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後編

後編だけ少し短くなってしまいました……


 殺られる。


 「アァモウ……」


 おれから視線を逸らしながら何かをつぶやく。


 「スゴイ殺シ文句デシタヨ、今ノ」


 

 ラギの顔は、見たこともないほど、赤かった。褐色の肌が薄暗い中でも分かるほど、赤い。真っ赤っかである。

 びっくりして思わずまじまじと凝視してしまうが、アマリ見ナイデクダサイ、と力が抜けたかのようにおれの胸元に顔をうずめ、ウワーウワーと何やら興奮しているようだが、この状況をだれか説明してくれさっぱり分からない。こちらは殺されるか否かの瀬戸際にいたのだ、とりあえずこの世とオサラバは免れたと考えていいんだよね?ねぇ?


 「ボスったらイツの間にそンな殺シ文句を覚えてキタンデス?あぁクソもう俺ノボスがカワイイカワイイカワイすぎてツライ」

 「わ、分かったから胸から顔を離してくれないか……?」

 おれの性別はこんなナリをしているとはいえ女である。なんというかその、胸のあたりで頭をぐりぐりされると、普段は女を捨てている身とはいえ、こっちがツライ、いたたまれない。

 おれがなんとかラギの頭をどかそうと髪をひっぱり、ついでに握ったままだった指を外そうとすると、すかさずラギが掌ごと掴んできて、あろうことか指と指の間に指を絡めてきた。

 こうなったらもう逃げ出せない。

 どういうことだ、やはりおれの命はまだラギに握られているのかと焦っていると、ラギが胸元から顔をあげて、じっとこちらを見ている。またギラギラだ。こわい。


 「ボスは勘違いをシていまスネ」

 おれの手を掴んでいない左手でおれの頬をそろりと撫でながら首にも手を当ててくる。汗ばんだ首にラギの冷たい手は気持ちいいと言えるものだったが、油断はできない。


 「勘違い……?」

 「ハイ。ボスは俺がボスを殺スと思っていタのデショウ?コノ5年間尽くしに尽くシテキタ俺ニ対してノヒドイ裏切りでス。しかも俺の純情を弄びましたね……」

 「待て、純情を弄んだってどういうことだ?」

 「アーー!もウ!ボスの分からズ屋!俺の渾身の求愛ハ伝わっテないシ、さっきのボスの言葉ダってトテモ嬉しかっタですが、ボスは俺が望んでいるのと違ウ気持ちっぽイし、俺ハ、」


 ここでラギはひとつため息をついて、眉をぎゅっと寄せた後(これも初めて見るくらいぎゅっとしていた、怖かった)、またため息をついた。

 それからおれの手を強く握り締めて、じっとおれを見た。


 「俺ガ、ボスの座を頂くと言っタのは、お嬢さんの身も心も立場もひっくるめて全部欲シイデス頂キマス、とイウ意味デスヨ」

 「…………はぁ?」


 理解するのに時間がかかった。

 ちょっと待って、意味が分からない。



 「つまり俺はボスに惚レテルってコトデス。結婚シてくだサイ」



 おれの気も知らずラギは堂々言い放った。何やら先程までの苦悩の?表情とは異なり、清々しい表情である。ま、まあ確かに気持ちは分かる。言ってやったぜ感は分かる、さっきはおれもその状態だったし……って、

 

 待って。待って待って待って!!!待って!!!!



 「待って!!顔ちかい!!ムリ!!!」

 「えぇぇムリとかヒドイデス。ココは大人しクちゅーさレてくださいヨそうイう状況だっタデショ今」

 「そういう状況じゃない!!おれはいま、これ以上ないほど、混乱している!!!」


 つかその顔でちゅ…とか言うな!!こっちが恥ずかしいわ!!

 

 混乱しているがしっかり全力で口元を手で防御するおれに対し、ラギはいつも通りの調子を思い出したようである。

 いや、いつも通りじゃない!あろうことか、おれのくちびるの代わりにとでも言いたいのか、手のひらに、ちゅうをかましてきたのである!しかもぺろりと舐めた!ぞわぞわぞわ、と背筋に電撃が走った。


 「落ち着いてくれラギ!いつものおまえはどこに行ったんだよ!?」

 「落ち着いてイマス。イヤ、興奮シてマスネ。モット早くに伝えレバよかった……はぁ…イマとても満ち足りた気分デス…」

 「変態臭いぞラギ!とても気持ちが悪い!!」


 手のひらの次は絡め捕られた指の一本一本にキスを落とされ、しかも何度も好きです、とかあいしてる、とか言われて、もう、なんだか、くらくらしてきた。


 「ごっごめんだけど、ラギ、おれ、ほんとに、おまえのことそういう風に思ったことないっていうか、ていうかおれ、あの、さっき失恋したばっかだし」

 「失恋にハ新シイ恋ですヨ、ボス。俺が責任もって忘れサセてアゲマス」


 それからラギはずずいっと身体を持ち上げて、おれを真上から見下ろした。

 ラギの口元はゆるく笑みを浮かべていて、やはり目はギラギラしていたが、おれはやっとそのギラギラの意味が分かった気がしたのだった。ギラギラはとても熱く、おれの全身を飲み込もうとしている。違う意味で、殺されそうだった。

 

 身体全身が熱い。殺されると思っていた先程と同じくらい、いやそれ以上の速さでどくどくどくどくと心臓が鳴っているのが分かった。くらくら、ぐるぐる、する。なんとかしてこの状況から逃れたいと思っているのだが、身体に力は入らないし、目の前のこいつが簡単には逃してくれないだろうと思った。


 「おれ、さっきまでおまえに殺されるって思ってたし……」

 「本当に心外デス。おれはジルと会った時カラ心奪ワレたというのに」

 「だっておまえ、いっつもムカつくことばかり言うし、子ども扱いするし、ずっと睨んでただろ……てっきりおまえはおれを殺す機会を虎視眈々と狙っているもんだと……」

 「イヤァ、俺ッテ好きな人はイジメていタいタイプなんでスよネ、ボスと出会って初めて知りマシたケド。あと、睨んでたンジャなくテ、俺の熱い想いがいつか届かないかナーと見つめていたんデス。それにジルはまだ小サカッタので、子ども扱いでもしないと自分をイロイロ抑えキレそうにナカッタっていうかー」

 「……そうだよおまえ出会ったころからほ、惚れてるってすごいロリコンじゃないか…あの時18くらいで成人してたよな……?」

 「恋に年齢など関係ないデスヨ、ジル。思えば長い道のりデシタ……再来月でやっと成人ですネ、とても喜ばシイでス……」

 「ちょっ近……!」




 こうしておれの、伝えきれず散った初恋の苦い想い出は、衝撃的すぎる人生初の告白とムニャムニャにだいぶ紛れることになった。

 おれとおれの右腕の攻防はその後他の部下が不審に思ってやって来るまで続いた。

 ムニャムニャが何だったって?……察してくれ。


 まあ、奴の「自称ボスの右腕」から、自称が外れたということだけは、記しておこう。



 ずっと完結しないまま置いておいたものだけに、なんとか締めることができてうれしいです!

 これから先ボスは初めての貞操の危機にびくびくすることになるでしょうwラギの方は一応子供には最後まで手を出さないと心に決めているようなので、再来月まではちゅー止まりです。でも誕生日が来たら遠慮なくおいしく頂かれそうです。

 本当は熱いムニャムニャまで描ききりたかったのですがムリでしたごめんねラギ。


 ちなみに書ききれなかったのですが、ラギがボスの座もまるごと頂くみたいなことを言ったのは、ジルがボスに向いていないと思っているのと、普通の女の子に戻りたいのではないかと考えているからです。基本的に2人には会話が足りていなかったので、これから先はちゃんと意思の疎通を図って真のボスと右腕として頑張っていくと思います。

 ヨルとその想い人の話も考えてはいるのですが……書けるかどうかは未定です。

 ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!


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