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第五章 奇跡の裏の真実④

「いやいや。いいんじゃないかな。それで、新しい恋愛の方は?」

今度は、自分が話す番だというように、南は話し始めた。

こういう展開になるとは全く予想の範疇になかったので、質問は自然といくつも頭の中に思いついた。

「それはまだわかりません。複雑な気分です。心音との約束ではあるんですけど、約束を守ることが、同時に心音を裏切ることになるのかなっていうのもあって」

隼人は、本当に悩んでいるという表情を浮かべ、黙り込んだ。


「勝手な言葉かと思うけど、それは裏切りなんかじゃないんじゃないかな。心音ちゃんが、自分以外の女性をこの先絶対好きにならないでくれって言ったのなら裏切りになるかもしれないけど」

南は、かけてやれる精一杯の言葉を口にした。

「確かに」

隼人も心のどこかではそう思っているようだった。

それでも、納得はいっていないという感じだった。

「難しく考えなくてもいいんじゃないかな。それに、そんなに答えを急ぐこともない。君にはまだまだ時間がたっぷりあるんだから」

「はい」

答えを急ぐことはないという言葉に、隼人は少し救われたような気がした。死のうと考えている時は、すぐに答えや結果をだそうとしていた。


死を決意したのは、ものすごく速いスピードで巡るあらゆる思考を停止させたかったのかもしれない。

濃くなる闇がそこまで自分自身を追い込んでいた。

隼人は、無数の左手首の傷を優しくなでた。

 

「じゃあ時間軸のことについて俺からはもう何も話すことはないかな?」

「ええ」

隼人は静かに頷いた。

「けど、そのこと以外に一つだけどうしても聞きたいことがあります」

「何かな?」

南は動揺を抑えるように、エスプレッソを口に含んだ。

すべてを見透かすような隼人の視線から逃れるように、顔をコーヒーカップに近づけながら飲んだ。

「どうして瞳ちゃんに、フレーズが抜けた小説を渡したりしたんですか?」

隼人は質問をストレートに投げかけた。南はその言葉に、一瞬動作を奪われた。

先ほどまでの話とずいぶん違った角度からの質問だったせいだ。



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