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第二章 思いの行方⑤

二日後に、隼人たち三人が食堂にいると、直樹がまた突然と現れた。

向こうも偶然ばったりと会ったという表情をしていた。すぐに近づいてきた。

「本、ありがとう。一気に読んだ。今度、もう一冊の方も貸して欲しい」

丁寧に袋に入れていた。几帳面な性格が感じ取れる。

「早いな。もう読んだわけ。どうだった?」

感想を聞いて欲しいという目をしていたので、受け取りながら聞いてみた。

 

瞳も気になっていた。巧は関心ないというように食事をしているが、内心、直樹の言葉が気になった。

「やっぱり一番気になったのは、フレーズの部分かな。前後を何回も読んだし、意味も考えた。なんで、フレーズの部分が消えたのかは結局わからなかったけど、時間軸っていうのは少し理解できた」

「どういうこと?」

瞳は、何回読んでもあまり理解ができなかった。

自分と全く同じ他者が、同じ時間に天文学的な数存在するなど、誰が信じられるだろうか。

コピーロボットではあるまいし。

 

「口ではうまく説明できないかもしれないけど。つまり、時間を空間ってたとえた時に、一人の人間がする行動は意識の作用によって選ばれての行動ってこと。今が十二時二十分。片桐がここで飯を食べてなくてもいいわけだろ?教室でもいいし、大げさに言ったら病院とか警察にいても」

隼人はうなずいたが、そこまではなんとなく理解できる。知りたいのはその先だ。

小説を読めば、今、直樹が説明したことぐらいは感覚としてつかめる。


「まあな。俺もそのあたりはわかる。けど、じゃあどうして俺は今この場で飯を食べてるんだってとこが、この小説からはほとんど伝わってこなかった」

行動を決める概念が足りない小説だと隼人は感じていた。

何かの本で隼人は読んだことがある。直樹もまたそう言い出すのだろうか。

南和典という人物の小説では、時間軸にある、無数の自己との交渉と、

うまくごまかして書いているように思えた。


直樹は一呼吸置いた。

「確かに小説の中じゃあ、その部分はあまり触れてなかったからな。読者に任せるっていうことか、ただ思い浮かばなかっただけか。俺にもそれはわからない。読者に任せるっていう意味でだけど、俺なりの考え方は見つけた。それなりのヒントみたいなのは小説に少しはあったから」

隼人は、興味を持って少し身を乗り出していた。


 直樹のこれからの発言は、とりとめもない考えにアドバイスをくれるものになるのかもしれないと感じた。

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