第三章 Time travel times⑩
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「南さん、どんどん予想しない展開になっちゃうよ」
「うん。正直参っとる」
「強引にでもいいから、隼人の意識の中に入れないかな」
「時間軸の概念のない人間の意識の中に他人が存在できる時間はどれだけ頑張っても、一分もない。その後は戻ることもできずに、完全に無になる。思い出せる夢にもならんよ」
「一分」
「そう。その程度じゃあ、はっきり言って何も感じんよ」
「それじゃあ駄目。ちゃんと隼人の心まで届く思いを伝えなくちゃ」
「なら、時間軸の概念が少しでもできた時に。完全にまでなるのはこの状況やと難しいけど、その存在を少しでもみつければ、もっと長い間意識の中に存在できる。そしたら、無意識の感情にも影響を持たせることができる」
「でも、どんどん私のせいで、周りの人が傷ついていくよ。詩音ちゃんだって。南さんの時間軸の中の一人の子どもだとわかっていてもそれはやっぱり」
「心音ちゃんは、時間軸の概念を理解できとるんかもな」
「南さんが教えてくれるから。こっちの世界の時間軸の私を見ることもできたし」
「自分をどう考えるかやねんけどな。隼人君には、自分の他者的な部分の価値観がほとんどないからな。心音ちゃんと瓜二つの詩音に会うことでそういう考え方が生まれると思ったけど」
「予期せぬ偶然が邪魔しちゃったね」
「それが、時間軸を歪めるっていう行為に対する対処法。自然治癒じゃないけど、予期せぬ偶然で、意図的な時間軸を歪める行為を正す」
「それに逆らい続けるとどうなるの?」
「一本の線で繋がっとる時間軸が、点在する。つまり、俺と心音ちゃんも時間軸の概念を知らん人間になるっていうこと」
「そうなんだ。」
「だからこそ状況把握が必要になる。適材適所で意図的操作をせんと」
「うん。今はじっと見てるしかないんだね」
「そう。何もせんでも、ひょっとしたらこっちの思い通りになっていくかもしらんし。そういう時は傍観しとくに限る」
「わかった」
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