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燃焼少女  作者: まないた
焼失する少女
10/52

010

 

「……来た様ね」

 

 それから四日間経過し、ついに作戦の当日を迎えた私達は、化物の不在を確認される前に、冒険者達と接触を図る為関所を見張っていた。

 ここまで同行をしてきたゲロルドとマリーへ、最終確認をする。

 

「私には常に見張りを一人以上つけておく事、私が合図したらアナタ達が夫婦を装って私に接触すこと。そこで受け取った指示はカール達にも共有して、しっかりと計画通り動くこと。良いわね?」

「大丈夫だ、何回も言われたからさすがに一字一句覚えたぞ」

「完璧です」

 

 私はは二人の反応に満足し、冒険者一行に接触する為、単独行動に移り観察を始めた。

 

 関所を監視していると、区画には合計七人が入ってきたことを確認した。男が四人で女が三人。内六人が人間で、女の中の一人だけが他種族のようであった。

 

 多種族の彼女の身体的特徴を見ていく。

 長い耳からお父さんの記憶で確認すると、恐らく森人だろう。

 

 次の問題として、入ってきた人達の中で観察員が何人いるか、だ。

 お父さんの記憶やカールの反応から、恐らく私が何か動こうとすれば観察員は障害となってしまうだろう。

 その前に分断して、カールに捕縛して貰わなければならないので、まずは観察員の見極をしなければならない。

 

 七人いる中でグループは三つに分かれており、それぞれの配置を見ると森人が一人、男女が二人ずつで一グループ、最後に残った男二人で一グループ。

 これまでから、恐らく観察員が単体で入ってきているとは考えにくい為、森人少女を除いた二グループの内どちらかであろうと当たりをつける。

 

 私の中で大体の予測が立ったので、今度は聴覚を魔力で強化し、会話を拾うことに専念した。

 

「今回の調査は金が良いし、帰ったらいい装備が買えそうだな!」 

「だけどこの依頼、何かやばそうじゃないかな? 何度も依頼出ているみたいだけど、誰一人帰ってきてないらしいよ」 

「臆病ね、たかが調査じゃない。何も化物と戦えって言われているわけじゃないのよ?」

「わかってるよ、気をつけたほうがいいんじゃないかって注意しているだけだよ」

 

 主に四人グループの男女が会話しているだけで、他三人は口を開く様子がない。

 恐らく今の会話からいって、こちらが冒険者のグループであろう。となると残った二人の男が観察員か。

 

 大まかな目星が付いたので、早速接触する為に行動を始める。

 調査経路についても、恐らく前回のお父さん達と同じろう。ゲロルドとマリーには先に合流地点を伝えておき、私は単身行動で目的地へと向かった。

 

 

 先回りして到着し、しばらく待機していると、七人が予想通りの道筋で近づいてきた事を確認する。

 見つけて貰えるタイミングを見計らい、偶然を装って建物から姿を見せた。

 

「あれ? 人がいるよ」 

「ホントだ、子供かな?」 

「声を掛けてみるか、おーい!」 

「ッ!?」

 

 私は身体を震わせ、素早く建物の影へ隠れる。そして顔だけ出して覗いている様な姿勢をとった。

 

「大丈夫よ、こわくない、こわくなーい」

 

 案の定四人グループの中で、柔和そうな表情をした二十代前後の女性から声を掛けてきてくれたので、「興味あります!」といった表情を作って、そのまま覗き込む。

 

 先程より距離が近づいた為、七人の人達を観察できた。

 声を掛けてきた女性はローブを纏っており、恐らくお父さんと同じように魔法が使えるのだろう。その後ろの方にいる少女、こちらは十五歳前後だと思われるが、その子もまたローブを纏っていた。赤みがかった橙に近い髪が目を隠しており、オドオドとした印象を受ける。その後ろから二人の戦士風の男も見える。その二人は歳が離れている様で、細くてヒョロっとしているのが二十歳よりも前に見え、もう一人は三十台半ばくらいで、かなりの筋肉質であった。

 

 私はある程度の特徴から人物像を想定し、ゆっくりと柔和そうな女性へ向かって近づく。

 すると女性はすぐに私との距離を詰め、抱きついてきた。

 

「可愛いわ! 私はアリーセって言うの。あなたのお名前は何かな?」

「……エリス」

「エリスちゃんね! ふふっ、ほら皆もこっちへー!」

 

 アリーセと名乗った女性に抱えられたまま、他の人達へ目を向けてみる。

 

「アリーセ、その子をどうする気だ? まさか連れて行くわけじゃないよな」

「……青、かな」

「とりあえず、ここの状況を聞いてみようよ」

 

 三人とも私に対して、いきなり悪い印象を与えてはいない様だ。一人じっと見つめつつ色を言われたが、何なのだろうか?

 気を取り直してそのまま目線を後ろの方へずらしていくと、二人組の男は私を見て面倒そうな表情になり、森人少女はなぜか驚いた表情を見せていた。

 

 やはり男達は観察員なのだろう。

 私を見た反応からして恐らくここの実情を知っており、あまり他の冒険者と接触させたく無いのだろう。

 

 しかし森人少女の反応が解せない。

 今はもう驚いている表情は消えているが、あれは何か失くしたものを見つけた様な表情であった。

 

 私がそう考えながら見ていると、森人少女も見られ続けている事に気が付いたみたいで、にへらっと笑顔を見せつつ私に話しかけてきた。

 

「どもっすー! いやぁこんな所で会うなんて奇遇っすね!」

 

 森人少女が口を開くと、おおよそこの少女に風貌に似つかわしくない、軽すぎる言動が飛び出してきた。

 先に近寄って来ていた四人の男女のグループも、ここまで来るのに会話が無かったのか、森人少女の今の言動に目を丸くしていた。

 

 しかし、私はそれ所では無い。

 まるで私を知っている旧知の仲であるかの様な振る舞いに、何故か頭を大きく殴られた様な衝撃を受けていた。

 

「アナタは……だれ?」

「久々ってのに、それは無いっすよ。……ふーん。やっぱり記憶無しっすか。となると多分、あの時に……」

「えっ?」

 

 この人は今、なんて……?

 心音が早くなるのを感じ、冷や汗が出てくる。

 何か言わなければと思うのだが、口が渇いてしまって声が出なかった。

 

「なになに? アナタ達知り合いだったの?」

「や、自分の勘違いっすね。さーせん、気にしないで欲しいっす」

 

 アリーセが横から会話に入って確認すると、軽い調子に戻して勘違いだと返した。

 その事に私はなぜか安堵を覚え、取り戻した僅かな余裕で思考を再起動させる。既に冒険者達との接触をしてしまっている為、ここからは考えて行動しなければならない。

 

「あの、おねえちゃん達は……?」

「あぁそうだったわね。じゃ、まず自己紹介するわ。私は魔術師のアリーセで、こっちは今回臨時で入ってもらっている後方支援役のエルナ。そっちの戦士がバシリーで、いかついのが戦士のヴォルグよ。パーティ名は深海の剣、エルナは臨時だから別だけど、他の全員は水属性の魔術適正があるわ」

 

 次々とメンバーが紹介され、私と一言ずつ挨拶を交わしていく。パーティメンバーの紹介が終ると、アリーセは森人少女へ目を向ける。

 視線を受けた少女も楽しそうな足取りで、笑顔をたたえながら近寄ってきた。

 

「ゼクスっす! 改めてよろしくっす」

「よろしく、……えっと」

「……俺たちは必要ない。それよりさっさと調査を始めないか?」

 

 私はゼクスと名乗った少女の先ほどの言動から、なんとかその名前を記憶の中を探してみるのだが、どうしても思い出せない。

 

 ……と、いけない、集中しようと思った矢先にこれでは、後の作戦に支障が出てしまう。

 加えて男達の言葉から、このままではこの人数が纏まったまま調査に行ってしまわれるので、とても困る。せっかく接触できたので、何かしら動かないと。

 

 まずは見た感じから一番与しやすそうなアリーセへ話かけてみようか。

 

「ねね! それでアリーセお姉ちゃん達はここで何をしてたの?」

「ここには怖い化物がいるみたいだから、調査しに来たのよ」

 

 えぇ、知っているわよ。

 そう言いたいのを堪えつつ、私は驚いた表情と声を作る。

 

「へぇー! お姉ちゃん達は強いの? 化物やっつけちゃう?」

「え? えぇそうね、もし弱い化物なら私達が退治してあげるわ!」

「わぁ! すごいね!」

「え? 僕達は調査に来たんじゃ」

「まぁバシリーよ、言わせておいてやれ。アリーセも気分良さそうだし、お嬢ちゃんも楽しそうだ」

「やれやれ……」

 

 やれやれはこちらのセリフだ。

 だがまぁ、ここまでで特に私に対して怪しんでいる雰囲気はなさそうに見えるので、胸中でそっと安堵する。

 そんな中会話に参加しなかったエルナは、なぜか持参していた布と裁縫道具を取り出し、布の形を整えていた。……この人、何なのだろうか?

 

 さて、気を取り直してどうするか考えないと。

 とりあえずこのままこのパーテイに同行させて貰い、観察員の男達と離れるよう分断させよう。

 幾つかの作戦を用意してあるので、機会をみていくつか試してみようか。

 

 そう思っていたのだが……。

 

「っち……」

 

 観察員だと思われる男達は、舌打ちをして私たちから離れていく。

 

 あ、あれ? まだ何もしていないのだが……。

 そう困惑するが、自ら分断させてくれるのであれば願ってもいない。

 考えてみれば、男達が言ったのを完全に無視して和気藹々と盛り上がっているので、面白くなかったのかもしれない。どちらにしても好都合にかわりない。

 

 私は彼らを黙って見送りつつ、すぐに後ろに手を回して、私につけているはずの監視役へとサインを出しておく。

 同時に、アリーセ達まで行かれては困るので、彼女たちが行動を起こす前に話しかけ、こちらへ意識を向かせる。

 

「あれ? おじさん達怒ってるのかな……エリスわるいこ?」

「え? あ、いいえ! エリスちゃんは良い子よ? ……あのおじさん達が短気なだけよ」

 

 そう言ったアリーセは眉を少しばかり顰めており、少し怒っているようだった。

 よしよし、何があったのかは知らないが、あの二人はあまり好かれていないようだ。このアリーセの態度から見て、今すぐ彼らを追いかけることは無いだろう。

 

「うーん、行かせてしまっていいんすかね? 一応三パーティ合同任務だし、一つのパーティだけ先行させるのも不味く無いっすか?」

「仕方ないだろ、合同任務って言っても元々違うパーティなんだ。期日さえ守れば、それぞれのペースで行けば良いだろう」

「それに今日中に終らせられる依頼でもないしね。後から追いつけば良いでしょう」

「そういうもんっすかねぇ……」

 

 ゼクス、余計な事は言わないで欲しい。

 幸いアリーセ以外もわざわざ追いかける気が無かったようで助かったが、もしここで追いかける選択肢を取られれば、パーティに同行するきっかけも掴めていない私は、ここに一人残されてしまうだろう。

 

 そんな私の心配を他所に、やがて先行していった男達の姿が見えなくなる頃には、入れ替わりで二人の男女が姿を見せる。

 良かった。きちんと指示は届いていた様だ。

 

「おや? エリスちゃんじゃない! お友達かしら?」

「マリーさん!」

 

 マリーとゲロルドだ。

 私はすぐにマリーへ飛びつくように抱きつき、耳元で指示を囁くように伝える。

 

「目標は二人の男で、今は中心の方へ移動中。カール達に伝えて即捕縛するしなさい。捕縛ができたら、また呼びにきて」

「わかりました」

 

 指示を終えた私はアリーセ達に向き直り、マリーとゲロルドを紹介する。

 

「こっちがマリーさんで、これがゲロルドさん。一緒に住まわせてもらってるんだよ!」

「どうも。じゃあエリス。俺たちはもう行くから……」

 

 ゲロルドは慣れないのか、ややぎこちない笑顔で挨拶をする。

 そしてそのまま、演技を見抜かれないためにも一秒でも早く戻ろうとするが、踵を返したのを見たバシリーが即座に引き止める。

 

「待ってください! 僕達はここに調査へ来たのですが、化物について何か知りませんか?」

「化物……? 悪いがよくわからないな」

 

 ゲロルドは少しそっけない態度ではあるものの、私から見れば及第点をあげられる演技で切り抜けた。

 まぁ実際、ゲロルド自身がどこまで化物について信じているか不明だったので、素で返したのかも知れないが。

 

「そうですか。いえ、ありがとうございました」

「悪いな、それじゃもう行くわ」

「エリス、暗くならない内に戻ってくるのよ」

「はーい」

 

 そのまま二人を見送ると、アリーセ達の意識が私に向いてきたのがわかる。

 

 雰囲気から察するに、恐らく私と別れて調査へ向かおうとするのだろう。

 だがここで繋がりが途切れるのも勿体無いので、若干順番が前後したような気がしないでもないが、そろそろ関心を受けそうな話題を振る事にした。

 

「ねぇ、怖い化物ってもしかして、葉っぱとかがうじゃうじゃー! ってなってるヤツ?」

「えっ!? エリスちゃん、まさか知っているの?」

「うん!」

「お姉ちゃん達に教えてくれないかな?」

 

 さすが調査対象である化物の情報。とても良い反応が返ってきた。

 しかし、観察員の捕縛等で時間稼ぎが必要なので、すぐにこの情報を教えてあげることは出来ない。もうしばらくは一緒にいて、最低でも明日まではこの五人を区画から出すわけにはいかないのだ。

 

「うん。エリスおはなしするよ! だけどエリス、そろそろお腹すいちゃったの。ご飯食べて来るから、少し後でも良い?」

「そういえばもうそんな時間ね。私達もご飯にするから、エリスちゃんも一緒にどうかな? 皆も良いわよね?」

「確かにもうそんな時間か、いいんじゃないか」

「ありがとう!」

 

 アリーセの嬉しい提案にヴォルグが頷き、無事に昼食を取る事に決まったので、私達は腰を落ち着けようと近場の廃墟へ入った。その中で比較的綺麗な部屋を選んで入り、皆で輪になって座る。

 

 私はアリーセとエルナの間に入ると、そこで腰を下ろした。

 ふとエルナを見てみると未だに一人でごそごそとしていたので、今まで会話に入らず何をしていたのか興味が湧き、声を掛けてみる。

 

「きれいだね!」

「そ、そう?」

 

 私の声にびくっとした反応したエルナは、おずおずといった様子で返事を返してきた。

 そんな彼女の手元にあるのは薄い水色の生地であり、色合いや質感がとても良さそうだった。

 良いなぁ……。

 

「うん、それはなに?」

「え? えっと、服をその、作ってるんだよ」

「へぇー」

 

 その言葉の通り、エルナの周りに糸や鋏など置いてあり、手の甲には針山を巻いていた。

 服かぁ、そういえば私って、結構汚い格好をしているかもしれない。回りの冒険者の格好を見ても、私よりは格段に小奇麗な気がする。

 あんな綺麗な生地の服を着てみたいという思いはあるが、現状ではとても無理だろう。気落ちしそうになるが、いつか壁の外へ出た後のお楽しみとして考えておこう。

 

 ……それにしても前髪で目線が見えないこの少女、最初に抱いた印象から変わる事なくずっとオドオドしている。

 私は自分でも知らない内に、何かしてしまったのだろうか。

 

「ほら、飯を配るぞ」

 

 と、考えていたが、この子は誰に対しても同じみたいだった。

 バシリーが皆に食料を配っており、エルナは小さな声で目線を合わせずお礼を言っている。

 

 その様子を見て何となく安堵感を覚えた私は、興味をエルナから食べものへと移し、早速分けて貰ったものを口にしてみる。

 

「わー、これが冒険者さんたちのたべもの…………かたいね」

「えぇ、ほとんどのものは乾燥させて、日持ちを良くしているから……」

 

 食べたものは固くざらついており、正直に言って思ったよりも美味しくない。

 外の食料というものに興味があったのだが、もう少し食べやすくおいしい食事だと考えていたので、とてもがっかりだった。

 

「あはは……ごめんね?」

「うぅん、ここの葉っぱとか虫とかよりもおいしいよ!」

 

 私の気持ちが表情に出ていたのか、続けて少し困った顔でアリーセから謝られてしまった。

 確かに考えていたのとは違ったが、それでも死体を食べたり、この辺りに落ちているものを食べたりするよりも断然に食べられる。

 その素直な気持ちをアリーセへ伝えてみるが、それを聞いた皆に変な顔をされてしまった。

 

 その中でもバシリーは、一瞬何やら思案顔になったかと思うと、懐を探り袋を取り出し、その中から小さな丸い玉を取って差し出してきた。

 

「その、あれだ。これ舐めてみろよ。甘いぞー?」

「? ありがとう?」

 

 バシリーに貰った玉は薄い赤色が混ざっており、すごく綺麗だった。

 口に入れるのは少し勿体無い気持ちにもなったが、顔をあげるとバシリーだけでなく、アリーセやヴォルグも期待した目で見てきている。

 

 外では有名な食べ物なのだろうか? 手の中で数回転がしながら考えてみるが、どんなものなのかも想像が付かなかったので、思い切って言われた通り口へ含んでみる。

  

「!? んーっ!」

 

 な、なにこれ!? すごく美味しい!

 口の中でゆっくりと溶けていくこの玉は、今まで食べたどんなものよりも甘く、とても美味しい。

 玉が無くなる少しの間、私はとても幸せな気分に頬を緩ませ、この甘い玉を堪能する。

 

「……はぁ、美味しかったぁ」

「だろ? それ結構高いんだぜ。飴玉っていって他にも味があるんだが、俺はその味が一番好きだな」

「エリスも、これ好きぃ」

 

 飴玉の余韻に浸りつつ、私は幸せな気分で自然に返事していた。

 うん、壁の外に出たら絶対にまた食べよう! また楽しみが増えた。

 

 そう決意を固めていると、そろそろ皆の食事も終りそうな事に気が付き、質問をしてみることにした。

 

「おねえちゃんたちは冒険者なんだよね? 何級の冒険者なの?」

「おや、級を知っているのか? お嬢ちゃんは物知りだね、俺たちは全員五級だ」

「五級ってどの位つよいの?」

「そうだなぁ、ベテランになると大体五級くらいだな。その上もあるにはあるが、なれるヤツはほとんどいないな」

 

 ヴォルグが何でもないかの様に説明してくれるが、この情報は私の中では非常に大きい。

 カールが四級冒険者だったので、私自身は大体四級冒険者以上の力はあるだろうと考えていたのだが、その他の等級を持つ冒険者達の実力が目安でもわからなかったからだ。

 

「まぁ四級になら、何かしら秀でたものがあればなれるかもしれないが、三級以上はまず無理だな。あれは化物の領域だ」

「ほぇー。じゃあみんなベテランさんなんだね! すごい!」

「まぁな」

 

 私が褒めると、ヴォルグは少し恥ずかしそうに鼻を鳴らして照れていた。

 

 さてさて、これで欲しい情報は貰えた。

 大体五級から冒険者として一人前と数えられるらしく、それ以上になると規格外の存在という事らしい。お父さんが化物レベルなのは知っていたが、カールもあれでいて、結構強かったようだ。加えて三級以上はほぼいないという事なので、外でも安心して暮らすことが出来そうだ。

 

 そういえば、あの森人少女はどうなのだろう。

 

「ゼクスおねーちゃんは?」

「あ、自分っすか? いやーまだまだっすよ。七級っす」

「中級者くらいの実力って事だね。ちなみに確か、さっきの男たちも七級だったはずだよ」

 

 これはさらに良い事を聞いた。

 バシリーの補足で、恐らく観察員達は自分達の素性を明かさず、冒険者に扮しているのだろう事がわかった。

 さらに七級であれば、四級のカールに任せても大丈夫だろうと少し安心する。

 

 そう考えていると、ふと自分の上から影が落ちてくるのを感じた。

 顔を上げてみると、そこには私を見下ろすゼクスがいた。

 

 肩口まである少しクセの入った金髪、種族特有の長い耳、血色があまり良くないが真っ白な肌の色、顔は少女のあどけなさを残しつつも造詣が整っており、ありていに美しかった。

 そんなゼクスについ見惚れていると、その少女の唇が開かれた。

 

「そろそろ教えてくれないっすかね? 化物について」

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