第五部「突撃!花園の世界へ」
命視点。第三部の続きです。
目を開くと、そこにはあの花園が広がっていた。
また、やってきたんだ。
そうだ、千鶴を探さないと。
「千鶴、どこにいるの? いたら返事して! 千鶴っ!」
「アラアラ、随分と元気なお客さんネ。ま、こっちとしては『招かれざる』が頭に付くのだケド」
声に振り向くと、なんか化粧の濃い、長身の男の人が近づいてきていた。
「招かれざる?それってどういう…………? それよりっ、髪が長くて私よりも少し背が低いくらいの、天使みたいな女の子見なかった? 私その子を探してて、でもずっと意識が無くて、だけど」
「まあまあ落ち着いて。アナタは『エイチャー』なんだから、まずそれの説明をしないとちっとも話が進まないワ」
「…………私のことを知っているみたいだけど、一体……………………?」
「アァ〜ン、そうだったわね。自己紹介は大事よネ」
オネェ口調で、全身ギラギラの服に身を包んだその人は、ひと呼吸して再び口を開いた。
「アタシはエンマ。この世界『パラヘヴン』の現状的な統治者にして霊魂達の監視人。そしてクリートシードリング・エナジーザイの製作者。あと、たまにここに迷い込んだ人の相手もしてるのヨ?」
「ぱらへゔん?」
「そ。現世の人達が言う天国や地獄と同じような場所ヨ。アタシはココで死んだ人達の霊魂と向き合って、本当の意味での天国へ行ってもらうか地獄に行ってもらうか決めるノ」
「私が、その『エイチャー』っていうのは?」
「あぁ、それね。どういうワケだか知らないけど、アナタは変身したのよ。まあ心当たりはあるケド。見たことはなくても知ってはいるでしょ?バイクに乗った仮面のヒーロー、あれをモチーフにしてるのよ。アタシはね、自分で創ったその戦士のことをそう呼んでるノ。それで、なんでそれを創ったかっていうと……………………アラ?」
エンマの視線の先に目をやると、いつの間に集まったのか、そこには前にいた数をはるかに上回る怪物たちがいた。
「ハーイハイ。アンタたちは現世に行っちゃダメよ。これ以上暴れたら確実に地獄行きなんだかラ」
「ウゥゥゥ…………グオアァァァァ!」
「なんか、全然聞いてないみたいだけど」
「しょうがないわね。やっちゃってちょうだい、植薙命」
「なんで私が?」
「アタシ一人で彼らの相手をするのが面倒になってきたから、ソレを創ったのよ?」
「そのためにこれを………………」
「そうよ。彼らはザッソウスピリンテント。悪霊がアタシの許可無しに無理やり具現化しようとした結果、自我を失くした、いわば成れの果てヨ。倒しても霊魂に戻るだけだから、遠慮はいらないわ。思いっきりやっておしまい!」
「私としては、早く千鶴を探したいんだけどね!」
手に持っていたタンポポクリートシードリングに戦う意思を込めると、生えてきたツルからベルトとホルダーが形成される。
クリートシードリングを体の前で構えて、チェンジエナジーザイと一緒にバックルに装填する。
“チェィンジ・エナジー!”
“愛の、神託! ダンダンダン・ダダン・ダン! ダン・デ・ライオォォォォォン‼︎ ダンダンダン・ダダン・ダン! ダン・デ・ライオォォォォォン‼︎”
まだ聞きなれない待機音声が鳴り響く。ゆっくりと両腕を体の右前方で右腕が上になるように交差させて、素早く上下の腕を入れ替える。
そして、バックルをスライドさせる。
これが、私なりの変身ポーズ。
「変身!」
“タンポポ・ラァァァンド!”
ツタが全身を包み込み、爆散する。
ひと呼吸して、私は敵陣に飛び込んだ。
向かってくる怪人にひと蹴り、ひと殴り。
一つ一つの個体はそれほど強くはないため、ある程度無茶な戦い方ができた。
けど、さすがに今回は敵が多過ぎた。
際限なくやってくるやつに一撃ずつ打ち込んでいくと、徐々に体力を消耗し、隙が大きくなる。
そのうち押し寄せる怪人の波に対応しきれなくなって、完全に動きを封じられてしまった。
さらに、波の隙間からさっきの妙に礼儀正しいハエトリソウ怪人までこっちへ駆けてきた。
まずい。雑魚ならまだしも、進化体?まで来たら……………………。
どんどん距離を詰めてくる。
このままじゃ、やられるっ……………………!
どうも、壊れ始めたラジオです。
試験三昧のせいとはいえ、更新ペースが安定しなくてすみません。
がんばります。
また次のお話でみなさんにお会いできるのを楽しみにしております。
それでは。