表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

対聖夜用爆破工作軍 第三粛清部隊

作者: 245

 12月25日。それは、彼らの唯一の活動日であり、聖戦である。

 世にはびこる不純な2人組の粛清、及び爆破が主な任務。

 

 「隊長。第三粛清部隊、物資補給完了いたしました」

 「よし、再出撃だ」


 対聖夜用爆破工作軍。通称非リア同好会。最初は数人の集まりだったそれが、今では数千人規模へ膨れ上がった。彼らは強い負の感情で結びつき、12月25日にクーデターを起こそうと考えた。作戦の考案者は、非リア同好会設立者にして対聖夜用破壊工作軍の最高司令官だ。


 現在、彼らは各地で爆破工作をおこなっている。爆破工作といっても殺傷が目的ではなく、ドッキリのようなものだ。

 ここで第三粛清部隊の活躍を見てみよう。

 

 「あれだ……配置に着け、お前ら」

 「くそが……いちゃつきやがって! 隊長、派手に行きましょう!」

 

 若い隊員が憎悪の目を、前方の若者二人組へと向ける。その目はドッキリの仕掛け人とは思えない。男女で、カップルのようだ。ベンチで仲良く喋っている。


 「焦るな……起爆」


 隊長の合図と同時に、豪快な爆発音。リア充達が夜空へ吹き飛ぶ。

 

 「Hooooo!」

 「次行くぞォ!」

 

 湧き上がる隊員達の歓声。隊長は、士気が上がるのを感じながら進む。

 

 「前方に粛清対象発見! 如何いたしましょうか」

 「爆破だ」

 「了解!」

 

 次は、女二人、男一人。どうやら揉めているようだ。隊長は、長年のリア充の観察で得た洞察力で、それは男が間違えて二人と予定を合わせてしまっているのだと予測した。

 そして、すかさず。


 「遠慮はいらん。……やれ」

 「設置完了! 退避ー!」

 

 間をおいて、爆発。3人は真っ黒の姿で呆然としている。


 「YHEEEEEEEE!」

 

 隊員総勢20数名は次の獲物を探す。

 そして。

 

 「隊長ォ! カップルだ! しかも……男が花束と婚約指輪を持っている!」

 「なんだとおおおおおおおお」

 

 隊長に向けられた筈の報告は、隊員たちの憎悪の炎に油を注いだ。

 隊長も、少したじろいでいる。しかしさすがというべきか、的確な指示を出す。

 

 「お前ら、男は恥ずかしがって花束を渡すのを躊躇している。この隙に……B班は火薬を仕掛けろ。C班は花束に工作、A班は合図で突撃だ」

 「はい!」

 「了解」

 「おう!」


 各班一斉に動き出す。それにカップルが気付く様子は無い。隊長は黙って二人を見つめている。

 

 「全班、準備完了致しました。隊長、指示を……隊長?」

 

 準備完了の報告に、一瞬隊長は気付かなかったようだ。しかしすぐに隊員達に向き直り口を開く。


 「……よく聞け。この粛清が最後だ。後は他の部隊に任せるぞ。では、最終作戦開始ィ!」

 「オオー! リア充この野郎おお!」

 

 大きな声とともに、A班がカップルめがけて突撃。それに気付いたカップル二名がぎょっと驚く。しかしもう遅い。C班の仕掛けた特殊な薬品が発火し、たちまち花束は灰と化した。思わず男は後ろに隠していた手を前に出してしまう。

 女の目の前に現われる、指輪。あっ、と二人が声を出したとき、B班は導火線に火を着けていた。導火線の先には、火薬。男が女を連れて逃げようと走った。

 そこにはA班。二人を執拗に追いかけます。そして、轟音。今日一番景気の良い爆発だ。

 へたへたと倒れこむ二人。隊員は歓声を上げて去っていく。

 

 男は、指輪が無いことに気付く。そこへ現われる、中年男性。隊長である。

 彼の手には、男の持っていた指輪。一瞬の期待が男をよぎる。しかし隊長は、粉々に砕いてしまった。

 

 そして一言。

 

 「こんな安もんじゃなくて、コイツを渡してやりな。……メリークリスマス。アイツを幸せにしてやってくれ」

 「……!」

 

 聖夜は、終わる。残るのは、綺麗な指輪と、一つの想い。

失敗した感

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ