第三章 Time travel times(第三章終)
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「今、隼人を呼べた!隼人もなんとなくだけど、理解してた」
「うん。少なからず隼人君が時間軸について意識したり、考えたからな。でも、あれを持続させんと、長い時間話すなんてのは無理。言い方悪いけど、さっきの心音ちゃんの声も起きたらなかったもんになっとる」
「そうだね。でも進歩だよね」
「うん。何もなかった時に比べたらずいぶんな。何もなかったらそこで終わりやもんな」
「大丈夫。隼人は想像力だけは人一倍豊富だから。きっと詩音ちゃんの存在が今の考えをもっと長く持続させてくれる。・・・、あっ、ごめんなさい」
「ううん。気にせんでええよ。そうそう、隼人君みたいな考えをするのも、時間軸の概念の違った角度からの考え方やし。要するに核となるところをつかんどけばそれなりに」
「南さん、私って残酷かな」
「どうしたん?突然」
「だって、隼人に思いを告げたあとまた去ってっちゃうわけでしょ。それに私の思いを聞いてくれて、誰かとつきあうとしたら桜か詩音ちゃん、他の誰かだとしても、私の言葉で誰かが傷つく。ひょっとすると全員を傷つけてしまうかもしれない」
「そんなことない。だって、俺らがやったことなんてただのきっかけにすぎんわけやん。後はあっちの空間の流れでどんどん変わっていく。俺らが介入したことなんかどうでもええことになっていく。好きになった理由なんか、つきあっとったら立ち止まってほとんど考えんやろ」
「そうだけど」
「俺らは恋愛のきっかけを作るだけ。意識をな。それが成就するかは結局向こうの空間で肉体と精神を持つ隼人君が決めること」
「そうなんだよね・・・」
「寂しい?」
「うん。私はその相手の中に入ってない。入っていたかった。私わがままだから。あんな勝手なことしたのに」
「精神があっても、肉体のない人物は愛せんよ。隼人君ならそれでもええっていうかもしらんけど。精神に負担をかけすぎることになる」
「つらいけど、隼人には前を向いていて欲しいから。私はっきりというよ」
「それがええやろうな。でも、一つだけ嘘をつかんとあかん」
「うん。わかってる」
「隼人君のためやから」
「そうだね。でももし私が感情的になったり、隼人がそうなっちゃったら、南さんが止めてね」
「できれば。でもそうならんことが一番ええ。そうなると元もこうもなくなってまうから」
「ひょっとしたら、まだまだ先じゃなくて、もうすぐその場面がやってくるかもしれないね」
「隼人君次第かな」
「その時のために備えて、私ももう一度いろんなことを整理する。このまま会っちゃいけないと思う」
「それがええ」
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