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第三章 Time travel times⑧

隼人は外に出てからも、後ろを振り返りながら歩いた。

詩音と二人で話したかったが、出て行くといった手前、戻るのは不自然な気がした。

 

高田も他の社員も、隼人が詩音に向ける視線に何か特別な感情があることに気がついていた。

「社長、少しだけ外に出てきてもいいですか?」

ぼぉっと席についた詩音が、何かを決心したように立ち上がり尋ねると、高田は何も言わず了解した。

他の社員も含めて、詩音が、隼人の昔の恋人か何かだと想像していた。

 

詩音は、隼人が歩いていく道を全速力で追いかけた。そのせいもあって会社からそう遠く離れていない場所で隼人を見つけることができた。

「あの」

その声で、隼人は立ち止まった。声にまで聞き覚えがある。

振り返ると、よほど急いできたのか、詩音は激しく息をきらしていた。

隼人はその姿をじっくり眺めた。見れば見るほど、心音にそっくりだと思わざるを得なかった。


「さっき、会社で、・・・、私のこと心音って」

詩音は気になっていたことを思い切って聞いた。

「えっ、・・・、ああ」

釘付けになっていた視線を逸らし、隼人は説明に困ったという表情になった。

全部を説明するには時間がかかりすぎると思った。

「あの、前に、あそこにあるお店で、その心音さんっていう人の妹さんから、自分にそっくりだって言われて。今日も言われて」

 

隼人が説明しなければならない半分以上はもう理解しているようだった。桜も会ったことがあるのだと、隼人は少し驚いた。それに、虎二や梅子も。二人が最近、何かぎこちなかった理由が今はっきりとわかった。

「どうして心音って人のことを?」

「その心音って、俺の、・・彼女。そこまでは聞いてない?」

「えっ?!」

梅子も虎二も、桜も、心音が自分の恋人であるということは触れていなかったのだ。

言う必要もないことだが、詩音の驚く表情は意外だった。


「なにもかもそっくりで。それでつい」

その言葉を聞きながら、詩音は複雑な気持ちになった。

似すぎていることへのうれしさにも似た思い、しかしそんな風に好きになってもらいたくないという気持ち。


二つの思いが胸の中で交錯した。

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