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おすすめの映画

作者: 遠赤

 昼食後の一杯を味わうディー氏のもとに友人のエス氏がやって来た。

「やあディー、ちょっと聞いてくれよ」

「どうしたんだい」

エス氏は憤慨した様子で手近な椅子を引くと、どかりと腰掛ける。


「これさ、昨日見た映画が酷かったんだ」

そう言ってつき出されたのは握り潰されたチケットの半券である。

「ははあ、君がそんなに言うなら余程なんだろうね」

エスは映画鑑賞が趣味だ、気に入った映画は是非にと鑑賞を勧めてくるのだが、気に入らない映画を批判する事は珍しい。


 チケットの題を見てみるが、ディー氏はその映画を知らなかった。

「いったいどんな話なんだい」

エス氏は映画の内容を思い出したのか、少し不快そうな顔をすると吐き捨てる様に喋り始めた。

「法廷ものさ、主人公は弁護士なんだ」

「人を殺してしまった少年を弁護するんだ、その子は孤児で殺されたのは孤児院の院長さ」

「少年はとても人を殺すようには見えないし、理由もない」

「でもその子は院長に虐待されていたんだ」

「それで···」


 エスは身を乗り出して、身振りを交えて語る。

「調べて行く内に少年は二重人格だと分かるんだ、酷い虐待を受けたせいで残酷な人格が生まれて、遂に院長を猟奇的に殺してしまったんだ」

「でも良い人格はすごく良い子なんだ、とても人を殺せるような人間じゃない」

「だから主人公はその子が虐待を受けていた事と二重人格であることを証明しようと奔走するんだ」

そう語るエス氏は嫌いな映画の話をしているようには思えない。


「まさか、無罪にならないのかい」

その言葉を聞くとエス氏は表情を曇らせた。

「無罪になる、無罪になって精神病院で治療を受ける事になる」

「それで最後に少年がこう言うんだ

『ありがとう、弁護士さん、お陰でムショに行かなくて済んだ、すぐに自由の身だ』と」

「全部演技だったんだよ、冷酷な人格が本物だったんだ!」

エス氏は最後の方を殆ど叫ぶように言うと消沈した。

「ふうむ、それは確かに酷い映画だなあ」

 ディー氏は珈琲を一口飲むと、自分が先日見た映画の事を思い出した。

「そういえばエス、君におすすめの映画があるんだが」

「面白い映画なのか?」

「いいや、酷い映画さ、残酷なだけで救いの無い、最低の映画さ」


「精神病院が舞台なんだ」

エスが語る映画には元ネタがあります。

 映画の題名は敢えて挙げませんが元ネタのラストも大体書いてある通りですのでネタバレです。

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