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俺のボスがこんなに可愛い。

右腕視点です。

ボスがあれこれ考えている間、彼もテンパったり浮かれたりしていました。

可愛い可愛いばかり言ってます。

俺のジルはとても可愛い。


顔は小さい。ジルのパーツはどれもこれも俺より小さい。だからジルに触れる時はいつでも慎重にならなければならない。

造作は普通に可愛いという程度だろうが、俺から見るとこの世の誰よりも何よりも可愛いと思う。

翠色の目は猫のようで、睨みつけられるたびにゾクゾクしてしまうので、つい怒らせてしまうような言動ばかりしてしまう。

小さな口から吐き出される言葉は、お世辞にも上品とは言えないが、小さな猫が虚勢を張っているようで可愛らしく、稀に寝ぼけている時などむにゃむにゃ柔らかな口調になるので、そのギャップにヤられる。これから先もっとイロイロな声を聞けるかと思うと楽しみである。

背は小柄で、俺の胸あたりにやっと届くか届かないかというような小さな頭を見るといつでも、その頭を撫で繰り回してたくてたまらない衝動に駆られる。

肩に付くくらいの髪を適当に結んでいて、後ろに立つと見えるシャツの襟から覗く綺麗な白いうなじが眩しい。時折思わず指先でなぞってしまうのだが、そのたびにイイ声を上げられるので、不意打ちで何度も触ってしまう。うなじが弱いとか、後々が楽しみでしょうがない。とりあえず今度は舐めてみたいと思う。

他の弱い部位を知りたい探りたいと思い続けて早数年。

この国では女子が成人と認められる年齢は16なので、5年なんてあっという間だと考えていたが、しかし想像以上に長く、耐え忍ぶ道のりだった。


ジルと初めて話したのは前ボスの葬式の時であるが、その時から俺の心はジルに囚われてしまった。


怯えながらも逃げたら負けだと言わんばかりに睨みつけてくる小さな子供。

最初はボスの座にまんまと転がり込んだガキだと疎ましくすら感じていたし、前ボスによろしく頼むと直々に言われてしまったとは言え、気に入らなかったらトンズラこいてやろうと渋々前ボスの懐刀に連れて来られたのだが。


良い目だ、教育すればそれなりに仕事もこなせるようになるんではないか、まぁ教育すればの話だがな、この目付き悪くないな、これから先、ずっとこの目で俺を見るのか、と考えていたら、ずっとこの目に俺を映して欲しいなどと思ってしまい、それが頭から離れなくなった。


俺はその時まだ11になったばかりの、色気のいの字もないような少女とも言えぬ子供に、心を奪われてしまったのだった。

奪われてしまったものは、どうしようもできない。疎ましさが完全に消えたとは言えなかったが、膝をついて手の甲にキスを落とす時にはほぼ無くなっていた。

いろんな表情が見てみたくて、つい暴走してしまったのも良い思い出だ。

もちろんすぐにどうこうしようという考えは微塵もなかった。本当である。

ただ、この子が大人になったら、その時は必ず手に入れようと思った。


ジルは日に日に可愛くなっていった。毎日毎日、前日よりもさらに可愛く見えてくる。

もはや病気であったが、俺にはどうしようもない。ジルが可愛いのがいけない。


その可愛さに色香も混じるようになってきたのは、ジルが13になった頃だろうか。

絶対に、死ぬほど、認めたくはないのだが、ジルが、あの忌々しいヨルに対して、信頼や友情ではない感情を、抱き始めた頃である。


俺の故郷の国では、男女共に13が成人なので、俺は欲望と理性を天秤にかける毎日が続いた。ジルが成人するまで、一切手は出さないという己の戒めを、解くか否か。


もう良いだろう、犯罪など、人の目など、バレなければいいのだ、知ったことか!今はヨルなどに心を奪われているが、流されやすい面もあるジルのことだ、ジルのお望み通り大人扱いをするという名目でまずはジルの身体を奪って、徐々に心も手に入れていけば良い。どろどろぐずぐずになるまで甘やかし愛を囁けば、愛に飢えた少女はすぐに俺だけを見つめ始めるようになるだろう……

俺の荒んだ心と千切れかけた理性を癒し結ぶのもまた、ジルであった。


ボスは可愛い。でもそれは姿形だけではない。

逃げ出したくてたまらない筈だろうに、逃げない、意地でも逃げてたまるかというような姿勢。強がって見せる様がとてもいじらしく、愛おしい。

ジルはボスに向いていない。ギルドの名前を一身に背負うには、その器はまだまだ未熟である。

人前に出ることも人と話すことも苦手で、よく失敗しては落ち込んでいる。人には向き不向きがあるものだ。特に集団の長にふさわしい人物は限られているが、ジルはふさわしくないと分類されるような人間である。

しかしその欠点は、ボスを慕う周りの人間で補えばいいのだ。

ジルは何に対しても全力で一生懸命で(時折仕事をサボって街に逃亡することもあるが、ガス抜きは必要であるので見逃している。それに其れ相応のお仕置きも可能となるので俺自身も楽しい)、その不出来さから逆に人の心を掴むことには長けている(ここ数年は害虫駆除や早々に芽を摘み取るのに大忙しである)。

失敗は着実に糧にしてきているし、数年前に比べれば、ジルは確実に成長してきている。成長を一番近くで見守って来れたことを幸福に思う。



ボスとなってから、ジルは少女であることを自分に許さなくなった。

だが気を許したヨルの前では、少年の仮面は外れ、本来の初々しい少女の顔を見せていた。

ヨルを殺してやりたいと何度思ったことか。俺の想像の中で奴はあらゆる暗殺方法ですでに100回は死んでいる。

実際にヨルを葬らなかったのは奴がジルに興味を示す素振りが全く無かったこと、ヨル自身に盲目的なほど愛する女性が現れたからだ。

ジルの初恋は叶うことはないというのは分かり切っていたことだったが、まあヨルが目障りなのは変わらない。

ヨルに辞職を促し続け、ジルにもヨルの想い人の元へ会いに行かせたりして、ついにヨルの首を切ることを決心させた。

もう少し時間が掛かるかと思ったが、うまくいってよかった。


ジルがヨルを想って流した涙など、見たくなかった。だが、ただひとりで涙をこらえる姿も、見たくなかったし、俺以外がジルの涙を見るのも許せない。

それならば俺の腕の中に閉じ込めてしまえばいいと思った。


初めての恋の終わりに、ジルが被り続けてきた少年の面はついに初めて俺の前で剥がれ落ち、無垢な少女が姿をあらわした。

このような形で初めて見ることになったのは残念だったが、邪魔者は居なくなった。

これから先ジルの少女は、いや、ジルのすべてが俺のものになるのだと考えれば、我慢できる。

俺の胸の中でしゃくりあげるジルを抱きしめながら、そのようなことを考えていた。


ジルが落ち着いてくると、俺はだんだんとこの状況に舞い上がり始めてしまった。

これまでにも寝落ちするジルを寝台に運んだり(断じて不埒なことはしていない。断じて)、ギャーギャーうるさいジルを抱き上げて運んだり、などなどの行為は行なってきたのだが、好きな娘と2人で寝台に乗り、ぴったりと密着、抱き締めているという状況に健全な男が興奮しないわけがない。

俺の長年温め続けてきた熱い想いを伝えるには、これがちょうど良い機会なのではないかと思ったのだ。

俺はジルを押し倒し、驚きの表情を浮かべる愛しい人に、情熱的な告白をして見せた。


つもりだった。



お嬢さんの(身も心も)ボスの座(も全て)欲しい。


この細い首に俺だけのしるしをつけたい。



……どうやら俺は言うべき言葉を間違えた、というか色々抜かしてしまっていたらしい。

ちなみに俺は喋ろうと思えば流暢にこの国の言葉を話すことができる。しかし俺の母国の言語とこの国の言語は、どうも相性が悪いらしく、発音が難しいのだ。未だに慣れないので意識しなければ流暢に話せず、訛りが残るままにしている。それに俺のここらでは珍しい容姿+カタコトだと使い方次第で相手に親近感や威圧感を与えられるようなので、いろいろと使えるのだ。

首にしるし、というのは俺の故郷の風習で、夫婦となった者たちは、相手の目と同じ色の宝玉や石のついた首飾りを贈り合い、お互いに着け合うのだ。ジルには俺の紅色を、俺にはジルの翡翠色を、というように。無論口づけでもしるしを残したいものだが。

遠い国の、しかも一部地域の習わしをジルが知るわけが無いのに、俺はついその白く細い首に手をやってしまったのだった。

話を戻そう。

後で思い出しても恥ずかしく情けないことなのだが、何度も言う、俺は舞い上がっていたのだ。

ジルは脅え、しかしそれを悟られないように気を張った様子で俺をじっと見ていた。

ジルの澄んだ瞳の中に俺の顔が見えるというだけでゾクゾクした。


ジルが意を決したように口を開く。


『おれは、まだ、ボスの座から降りる気はないからな』


もちろんジルが望むのならボスを続けてもらって構わない。仕事でも家庭でもいちばん近くでジルを支えることができればそれでよいのだ。辞めたい時が来たならその時は、俺がぜんぶ引き受けてジルに楽をさせて甘やかしてやりたい。


『おまえが、ずっとボスの座を狙っていたことは知ってる。つか、殺意ダダ漏れなんだよ。ずっとおれを殺す機会を伺っていたんだろ?』


……ん?殺意?殺す?

この時点でやっと俺は、ジルは何か勘違いをしているのだということが分かってきた。


『ここまで来れたのはおまえのおかげだ。すっごく感謝している。でも、おれはまだ、おまえが教えてきてくれたことをひとつも完璧にこなせてないし、おまえのおかげで、これから“黒耳”でやりたいことも出来てきた。おまえのおかげだ。』


『つまり、おれが言いたいのは……これからもよろしくってことだ!おまえはおれが嫌でたまらないだろうが、おれにはおまえしかいない!おれにはおまえが必要、だ!!』


……俺の求愛はこれっぽっちもジルに伝わっていなかったのだけれど。それどころか、数年来の想いも殺意として受け止められていた。それには少なからず悲しかったし脱力する思いだったが、それよりも言われた言葉があまりにも嬉しすぎて喜びが勝った。

たとえ俺に殺されない為に少しは盛った言葉であろうと。ジルが俺に言った言葉は、決して嘘ではないと信じられた。

ジルには、俺が必要だと。

ジル自身がそう言葉にしてくれただけで、俺は不覚にも泣いてしまいそうなほど嬉しく、満ち足りた気持ちになったのだ。

ジルの薄いが暖かな胸に顔を埋め駆け足の心臓の音を聞きながら、俺はじわりと滲みかける涙が引くのを待った。(その時は顔を隠すためにそうしただけだったけど今思うと役得だった。薄いが想像以上の柔らかさだった)


その後は、俺の本当の想いをきちんと理解してもらって。


念願のジルの小さな口も余すところなく味わえて、俺的には万々歳である。

抵抗が弱々しくなっていく様、とろんとした目で俺を見上げその後すぐ涙目で睨みあげるジルは大変愛らしかった。キス以上のことをしそうになる本能を余裕の表情で内心必死に抑え付けるのには苦心したが。


昼食の時間だと部下が部屋に入って来て、俺にとって夢のような時間は終わりを告げた。

まだまだジルと2人きりで存分にイチャイチャしたかったのだが、あれ以上ジルにくっついているとジルに不埒なことをしでかさない自信はなかったので、まぁ、助かったと言えよう。自分からは絶対に離れたくなかったので。


見られたことが相当恥ずかしかったのかジルは食堂で昼食を取ることを嫌がり、簡単につまめるものを持ってこいと厳命されてしまったので、食堂へ向かう。

食堂では、いなくなったヨルと俺たちの話題で盛り上がっていた。

ヨルはボスの部屋から出て行った後、すぐに自分の部屋を片付け、それなりに親しくしていたという仲間に別れを告げてギルドを後にしたらしい。その足で想い人だとかいう未亡人の薬師の元へと向かったのだろう。

もはやヨルなど心底どうでもいいことだ。根掘り葉掘り俺とジルのことについて聞き出そうとする奴らを適当にあしらい、食堂の料理人に自分とボスの分の昼食を用意してもらって、さっさとジルと俺の愛の巣に戻った。


部屋に戻ってジルと共に少し遅くなった昼食を取る。ジルはまだ照れが残る様子で俺とは一言も話したくはなさそうだったが、俺が話しかけると一言二言は返してくれた。

ジルは昔からどんなに話したくなくても、一度も無視をしたことはない。無視は根は真面目な性格故に気が咎めるのだろうか、嫌々、渋々、といった様子がとても可愛らしいので、俺は一度も自重したことはない。ジルの嫌がる顔がもっと見たいという俺の我儘である。好きな子はとことんいじめたいというやつである。


一応、ヨルのことは伝えた。

ジルは少し動揺していたが、そうか、とだけ口にした。

ヨルのことなど1日も早く忘れ去って欲しいものだが、そう簡単にはいかないと思うので、俺自身が忘れてもらえるよう鋭意努力する所存である。


昼食が終われば、勤務時間再開である。

すでに相当数手付かずのままの書類の山が出来たジルの机の上に、さらに書類を追加していく。

うげぇっと心底嫌そうにジルの顔が歪んだ。


「さ…さっきまではす…すきだのなんだの言ってたクセに!やはりおまえはオニだ!おれを寝させない気なんだろ!!」

「ソレはソレ、コレはコレでスよボス。ボスの為を思ってオニになっているのデス、今日の分を終ワラセナイと明日もがき苦しむコトにナルのはボスなんデスヨ?それに俺だって今スグにでもボスと寝台に直行シタイデス。運動の後はグッスリ寝サセテあげまスヨ」

「うっ……これとかこれは別に今日中じゃなくていいだろ!?」

「アラ、スルーでスかボス。ウブなフリしちゃッてェ、言わセタいんデスカ?俺はイツデモ準備万全でスのでボスはタダ身を任セテくれレバ」

「あーあーもー分かった!ちゃんとやるから!!黙ってくれ!!」


兎の形をした水晶の文鎮(ちなみにかつて俺がボスへ贈った物である。気に入って使ってくれているようなのでとても嬉しい)を顔めがけてぶん投げられたが難なく防御しそっとまた元の場所へ戻した。


ジルの顔は真っ赤だった。

とっても愛らしかったがこれ以上は突つかないことに決める。

無理に迫って大事な時に警戒されるようになったら元も子もない。

加減を見誤るようなことはないようにしなければ。

大人しく書類の山に取り掛かり始めたボスを横目に、俺は幾つかの案件に必要になるであろう本や資料を探しに奥の書庫に行こうとした。



「………がと…な…」

「ン?何か言いマシタカ?ボス」

「…っ…だから、ありがとっ!な!!」


何に対する感謝なのか分からず戸惑う。


「おまえが…とてつもなく不本意だが、泣かしてくれたおかげで、だいぶすっきりしたから……ただそれだけ!だ!!」


誰からも見られることはないが、思わず口を覆った。

ダメだ、ニヤニヤを抑えきれない。

きゅんきゅんきゅんきゅん。


「イエ…ボスがスッキリしたのナラ、よかったデス」


不意打ちすぎて茶化すことや気の利いたことも言えず、奥の書庫に逃げた。

危なかった、振り返って、ジルの背中を見てしまえば、そのまま抱きついてしまいそうだった。


稀に、本当に稀だが、デレという名の無意識の攻撃を仕掛けてくる、か弱いが実は手強いボスに、俺はいつも瀕死に追い込まれるのだ。

ジルは俺がジルを簡単に殺せるなどと言っていたが、俺にジルが殺せるわけがない。気を抜くと俺の方が殺される。いや、すでに俺は殺されているのかもしれない。



俺のボスは、本当に、可愛い。





一度完結にしましたが彼視点が書きたくなったので、書いてしまいました!

ラギはずっとボスにめろめろですw

心の中ではずっとボスではなくジルと呼んでいます。

ちなみに年は8以上は離れてます。


スマホからの投稿なので文字開けとかができていないかもです。何かありましたらコメントお願いします!

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!


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