第三章 Time travel times②
その日の夜、桜は瞳にメールで結果を知らせた。
とても、電話で話せる状態ではなかったからだ。
それを受けて、瞳は巧を誘い、隼人の部屋を訪れた。
「やっぱ桜ちゃんとはつきあえないか?」
隼人も少し落ち込んでいた。
そんな隼人を見て、責めにきたのではないという風に、
巧はさらっと呟いた。
「桜ちゃんだから、つきあえないってわけじゃない」
隼人は、理解してもらおうとは思わなかったが、意見だけは言いたかった。
「心音のこと好きなままでもいいと思うよ。隼人君は気持ち変えようなんて思わなくていいと思う。でも、桜とつきあったらきっと何か変わるよ」
親友だった心音への気持ちと、妹のような存在の桜の恋愛の応援。その間で、瞳も揺れていた。
親友は本当にそれを望んでいるのだろうかと。
「俺はそんな気持ちで恋愛をしたくない」
「隼人君は恋愛を重く考えすぎだよ。女の子にとってそれは、すごく嬉しいときもあるけど、苦しい時もあるよ。特に新しい恋愛をするときに。もう少しだけ気軽に考えてもいいと思う」
心音にとって、隼人の一途さが一度も苦しいと感じる時がなかっただけに、説得は難しいだろうと、瞳は内心思った。隼人との恋愛は楽しいことばかりだと、以前心音が言っていた。
最後の結末だけを除いてはそうだろうと、瞳もそう思っていた。
「ないとは思うけどさ、向こうの両親のこととかは、気にはしてないだろうな」
巧は遠慮気味に聞いた。
「いや、それはない。本気で桜ちゃんとつきあいたいって思うなら、そんなこと関係ない。巧が教えてくれたんだろ」
「そっか。そうだよな。まあ、つきあう気もないのに、とりあえずつきあう奴よりもよっぽどいいさ。それに、なんかおまえらしいよ」
巧はあきらめたように言った。瞳にも、これ以上何も言わないでおこうと、視線を送った。
瞳もそれを理解した。
「でもな、そういうこともあったってことは、心のどこかに残しといてやれよ」
「ああ、もちろんさ」
生涯忘れることはないだろうと、隼人は思った。
生まれて初めて告白されたのだから。




