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第五章 奇跡の裏の真実②

「小説を書いている南さん自身が出てくる変わった小説だったんで、内容もよく覚えてます」

嘘をつくことが大嫌いな隼人の素直な感想だった。

「インパクト重視の小説やったからな。『夢の中の訪問者』と『ラポール』は。まぁ、出版社もそこを気に入ってくれたけど。理屈ばかりと言われたよ」

南はそう言いながら、恥ずかしそうに頭をかいた。

「今も書かれているんですよね」

「細々と、それだけじゃ食べていけないんだけど」

「今はどんな内容の物を書いてるんですか?」

隼人は興味深そうに聞いた。

「あの二冊に続くというか、関連した内容かな」

南はそれ以上は話さなかった。


「へぇっ、出版されたら絶対買いますよ」

 隼人は、社交辞令ではなく、本心からそう呟いた。

「ありがとう。そう言ってくれるとうれしいな。まだ少し先になるだろうと思うけど、出版したら知らせるよ」

南は運ばれてきたエスプレッソに手を伸ばした。

話題を変えるのには、十分な間があり、隼人は意を決した。


「あの、南さん。自分が聞きたかったことなんですけど、わざわざこんな遠くまで来ていただいて申し訳ないんですけど、もう解決したんです」

申し訳なさそうに隼人が呟いた。

南は、砂糖を入れようとしていた手を止めた。

昨日、詩音の部屋で隼人から連絡だけは受けていた。

せっかくだから会おうということになり、内容は聞かなかった。


「どんな風に。時間軸の概念が理解できたとか」

 南は、探るような表情で隼人を見て、ぼそりと呟いた。

「いえ、時間軸のことは未だに理解できないです。たぶん俺には理解できないんじゃないかなと思います。説明や概念では」

「というと?」

聞き手が続きを気にする話し方をする隼人を前にして、南は小説家としてではなく、読者になった気持ちで期待を込めて問い返した。


「あれは夢だったかもしれません。人が聞くと妄想だと笑うかもしれない。けど自分は確かに心音に出会って、それで少しだけ変わりました。珍しくすごい眠気がきて、朦朧としながらベッドに横になったら、しばらくして心音の声を聞いて」

一方的に話すことに気が咎めたのか、隼人はそこで一度南方を見た。

南は黙って聞くというように、隼人に手で先を進めた。

「目を開けて寝返りをうったら、心音がいて、あわてて飛び起きました。最初はわけがわかんなくて、質問ばっかりして。そうしたら、心音が時間軸の話をしてきたんです」

「話の骨を折るようだけど、心音ちゃんに出会う前、『ラポール』と同じように、鐘の音が鳴ったりした?」

気になった質問を、南は口にした。

「いえ、・・・、あっ、でも、そうかなっていうのはありました。でもたぶん関係ないと思いますけど」

「そっか」

それ以上は聞かず、南はまた先を促した。

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