは反対方向に走っていく剣持正義の姿が映った。

「・・・お願い・・・」


 キーナは、涙でにじむ目をこすりながらアイスの背中を見る。

「もっといっぱいいろんなことしたかったな・・・でも、勇者さまに可愛いって言ってもらえたのうれしかったなー」

 キーナは、あふれる涙を必死に堪える。

 しかし、光は無情にもだんだんと迫ってくる。迫ってくる光をみながら、死を覚悟したその時だった。


 体が浮いた。


 正確には、誰かにかかえられていた。

 キーナは、抱えた主をみた。

「よっ!愛しの勇者様じゃなくて悪いな」

「あなたは・・・逃げたハズじゃ・・・」

「まぁなんだ・・・少しくらいかっこいいことしようかと」

 多少は好感度がアップしたかもしれないけど、今は急いで逃げよう!

 キーナちゃんを抱えて走り出す。しかし、すぐに問題が発生した。

(日頃の運動不足が・・・すごくきつい!)

 女の子も重いもんなんだな・・・もう少し動いてくれ俺の足!

「無理・・・しないで・・・」

 こんな時に今にも泣き出しそうな顔にそんなか弱い声で言われたら意地でも助けたくなるんだよなー。

「勇者にまた会わせてみせるよ」

 うわー何かいい事言ってるなー俺。 

 よし!今思った事は、心の中に留めておこう。

「あなた本当にバカですね」

「バカで結構!」

 必死に逃げ、何とか岩の裏に隠れることができた。

 すると、勇者の攻撃で周りの地面が割れていく。

「危なかった・・・」

 勇者の放った光が徐々に収まっていき周囲は静かになっていた。

「おーい。荷物持ち〜生きてるか〜?」

 勇者の声に岩陰から手を挙げて答える。

「キーナちゃん大丈夫かい?」

 キーナちゃんは、俺に抱きかかえられたままコクンと小さく頷いた。

 そんな俺たちに、勇者達が近づいてくる。

「キーナ!無事だったか!」

 勇者は、今にも泣き出しそうな顔でキーナに駆け寄り、俺を突き飛ばしキーナちゃんを抱きあげた。

「勇者様?」

「本当に良かった!生きていてくれて!」

 あいつ容赦無くキーナちゃんを巻き添えにしようとしてたような気がするんだけど。ちなみに、俺も死にかけたんですけど。まぁ夢の中だから死なないけど。それでも、勇者に抱きかかえられてキーナちゃんは嬉しそうなんだよなー。でも、俺も一応頑張ったんだけどなー誰か労って・・・・くれるはずもないよな。

「おい。荷物持ち」

「へっ・・・俺?」

「そうだよ!お前がもうちょっと使えたらキーナがこんなに傷つくことは無かったんだよ!」

 すごく理不尽なこと言われている気がする。そもそもの原因は、勇者様じゃないのか?

 でも・・・俺も逃げたということには変わりはないけど・・・。

「早く準備しろよ。出発するぞ!」

 俺は、荷造りを再び始める。

「あなたは、がんばった」

 振り向くとアイスちゃんが立っていた。

「ははは・・・励ましてくれるのかい?」

「励ます?私は事実を言っただけ」

 アイスちゃんは、表情を変えずに言った。

「じゃあ勝手に励ましてくれたって思っておくよ」

 すると、アイスちゃんはテクテクとこちらに歩いて来ると荷造りを何も言わずに手伝ってくれた。

 アイスちゃんが手伝ってくれたおかげで荷造りは終わり、勇者達と一緒に次の町へと向かって旅が始まった。

オークたちの襲撃を退けた勇者一行は、次の町に向かうために旅を開始した。

旅の道中や次の町で主人公たちを待ち受けているものとは・・・

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