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NCT(New Cell Type) 近未来物語~  作者: オルソー
~序章 MRS9編~
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17話 強制連行の行方

「……で?」


「……で? とは?」


あの後、俺は任意同行と言う名の強制連行され自販機の前にあるベンチの正面に立たされている。座らせてすらもらえなかった。


「とぼけないで。試着室のことよ。なんで使用中の! 女性用水着売り場の! 試着室から! あんたが! 出てきたわけ!?」


! ひとつにつき一回俺の足を蹴ってくる夜桜。ベンチにどっさりと座っており、その横には祇園と神輿もいる。


「あ、あのな! あれは不可抗力だって! バランスを崩してだな……」


と、俺が弁論し始めると


「へぇ、言い訳するんだ」


「……男らしくない」


「……」


あんたが理由を聞いてきたんじゃなかったんですかね? 神輿にまで言われるし祇園はずっとうつむいたままだし。これはどう考えても俺の責任かな……。


「えっと……。その、ごめん……。覗く気なんて無かったんだよ」


ここは素直に頭を下げよう。いくら不可抗力とは言え、俺に非があったことは確かだ。と、頭を下げていると……


「……ぷっ」


誰かが笑いを吹き出す音が聞こえた。不思議に思い顔をあげると


「あっははは! あー、本気で謝ってる! バカみたいー!」


と、腹を抱えてこちらを指差し転げ回らんばかりに大笑いしている夜桜。あ、あれ?


「……馬鹿正直すぎて面白くないですね」


神輿も微笑む感じで見てきている。なんだ? この変わり具合は……


「ま、まだわかってないみたいだね。良知君。本当に昔から鈍感と言うかなんと言うか」


祇園までもが本当におかしそうに笑っていた。こうなるとさっきとは違う意味で怖くなってくる。なにがどうなったんだ?


「あのね、良知。祇園はそんなに怒ってないわよ? でもここに来る途中どうせならってことで三人で口裏あわせてたのよ」


ここでネタばらしをする夜桜。そ、そんなこといつの間に……。俺はどんな折檻が待ち受けているのかと不安で仕方がなかったのに。


「ごめんね。良知君。キミが必死になってるの見てたらイジワルしたくなっちゃって」


手を合わせて謝るポーズの祇園。いや、俺が謝る立場なんだけどな……。


「でもね、ひとつ僕は傷ついたことあったかも」


「え?」


祇園は俺に寄ってきて耳元で囁く。う~ん。俺またなにかしたのかな……。などと考えていると


「覗く気なんて無かった。って……。少しくらい興味持ってくれても良かったんじゃない?」


「……うぇ??」


突然のことに変な声を出してしまう。そんな俺を祇園は見るなり、くすりと笑い夜桜、神輿と共にどこかへ言ってしまった。




結局、俺ひとりになってしまったので色々なところを見て回る。レジャー用品、本屋、食品売り場と様々なものを売っている店がある。 その食品売り場に差し掛かったとき、俺の携帯が鳴った。理事長からだった。


「あ、はい。由来です。どうしたんですか、理事長?」


もしかして向こうでAキラーが暴れだしたとか、そんなことかもしれない。そしたらMRSが不在してる中、那珂湊高校の生徒や教員のみで戦える相手なら良いが最近力をつけてきてるAキラーも多い。そんな心配をしていた。


「やぁ、お楽しみのとこ悪いね。実はAキラーが出たんだ」


抑揚なくしゃべってくる理事長。俺の予感が的中した。


「えっ!? 大丈夫なんですか? それって!」


すぐに夜桜に知らせようとしたがまた理事長が言った。


「あぁ、もうこちらで片付けたからさ。なかなか手強かったけど。一応君たちに報告をと思ってね」


「……え? あ、はぁ……」


「あ、後。君から頼まれてた物は出来たから君の家に届けておくよ」


「あ、どうも……」


なにがなんだかわからずその場で立ち尽くすしかない俺。それに本当になにもなかったかのように違う話題を出したのでついていけなかった。誰がいったい倒したのだろう?と、疑問が浮かんできたが


「あ、こんなとこに居たの。さぁ、買い物済んだし帰りましょ……。って、誰と話してるの?」


夜桜、神輿、祇園が現れたので会話の方に集中する。


「あ、あぁ。理事長だよ。なんかAキラーが向こうに出たらしくてさ……」


と、俺が事情を話すと夜桜は


「へぇ。またあの人がやったのかな。ま、帰りましょう。どうせ理事長との通話は切れてるでしょうしね」


夜桜、神輿も何事もないように帰ろうとする。夜桜の言った通り理事長との通話は既に切れていた。




「……理事長。失礼します」


「おや、どうぞ」


理事長の返事を待ってから俺たちは理事長室に入った。するとひとりの女性が理事長の横に立っていた。前髪は目にかかる程度の長さで揃えてあり、横は肩くらいまで伸ばしている。肌の色は神輿のそれに似ている真っ白。雰囲気的に静かそうで落ち着きさを放っている。俺と視線が合うとごく自然に笑顔を見せてきたので俺は会釈するしかなかった。


「あぁ、そう言えば良知君、琥珀君には紹介してなかったね。この人がいつも君たちMRSをサポートしてくれている……」


「2年8組の南淡郁恵なんだん いくえです。御二人とも、これからよろしくお願いしますね」


小さくて他人をも落ち着かせるような声色。ゆっくりとしたペースでしゃべっている。


「あ、俺は由来良知です……」


「えぇ、異能無効化と時空操作の両方の力を持っているイレギュラーな子ね」


ある程度、理事長から聞いているのだろう。自己紹介とかは要らないようだ。祇園に関してはまだ情報が足りない、と言うかほぼ無いだろうから自己紹介は必要だと思うが。と、俺と同じことを考えていたのか祇園が口を開いた。


「ぎ、祇園琥珀です。えと……」


「君が祇園君ね。思ったよりずっと可愛いわね。こんな子が男装しててもすぐ女の子だってわかりそうなのに。ね、由来君?」


男装のことも聞いたのだろうか。祇園は勢いよく理事長を睨み付けるがフルフルと首を横に振った。そして後ろから二つのため息が聞こえてきた。


「……はぁ。郁恵さん。新人を驚かすのはそれくらいにしてください」


「……相変わらず話長い人」


既に知っている夜桜と神輿が割って入ってきた。


「あら~。波方に游。居たのね~」


この人も相変わらずホワホワとしたしゃべりで夜桜と神輿に語りかける。この二人もこの人が相手だと調子が狂うらしい。

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