第二章 思いの行方③
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「心音ちゃん。ちょっと時間軸の外に出すぎじゃないかな」
「ごめんなさい。でもどうしても隼人に会って伝えたくて。新しい恋愛をして欲しいって」
「それはわかるけど、時間軸以外の自分が存在できる時間はそう長くないねんで。同じ空間に同一人物が二人おるようなもんやねんから。下手したらすべての時間軸の自分が失われることになるんやで」
「わかってるよ。でも今の隼人をここから見ていると、すごくつらいの」
「わかるけど、無茶せんと。もう少しゆっくり行こう。なんとか俺も二人に対話させてやれるように頑張るから。けど、まずは隼人君の意識のなかに、時間軸の概念が芽生えんと始まらんねんから」
「うん。ありがとう」
「俺このままの状態でも」
「駄目。そんなこと言わない。本当に隼人と一緒なんだから。協力してもらってる私が言うのも変だけど。私なんかが登場しないように。現実を眺めないと。前に進まないよ」
「ありがとう。何にせよ瞳ちゃんの夢と、虎二さんの前に仮想の姿やけど現れた。一番すごかったのは小説の差し替えやな。なんでああなったかはわからんけど。後なんか少しのアクションを加えればいつか必ず概念が芽生えるはず。巧君と梅子さんが結構鋭いからな。それに直樹君っていう子の存在も」
「そうだね。向こうの南さんもやるね。制御脳の方は大丈夫?」
「今のとこ。けど、次のアクションをおこすのは、心音ちゃんの思いがもう少し整ってからかな」
「うん。そうだね。私もうへとへと。少しだけ休むね」
「おやすみ」
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