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第三章 Time travel times⑤

「桜ちゃんから聞いたんやろ?」

虎二でもそのくらいのことは理解できた。

咎めるつもりはなかったし、そんなことをする必要もなかった。

隼人を連れてこなかったことで、自分たちの思いは十分伝わっていると、虎二も梅子も納得した。


「まさかあれほどとは思わなかったですね。心音ちゃんそのままじゃないですか」

まだ声を出せないでいる瞳に代わり、すっかり目が覚めたという表情の巧が呟いた。

「ああ、だから、俺らも桜ちゃんも戸惑っとる」

「私、一瞬本当に心音がいると思いました」

焦点の定まらない目をきょろきょろと動かしながら、瞳は呟いた。

鼓動の高まりのままに、本当に名前を呼びそうになった。


「お気持ちはわかります。私も初めてお会いした時はそうでした」

梅子は、桜の次に心音と一番近くで接してきた瞳の驚きを理解できた。

「桜が話した時は話半分で聞いていたんです。けど、ずっと気になってて」

「桜ちゃんは、お姉ちゃんって問いかけたな。あの子もびっくりしとったな」

情景を思い浮かべながら、虎二は淡々と話した。虎二は、他人に誌音のことを話す時はずいぶんと冷静になることができた。

「あの子に心音の写真とかは?見せて欲しいとかは?」

 瞳はさっそく質問をした。聞きたいことはたくさんあるようだった。


「いや、見せてない。見せてくれとも言われてない」

「そうですか。よかった。隼人君を連れてこなかったことも。実はどうしようかすごく迷ってて」

瞳は、自分の衝動を止めてくれた巧の方を見た。

巧はお構いなしに、デザートのコーナーから、お気に入りの商品を選んでいた。

「なんでこんな時にデザート選んでるのよ」瞳が注意すると、してやったりの顔を向けた。

 

「私たちがお引き合わせしなくても、出会うべき人には必ず出会います。隼人さんにとって必要なお方なら」

瞳は、以前に梅子から聞いた話を思い出した。

梅子は自分のことを運命論者と言っている。

人の人生は生まれた時から死ぬ時まできちんと決められていて、赴く場所、出会う人間も決まっているのだと話してくれた。

心音と二人でそんな人生は面白くないと反論した。

だが、意識的にそれがわかる人など存在しないとつけ加えた。

つまり、自分の人生に悩むくらいなら、そう考えた方が、気持ちがリラックスできるというアドバイスだった。梅子の強さはそこからきているのかと、二人は思った。隼人だけがなぜか、最後まで反対した。


「そうですね。心音に似ているからっていうこともあるけど・・・、できればあの子と友達になりたいな」

瞳はぽつりと呟いた。瞳は笑顔の似合う女性が好きだった。今までのベストスマイルは心音だった。無邪気というよりは、無防備な笑顔だった。

心音は本当にどこでもよく笑った。最後の瞬間をのぞいては、つらい時でも、人前で悲しそうな顔を見せたことはなかった。


心音の笑顔を見ていると自分も楽しくなれた。

詩音を見て、亡き親友の笑顔を再び見れたようで、瞳はうれしかった。

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