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人魚姫は嫌いです。  作者: みや
1/5

深海の魔法使い

もし人魚姫の魔女が主人公だったら..なんて思いついた作品です。

処女作品ですので、誤字脱字、意味わからない文章などもありますでしょうが、ご了承ください。

昔々、海底にある人魚の国の王様には、六人の娘たちがおりました。


六人の娘たちの内、一番年下のその娘は、姉妹の中でもたいそう美しい人魚姫でした。 



人魚の掟で、普段海の上へ行くことは許されません。人魚姫はずっと海の上の世界にあこがれていました。



ある日、姫は十五歳の誕生日に海面まで昇って行くことを許され、生まれて初めて出た海の上で、生まれて初めて、船の上に立つ人間を見ました。


豪奢な着物を身に纏い、乾いた髪の毛が風に揺れ、月明かりに照らされて立つ様の美しい、その人間は近隣の国の王子でした。




人魚姫は、ひと目でその人間に恋をしました。



しかし、王子を眺めていると突然に嵐が襲ってきます。

人魚姫は、嵐に遭い難破した船から王子を救い出して、なんとか陸へと王子を運び、助けました。



それからというもの、人魚姫は寝ても覚めても王子のことが忘れられません。




どうしても、もう一度王子様のもとへ行きたい……



恋焦がれる人魚姫はとうとう海の魔女の家を訪れ、その美しい声と引き換えに、人魚のひれを人間の足に変える飲み薬をもらいます。


薬を人魚姫に握らせて、魔女は言いました。

「もし王子が他の娘と結婚するような事になれば、姫は海の泡となって消えてしまうよ」と。


その上人間の足になれば、一歩歩く度に、足はナイフで抉られるような痛みを感じるようになる事も……。



それでも人魚姫は、あの嵐の日に王子を助けた陸へ行きました。

そして言われていた通りの足の痛みに動けなくなっているところを、たまたま通りかかった王子に助けられたのです。




王子と一緒にお城で暮らせるようになった人魚姫でしたが、声を失った人魚姫は王子を救ったあの夜の事を話す事ができず、王子は人魚姫が命の恩人であるという事に気が付きません。


誰からも語られることのない真実は時とともに摩り替わり、王子は偶然浜を通りかかった娘が命の恩人と勘違いしてしまいます。



やがて王子はその娘との結婚が決まり、悲嘆に暮れる人魚姫でしたが、自分の喉からは真実を伝えるための声は出ません。


夜ごと枕を涙で濡らす人魚姫を見かねた姫の姉たちは、髪と引き換えに海の魔女に短剣を貰い、それを人魚姫に差し出して、王子の流した血で人魚の姿に戻れる事を伝えます。



受け取った短剣を手に王子の枕元へと向かいますが、その愛しい寝顔を見れば、人魚姫はその胸に剣を突き立てることはとうとう出来ませんでした。




どうしても、愛する王子様を殺す事などできない……



人魚姫は死を選び、海に身を投げて水泡と姿を変え、その魂は天へと昇ってゆきました。




穏やかな波に体を洗われていくのを感じながら、けれど人魚姫の心は、とても満ち足りていました。


人魚姫は、この世で本当に誰かを愛することを知ったのです。


お終い



ーーーーーーーーーーーーーーー




「……なあに?この話は!」

パタン、と乱暴に本を閉じた少女が言った。



普通なら、人魚姫の話を聞いたらしんみりと感傷に浸るところだろう。


けれど彼女は違った。



彼女――マリス・マージャリー15歳は、人魚姫を読んで怒っていたのだ。



その怒りをなだめるように、傍にゆらゆらと漂う、美しい魚が静かに言った。


「人間の国のおとぎ話です、気にすることなどございませんよ」


「それにしたって、こんなのは酷いわ。魔女がまるで悪者じゃない」


マリスは切なく嘆いた。



「魔女が良い人物であるお話も、先ほど読まれていたではございませんか」


「シンデレラ?あれはだめよ、きっとあの魔女は作り話だもの……魔女は見返りもないのに、なにかをしてあげるような優しい種族じゃないわよ」



マリスは自分の言っていることが矛盾している事は解っていたけれど、実際にそうなのだから仕方がない。



どうして解るのか。


それは、彼女がこの海の姫君だからだった。


姫君といっても、人魚のではなく、海底の魔法使いたちの都の姫だ。




「確かにマリス様の言う通りです。ですがそれは人間の書いた物語であって、人間などが書いたものを気にすることはございません。マリス様は、気高き魔女なのですから」


美しい魚は、本のある場所――つまり、魔法の力による空気があり、地上と同じ状態の場所――に入り、その姿を鱗の輝く魚から、見目麗しい青年へと変えた。



「……ミルズ、あなたが人間を憎んでいるのは知っているけれど……その言い方はないでしょう……あなただって」


ミルズと呼ばれた青年は、マリスが何かを言おうとした瞬間、それを制するように言った。


「マリス様……」



「……ごめんなさい。でも、あの話はまったくの作り話ではないのよ」


「どういうことでしょう?」




「昔、おばあさまから聞いたことがあるのよ。おばあさまのおばあさまの、そのまたおばあさまが、昔取引した人魚の姫のことを」


あれ以来、人魚の国と魔法使いの国はさらに敵対し合うようになった事を教えられたことがあるのだった。



けれどだからといって、人魚の国がこの国に攻め込んでくることはない。


人魚たちは元々、争いを好まないのだ。



魔法使いは魔法使いたちで、そんな昔のことなどどうでも良い。それが魔族なのだから。


ましてや、同じ種族が作り出した原因を気に病むものなど誰一人としていない。



それに、おとぎ話に出てきた魔女は正当な取引をしただけだ。


恨まれる筋合いなどない。そんなのはお門違いというものだ。




魔女や魔法使いは、取引や契約を絶対に破らない。


破ったらどうなるか、解っているから。

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