└ 出来ない宿題もある
「流れ星の願い方」番外編
ある夏の日のこと。
夏休みを目前に開催された球技大会。
やる気があるのかないのかわからない俺のクラスは早々に敗退して、暇な時間を持て余していた。
「郁ー、お客」
「はぁ? ……んなの、無視」
「いーくーちゃーん」
妙に低い声が聞こえたかと思うと、ずしりと背中が重くなる。
嫌な予感。
ものすごく嫌な予感。
「……郁、その女誰」
目の前に影が落ち顔を上げると、眉を顰めた帆夏が仁王立ちしている。
慌てて背中の女を振り落とそうとしたが、何故か離れない。
どうしろと言うんだろう。
この状況、ヤバすぎるのは確かだ。
やっと俊晴のことも片付いて、平穏な毎日が訪れたと思っていたのに。
「帆夏ちゃーん」
「へ?」
「郁と仲良くしてる? いじめられてない? 放置プレイされてない?」
「はぁ……?」
「お前、何言ってんだよ。つーか、誰だよ!」
背中に乗っていたのは見知らぬ女だった。
何処から侵入したのか、着ているのは見たこともない制服だ。
「私? 私は……誰でもいいでしょ。それよりこれどーぞ」
差し出されたのは白い紙。
それを受け取ると女はさっさと帰ってしまった。
「何だろね?」
「手紙じゃねーの? えーっと……ぶっ」
「ちょ、郁、私も見たい」
「見なくていいっ」
伸びてきた手から手紙を隠す。
帆夏が不機嫌になるのがわかったが、それも気にせず教室を出る。
─── 早いとこ、帆夏ちゃんの初めてを頂いちゃいなさいよ。
キオトというらしいあの女が残したのはそんな言葉だった。
出来ない宿題もある
(んなの無理だっつーの)
(何が?)
(ぎゃーっ)
♯sneeze様/09.08.21 提出
08月お題『作者から宿題です』より。