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NCT(New Cell Type) 近未来物語~  作者: オルソー
~序章 MRS9編~
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2話 出会った夜

今から1ヶ月以上も前。那珂湊高校は異能者を訓練しているだけあって民間、国から依頼も来る。入学してから1ヶ月間は基本的戦闘能力を学ぶ。そしてそれが終わったら晴れて依頼を受けれるのだ。こんなに本気で異能者を訓練させてるのは世界広しど、ここくらいらしいからな。他のとこは遊び半分でやってるらしい。ダメだろ。


「お?なんだこれ?」


通算二回目となる依頼を探していたら気になるのを見つけた。依頼書同士の間に隠れていて見つけにくかったけど。その依頼書にはこう書かれていた。


『夕刻。桜のある公園にて』


……どうする良知。差出人不明。しかし依頼書の判は押してある。……な?これ、正規の依頼なのか?果たし状だろどう見てもさ。

その後、もちろん他の依頼を探したが俺の実力で安全にできそうな依頼は無かった。



「うーん……。なんで来たんだろ俺……」


まぁ、匿名希望の依頼は少くないらしいし、きちっと依頼板に貼ってあったってことはなんか困ってるんだろうな。小さいことはもの探しから、大きなことは凶悪犯などを捕らえたりする。もちろん逮捕権はないのでそこからは警察さんの仕事だが。今の時間は午後10時になろうとしていた。夜はまだ冷え込む。場所は間違ってないかと考える。桜のある公園といったら、ここしか近くにはない。那珂湊高校から徒歩15分程度でつく公園。広くはないが滑り台、シーソー、ブランコ、そして入り口と公園の一番奥の二ヶ所にベンチがある。奥には大きな桜の木が一本立っている。もう5月なのでところどころにしか桜の花びらはついていない。入り口で突っ立ってた俺だが、とりあえず奥にあるベンチに腰を掛けた。真上にある桜を見上げた。夜の桜というのもなかなか趣があるなぁ、などと考えていた。



「うぃ~……。さむ!!」


あれから30分ほど待ってみたが一向に来ないので諦めて家に帰ってきた。ちなみに俺は地元を出てこの那珂湊高校に入学……。まぁ推薦で入ったんだけど。だから、一人暮らし満喫中なのだ。安いアパートを借りて暮らしている。とりあえず、けっこう冷えた体を暖めようと風呂へ向かう俺。風呂は寒いときほど心地良い。まず、湯船を溜めようとして風呂場に向かうと電気がついていた。


「あれ? 俺って電気つけっぱなしだったか?」


ちゃんと消したはずだけど……。まぁこれから気を付けるか。ガラリと浴場の戸を開く。


「……え?」


明らかに俺の普段の家の様子とは違う。風呂場には女子特有の甘いような香りが充満し、なにしろ俺の知らない人が、知らない美少女が風呂に入っていた。湯船に浸かっているので大切なところは辛うじて見えていない。下ろすと腰ぐらいまであるだろう長い髪を上に結ってある。と、ここまで彼女を把握しておいて…。大切なことに気づいた。やばい。これはやばいと。


「あー……。えっと……。お、お邪魔しましたぁー!!」


勢いよくドアを閉め慌てて風呂場を出る。そしてすぐ近くにリビングがあるのでそこへ逃げる。いや、俺の家だから逃げる必要はないんだが、なんとなくこうしてしまう本能と言うか……。しかしあれは ガラリ 誰だったんだ?そのなんか ドタバタ けっこう可愛くて雰囲気は少し幼げで バタン しかしスタイルは良くてそれで…


「こ、このド変態がぁー!!」


そうそう。脱いであった服。見てしまったけどうちの那珂湊高校の制服だったわ。


「うわっ! まて! とりあえず銃を仕舞え!」


それから俺は一時間ほど逃げに徹したのだった。



「あ。あんたが由来良知?」


「そーだよ。てか、あの変な依頼出したのお前か?」


「お前じゃないわよ。私は夜桜波方。あんたを探してたわ。」


お前呼ばわりするなと言っておいてそっちはあんた呼ばわりかよ。別に良いけどさ。


「そこはどうでもいい。てか、お前が夜桜ってのは知ってるよ。でも……」


夜桜波方。入学してから1週間後になぜか転入してきた。同じ10組のやつだ。クラスではとても物静かで10組の中でも比較的普通なやつかと思ってたんだが…。


「猫被ってたか……。」


「はぁ? うるさいわね。そんなことのほうがどうでもいいでしょ?」


うん。確かにそうだ。間違いない。間違いないけどこの変わりようにはびっくりだね。俺は。


「で、なんだ? 俺を探してたって。なんか用か?」


正直今は夜11時。明日も早いから寝たいんだけどなぁ……。


「そうそう。今、ニュースとかで話題になってる。と言っただけでわかるかしら?」


そりゃわかる。近頃、多くの人がなぞの変死体となって見つかっているのだ。共通点はほとんど無く、死因もさまざまだった。


「変死体のやつか? 知ってるが俺にはなんも関係ないぞ?」


「関係ないってこともないんじゃない? ……未接種者さん?」


「な、なんでそれを……?」


未接種者。人類強化型細胞NCTを接種していない人。もうこの世で10人しか居ない人間のうちの一人。それが俺なのだ。


「な、なんでお前……。夜桜がそんなこと知ってるんだよ?」


率直に思ったことを聞いてみる。ちなみに言い直したのは夜桜がにらんできたからである。いろいろな事情があり、俺はまだNCTを接種していないしこれからも接種しないと思う。今はそれよりこいつ、夜桜波方がなぜ俺の事情を知っているかが問題だ。今、NCTの接種はほぼ義務付けられていると言っても過言ではない。今でも産まれた子供に産まれたときからすぐにNCTは接種されているのだ。そして、こいつは考えていなかったことを言った。


「なんでって……。私もその未接種者だからよ」


「な、なんだって!?」


日本で未接種者はほとんどいない。全世界で10人しかいない未接種者がこんなことで会うなんて……。


「だから、あんたを探してたってわけ」


そこで俺は少しひっかかった。


「まてまて。俺を探してたなら、なんであんなめんどくさいやりかたをしたんだ?」


依頼板なんて1年の俺が見る確率も少ないし、(今日はたまたま見てみたが)俺より先に誰かが取るかもしれない。教室で直接言った方が安全かつ手っ取り早いのに。


「あー。あれね。あれはまず、きょうしつでそのことをしゃべるとクラスから注目を浴びちゃうし、あんたも理由を言わなきゃ来ないでしょ?」


確かに。いきなりしゃべったこともない子にいきなりしゃべりかけられ公園に来て。なんて言われたら理由が知りたくなる。ましてや、今回のような秘密にしゃべらなきゃならんことだとこうする他なかったのか。


「でも、俺があの紙を取るって確信あったのか?」


そこが一番の疑問だ。見にくいところにあったから、当然見つかりにくいし俺が見落とすかもしれない。


「わかってたわよ。だってあんた……」


この次の言葉でこいつがどんなやつかわかった。


「いつも依頼板の前通ったらその一点を見てたもの」


あぁ……。なるほどね。こいつ……


「ストーカ……がぶ!?」


夜桜の回し蹴りが鳩尾に直撃し、俺はそのまま意識を失った。

更新ペース、遅くて本当に申し訳ありません。

学生の身でもありますので・・・。できたら1週間に1話ペース、ゆっくり行きたいと思っております。

ご感想。アドバイス、誤字脱字などご指摘お願いいたします。

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