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燃焼少女  作者: まないた
焼失する少女
6/52

006

 

 やっと話が出来ると思ったのが、いくら待っていても手首を落とされた男の叫びは止む事が無かった。

 

 思わぬ邪魔が残り、私は段々機嫌が悪くなってくる。

 男達へ「なんとかしろ」という視線を向けるが、男達はオロオロするだけで動き出せない。そんな事も苛々の原因だ。

 

 私は仕方が無いと諦め、男を黙らす事にした。

 

「アナタ達は、ちょっとここで待っていなさい」

「え?」

「ああぁぁあ! や、やめ、来るな!? あぁぁあああ! 助けっ」

 

 私は男達へ待機を命じ、やかましい男の服の襟を掴んで建物の外へと引き摺り出す。

 静止を求めるように動き出そうとした男もいたが、先程時間を与えて動かなかったので、もう時間切れ。

 冷たい視線を向けてその行動を抑え、そのまま引き摺って外へと出て行った。

 

 無事に二人っきりで外に出た私は、うるさく叫び続ける男へ顔を近づけ、最終警告をする。

 

「黙らないと、黙らすわよ?」

「ひぎぃ? やめ、やめてくれ! 助けてくれえぇぇええ!!」

 

 だけど残念な事に、男は叫ぶ事をやめてくれない。

 私は冷徹に考え、男を黙らす事にした。

 

「はぁ、本当はこれ以上人数を減らしたくはないのだけれど」

 

 不本意ではあったが、男の襟から首へ持ち替え力いっぱい握る。すると何かが折れた感触が手に伝わり、静かになった。

 先程までの苛々が少し収まってきたのを感じつつ、損失だけで終らせたくなかったので、検証に使おうと男の手を取った。

 

 そのまま口をつけて、一口、二口と食べ始めると、嫌な臭いが鼻を突いてきた。

 

 やっぱり不味い。

 しかし死亡直後に食べれば、思ったとおり死体になる前の三割程度の力を吸収出来るようだ。加えて読み取れる記憶も、死後経過時間に依存している様子で、三ヶ月程度の記憶を読み取ることが出来た。

 さらにわかった事として、能力や記憶の吸収に必要な量は、恐らく口いっぱいに含んだ量を一口とすると、大体五口で継承が出来るようだ。

 

 本当はもうしばらく検証を続けたかったが、男達を待たせたままなので、持った肉を捨てて踵を返す。

 男の血で塗れた口元を拭きつつ部屋に戻ってみると、残った男達は青い顔をして隅に固まって待っていたので、早速話し合いを始めようと口を開く。

 

「待たせたわね。それでどこまで話したかしら」

 

 返事は返ってこない。

 それになぜか、私の口元を注視している様子で、言葉が聞こえていないようだ。

 ……拭ききれてなかったのかしら。ちょっと恥ずかしい。

 

「聞いているのかしら?」

 

 口を念入りに拭いながら再度男達へ問いかけるが、それでも返事は無い。

 話が進ま無いので、軽口を叩いていた男の一人へ視線を固定し続けると、焦った様子でやっと言葉が返ってきた。

 

「は、はい! 嬢ちゃんは冗談を言っていました!」

「……ふふっ」

 

 面白い事を言うので、とりあえず笑顔で男を見つめてみた。

 そして一歩近づいてみる。

 すると男は何かに気が付いた表情を一瞬見せ、少し泣きそうな顔をして、より焦った声で弁解を始める。

 

「ちがっ、間違えました! 冗談なのは俺でした! ……確か壁とか、化物とか?」

「そう、私は壁の外に出たいのよ。だからアナタたちも協力しなさい」

 

 冗談男の言葉に肯定して命令口調で告げてみるが、男達は顔を見合わせるだけで、反応が芳しくない。

 そんな様子に、確かに言葉が少なかったと考えが至り、なるべくわかり易い単語を使って説明しようと改める。

 

「ここには食料がないし、汚いし、定期的に危険な存在がやってくるのよ。アナタ達も美味しい食事をお腹一杯食べられたり、怪我や死んだりする心配もなく、安心して暮らしたいでしょう? 外に出られればそれが叶うのよ」

 

 言葉を重ねて噛み砕いたつもりでも、男達へは伝わっていないのか、今度は訝しげな視線を向けられるだけで返事が返ってこない。

 

 ふむ、どうにも私には、人へわかりやすい説明をする。と言う事が、上手く無いようだ。

 わかっていないのか、それとも信じられないのかはわからないが、これ以上丁寧な説明は私には難しいので、説得の方法を変える事にした。

 

「……分かった。聞き方を変えるわ。私は壁の外に出る仲間が欲しい。アナタ達も手伝ってくれないかしら? それとも――」

 

 私としては、出来れば自分達の意思で付いて来てくれる事を期待していたが、私の説明力や男達の状況認識不足からは難しそうであった。

 その為、あまり気は進まないものの、今のこの場の力関係なら可能である、恐怖によって付いてきて貰う事にする。

 

「――私の敵になる?」

 

 理想的とは言えない勧誘方法であったが、仕方が無い。ここで躓いている時間は無いのだ。

 後は男達が頷いてくれるのを待つのだが、冷や汗を流しつつも反応が無い。

 

 とにかく反応が無いのは困るので、男達へ時間制限がある事を理解して貰おうと、視線の温度を下げて、男達へ向かってゆっくりと歩みを進めていく。

 

「……判断はなるべく早くお願いね」

 

 二歩、三歩と進むがまだ反応は無い。

 恐らくあと五歩程で到着してしまうのだが、それまでに返事が無かったらどうしようか。と悩みながらも、もう一歩踏み出したとき、やっと男達の親玉から声が掛かった。

 

「わ、わかった。外へ出るのに俺達も協力しよう」

「良かった、嬉しいわ」

 

 素直に嬉しかったので笑顔で返したのだが、なぜか男からは視線を逸らされた。

 ……とりあえず協力は取り付けられたので、これからの動きを説明しようと、少し離れて腰を下ろし、男達を見渡しながら口を開く。

 

「さて、早速で悪いけども、現状では人数が全然足りないわ。だからアナタ達は仲間を探してきなさい。男でも女でも、人間でも亜人でも構わないから、見つけ次第仲間に引き入れなさい」

 

 それで、と続けながらリーダー格の男に目線を移す。

 

「アナタがここの人達を纏めているのよね、名前は?」

「ゲロルドだ」

「よしゲロルド、今から三人一組で探しに行きなさい。人を見つけ次第ここまで連れて来てくれれば、後は私がやるわ」

「分かった、ボコって引き摺って連れてくりゃいいんだな」

 

 ゲロルドの言葉を肯定しかけるが、その前に少し考える。

 もしこのゲロルド達が、より強い人物と遭遇してしまった場合、果たして彼らは戻ってこられるのか。恐らく怪我をしたり、最悪の場合は全滅してしまったりする可能性もあるだろう。それは良くない。

 結論として、人数を増やそうとして減らしては意味が無い為、極力リスクが少ない方法を取るように伝える。

 

「いや、ダメね。無駄なリスクになるから襲わなくていいわ。その代わり、……そうね。私とそっちの子を捕まえた事にして、好きな事が出来ると言って連れてきなさい」

「えっ? もしかしてお嬢とヤれるのか!?」

 

 嬉しそうに聞き返してくるゲロルドの様子に、私からも一瞬ニッコリと笑顔を向け、すぐに表情を消す。

 

「……アナタを殺るわよ? ここに獲物を連れてきさえすれば、後は私が説得すると言っているのよ」

「すっ、すまん!」

 

 ゲロルドはすぐに頭を下げ、冷や汗をかきながら謝罪してきた。

 そしてこれ以上この場にいるのは良くないと本能的に察したのか、すぐに仲間の組み分けを行うと、足早に探索へ出て行った。

 

「さて」

 

 男達への指示を終えた私は、残っていた女へと目を向ける。すると女の方もこちらを見ていたのか、目があった途端にビクっと体を震わせていた。

 

「アナタは? えぇっと」

「あっ! あぁ、あ……」

 

 女は助けを求める様に周りを見渡すが……残念。ここにはもう、私とアナタしかいない。

 そこで女は、やっと独り取り残された事を理解したみたいで、さらに震え上がっていた。

 

「もう、アナタには別に何もしていないじゃないの……はぁ、名前。なんていうの?」

「あ、え、マリー、です」

「マリーね、私はエリスよ。よろしく」

 

 自己紹介を改めて終えた私はマリーへと近寄り、落とした布切れを拾うと、マリーを座らせて包み込むように覆った。抱きしめた状態だと、小刻みな震えが伝わってくるのがわかる。私はそのままの体勢で動かず、そのままマリーを抱きしめる様にして耳元で囁いた。

 

「大丈夫よ安心して。何も私はアナタ達を殺そうだとか、使い潰してやろうだとかは考えていないわ」

「は、はい」

 

 よしよし、と背中を擦ってやると、女は落ち着いてきたのか、震えが徐々に収まってきた。

 私はタイミングを計りつつ、マリーの耳元で続ける。

 

「私ね、ここに来て生きている女の人を見るの、マリーが初めてなの」

「そ、そうなのですか?」

「だから、ね? 男の人達には言えないけど、マリーには言うわ。……本当は私、怖いの」

「えっ?」

 

 私がそう告げると、マリーは驚いた表情で顔を上げて見つめてきた。私は逸る気持ちを抑えつつ、不安気な表情を丁寧に作る努力をして、そのまま続ける。

 

「力はあっても私は子供。男の人に睨まれれば怖いし、さっきだって怒鳴られたりして本当は逃げ出したかったの。けど誰かに頼ろうと思っても回りは男の人だらけで、怖いけど生きていく為、必死に特訓を頑張ったわ。……だけど、やっぱり誰かに頼りたかったし、助けて貰いたかったの」

 

 ……演技のつもりなのだが、最初の言葉を紡いだ後はするすると自然に出てきた。

 無視出来ない感情も湧き出てきたのだが、ここで説得に失敗する訳にもいかない。

 私は意図的に自分の感情から意識を逸らしていると、無意識だが私の眼に、魔力が集中していた事に気が付いた。

 

 これは、魔法? お父さんの知識には無かったけど、何かの魔法が発動したのかもしれない。

 その証拠に、視線の先のマリーは、様子が激変していた。

 

 ボロボロと涙を零しつつ、マリーがぎゅっと抱きついてきたのだ。

 もっと時間と言葉をかけて引き込む予定だった私は、逆に戸惑って声をあげる。

 

「エリスさんっ! 辛かったのですね。わかりました、私に頼ってください!」

「えっ? あ、うん……」

 

 よくわからないが、説得は上手くいったらしい。

 私の考えていた流れを全部飛ばして目的を達成してしまったので、結果には不満の無いものの、腑に落ちない。

 

 しかし、このまま考え込んでいても仕方が無いし、この良い流れのままマリーへはあるお願いを聞いてもらわなければならない。私は沸いた疑問について一旦は棚上げする事にした。

 

「ねぇマリー、さっそく頼りたいのだけど、良いかしら?」

「はい!」

「ありがとう。お願いは二つあって、一つ目は男達の監視をお願いしたいの」

「監視、ですか?」

「えぇ、私は仲間を信用したいのだけれど、それでも裏切ったり、逃げ出したりする人はいると思うの。だからマリーは拠点に待機して貰っていて、さり気無くそんな気配が無いか見ていて欲しいわ」

「それ位なら誰がやっても良いのでは……」

「いいえ、信用出来るマリーだから任せたいの」

「ッ!? エリスさん……」

 

 私から見て、マリーは私の言葉で本気で喜んでいる。

 

 なんというか、扱い易すぎる。

 やっぱりあの眼の魔力で、私が何かしたのだろうか。

 マリーからは、私を絶対に守るという強い決意を感じる。普通、これだけのやり取りでここまでなるのだろうか。

 

「それで、もう一つのお願いは何ですか?」

「あ、そうだったわね」

 

 のめりこみそうになった思考を、マリーの声によって戻される。

 目的を思い出した私は、マリーに向けられる感情に戸惑いを感じつつも、もう一つのお願いを話した。

 

「それで、もう一つのお願いわね――」

 

 私はマリーへお願いをしながら、立てた計画に抜けが無いか思い返す。

 

 私の当面の目的は、壁の外へ出る事。そして最終目的は、この国を潰すこと。

 今の戦力では最終目的はおろか、壁から出る事も叶いそうもない為、まずは戦力を集める必要がある。

 

 しかし人が集まれば、当然そこで何かしら問題が発生する事が考えられる。そこで誰かしら監視役や参謀が欲しかった。

 だけど私はお父さんの記憶を見て、さらにお父さんの妻子の最期を見た後では、男に対してあまり良い感情……いや、触れられる事すら嫌だと考えるようになった。

 

 そうは言ってもこの区画では、女がまともに生きることは難しいと思う。私はあの塊によって知識と戦う力を手に入れたので別だが、普通に考えて男よりも腕力などの力が劣る女では、見つかれば食い物にされる事が予想に難しくない。

 そういった予想の元、同性の味方は半ば諦めていたのだが、この拠点で彼女を見つけられたのは僥倖だった。

 さらにマリーは、男達の中に入って食い物にされるわけでなく、自分の地位を確立している様に感じた。恐らくゲロルドへ体を晒す代わりに得た地位だとは思われるが、しっかりと生きる為の損得勘定が出来ており、思考や判断にも期待が出来る。つまり私は、マリーは使える人材だと感じていたのだ。

 

 こうして無事、マリーを心から引き込む事が出来たので、ここまでは順調と言える。後はお父さんの記憶で得た情報から数日後に備えつつ、仲間を増やしていれば、関所に対しての戦力差は覆せる。よし、見落としは無さそうだ。

 

 そうこう考えている間に、マリーへもう一つのお願いも了承が貰えたので、私はマリーへ背中を預ける様に姿勢を変えて、目を閉じて計画をシミュレートしつつ、男達が戻ってくるのを待った。

 

 

 

 

 

「おう、こっちだこっち」

 

 私はその後少し眠っていたらしい。

 強化していない聴覚で、建物の外から聞こえてきた音により目を覚ました私は、目を擦りつつ現状を確認する。

 

「ふぁ……うん?」

 

 何やら背中が温かく感じたので、顔を上げて見てみると、微笑んでるマリーの顔があった。

 

「目が覚めましたか?」

「あ、えぇ。おはようマリー」

 

 こんな事は初めてだった。いや、朧気ながらそういった経験があったと感じたが、記憶には無いので初めてなのだろう。

 いつもは冷たい地面や壁を背にして、浅い睡眠を取るだけだった私は、何となく心が温かくなる様な感じがして気恥ずかしくなり、すぐにマリーから視線を外して起き上がる。

 

 そのまま伸びをしつつ眠気を飛ばし、部屋の入り口を見る。

 

「ゲロルド達が戻ってきたわ。アナタは私の後ろにいなさい」

「はい」

 

 マリーを後ろに控えさせ待っていると、私の耳で八人分の足音を感じた。

 男達はこのまま逃げるのではないかと多少の心配があったのだが、しっかりと働いてくれた事に安堵した。

 

 そのまま少しすると、ゲロルドを先頭にして、八人の男達が姿を見せる。

 先頭はゲロルドで、一緒に出て行った残り二人は一番後ろに付いている様だった。逃がさない為だろうか、男達にも多少の思考能力があった事に嬉しい誤算を感じつつ、新顔の五人へ関心を移す。

 

 五人ともゲロルド達と同様に、二十代前半から後半くらいの年齢の様だ。内三人は特に特筆する事のない人間で、残り二人は犬、鳥の獣人だった。

 私が見ているのと同じように、五人の男達の視線も私へと集中しており、その視線はやはり粘っこく、気持ち悪く感じる。男達の視線や表情で、寝起きで感じていた暖かな気持ちは消え去り、何だか不快感が込み上げてきた。

 なんとなくその気持ちをゲロルドへと視線でぶつけると、「何で!?」という顔をしつつ、近くに寄って小さな声で話しかけてきた。

 

「お、お嬢? 連れて来たが、その、どうかしたのか?」

「別に。それで彼らは?」

「始めに二人組みで歩いているのを見つけた。戻ってくる間にも一人、二人といたから、纏めて連れて来たぞ」

「そう、ありがとう。よくやったわ」

 

 完全な八つ当たりだと自覚していたので、話の途中で表情を引っ込め、代わりに働いたゲロルドへ笑みを向けてやって、怒っていない事をアピールする。

 すると私の笑顔を見た男達が何かを勘違いしたのか、口を挟んできた。

 

「綺麗な顔をしているなぁ、楽しませて貰うぜ」

「なんだぁ? 女の方も捕まってたって聞いてた割には、その気なのか?」

 

 犬と鳥の獣人だった。他の男達も言葉にはしなかったが、その下卑た視線から考えている事は同じだろう。せっかくゲロルドの働きで持ち直した気分も台無しだった。

 私はもう、表情を作る労力も無駄だと感じ、男達に向き直ると形だけ歓迎をした。

 

「ようこそ。早速だけどアナタ達も私の仲間になって貰うわ」

 

 当然そんな話を聞いていない男達は、困惑する。

 

「は? お前なにいって……」

「はぁ、そういうのもう、お腹一杯だから」

 

 私はうんざりした気分のまま、魔力を使う事無く力加減もかなり抑えて、男達へ向かって駆ける。

 まず、後ろにいた三人の人間の所まで一足飛びで近づくと、腹部へ掌底を打ち付ける。力加減は上手くいったのか、男の腹部を突き破る事無く出来たので、同じ要領で両隣にいた二人の男にも食らわせる。

 

 人間の男達は三人とも腹を抑えて蹲り、何か汚いものを吐きだしている。そこで獣人の二人も後ろで起こった出来事に気が付き振り返るが、遅い。

 

 鳥の獣人の方へ人間の男達同様に掌底を食らわせ、すぐに犬の獣人の側面に移動する。

 

「かはっ」

「なっ? どこ行――」

「――こっちよ」

 

 最後に犬の獣人の首を掴み、ゆっくりと力を加えていく。少しの間バタついていたが、すぐに動かなくなったので手を離す。胸部が上下している為、死んではいないだろう。

 

「さて、静かになった事だし今後の説明をするわね。アナタ達も私達と一緒に壁の外を目指して貰うわ。その為に今は仲間を集めているから、アナタ達もそれに加わって仲間を見つけてきなさい。何か質問はあるかしら?」

 

 男達は話どころの様子では無かったが、私は構わず説明をする。

 そんな私の様子に、人間の男達は胃の中のものを吐き出しつつ、怯えた表情をしていたが、鳥の獣人だけはタフなのか、腹を抑えながらも立ち上がり、恨みの篭った目で私を睨みがら、叫ぶようにして言い放ってきた。

 

「おい! 俺にこんな事をしてただじゃ済まさないぞ! 俺の所は二十人いるんだ、お前をみんなで犯してながら刻んでやるよ! ははっ、今更許しを請うても許さないからな! ガタガタ震えて覚悟していろ!」

 

 ふふっ

 私は結構、運が良いらしい。

 探しに行かなくともかなりの人数が手に入ると、男は叫んで教えてくれた。

 ふふっ、自然に口角が上がってしまうのが抑えられない。

 

「ふふっ、うふふふふっ。良いわ。じゃあアナタ、そこまで案内しなさい?」

「は?」

 

 実際に二十人もいてくれたら嬉しいが、どうなのだろうか。

 これで十人以下って事は無いと思うので、行ってみる価値はあるだろう。

 

「よし、それじゃ私は少し出てくるから、ゲロルドは付いて来なさい。それと残ったアナタ達はここで見張りと、もう一人はまだ出払ってる三人を連れて帰りなさい。その時に誰か連れてきていても、私がいない間はここに入れないように。いいわね? あと私がいないからって、マリーに変な事をしない様にね」

「あぁ、わかった」

 

 鳥の獣人は、私が何を言っているのかわかっていないのか、間の抜けた顔をして固まっている。

 逆にゲロルドには予想出来ていたのか、哀れむ様な視線を鳥の獣人に向けつつ、すぐに了承の意を返すと、鳥の獣人の背を押して部屋から出そうとする。

 私も続くべく、一度マリーへ笑顔で手を振ってから、ゲロルド達を追いかける。

 

「ふふっ。これで十人以上増えると嬉しいわね」

 

 自然に独り言が零しながらゲロルドと鳥男に追いついた私は、そのまま取り男の言う仲間がいる所へと向かっていった。

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