16話 真実、事実
「う、うん……」
祇園が頷いたので俺たちはとりあえず店内を適当に回ることにした。何度か夜桜は見かけたがすごく真剣に水着を選んでいたのでこちらにすら気付かなかったのでそっとしておいた。
「そういや、なんでお前は男のふりをしていたんだ?」
ずっと疑問に思っていたことをこの際、聞いてみようと思った。なぜ男のふりをして、俺たちを挑発してきたのかそれが聞きたかった。すると祇園は
「……そうだね。迷惑かけたし言うよ。……僕の家、祇園家は男にしかこの力を継がせていないんだよ」
胸に手を当てゆっくりと噛み締めるように祇園が話す。この力とは楊若仙のことだろう。祇園の家は昔ながらの家なので男にしか継がせないというとこにも納得がいく。さらに祇園は続けた。
「でも僕は父にNCTを接種することを許されなかった。ただの、力の無い人間だったんだ」
……なかなかやっかいな問題らしい。確かにそれくらいの事情がないと性別を偽らないだろう。
「それが僕は何か嫌でね。みんなにできることが僕にはできなかったんだ。だから僕は父が亡くなった後、自分で研究して祇園家の力を手に入れたんだよ」
なるほど。そんな事情があったのか……。確かに祇園の性格は真面目で努力家だ。それであって頭が働く。そんな祇園だからこそ独学で祇園家の力を手に入れることができたんだろう。
「……そうなのか。色々お前も大変だったんだな」
と、祇園に言う俺。斎のことは許されないことだった。しかしこんな祇園を見ていると俺は祇園があんな残酷なことをするようには見えないのだ。きっとなにか裏があるのかも知れない。だが、現段階ではそれを知る手がかりすら無いのだ。だから……
「悪いな。嫌なことを思い出させちゃって。さ、水着選ぼうぜ」
わからないなら親睦を深めるまでだ。今では同じMRSの仲間なんだ。仲間になら話せることだってたくさんあるはずだし、なにより早く祇園にもこのMRSに慣れてほしい。そう俺は思っていた。
それからしばらく水着を二人で選んでいた。俺は女の子の水着なんてよくわからないので基本的に祇園に付いていっただけだったけど。
「あ、これ……」
突然祇園が声を出し立ち止まる。その目の前にある水着に釘付けらしい。それは上と下が分かれておらず、フリフリの飾りがついた白い水着だった。しかし祇園はそれを見なかったことのようにして、過ぎ去っていった。
「お、おい。祇園?」
慌てて俺が歩き出す祇園を止める。
「ん? なにかな?」
「いや、なにかもなにもあの水着、気になったんだろ? 他に良いものでも見つけたのか?」
それなら別なのだが明らかに良いものを見つけたというような表情ではない。なので俺は気になって聞いてみたのだ。
「あ……。あぁ、あの水着ね。いや、ちょっと目に留まっただけだよ。あはは……」
笑っているが明らかに作り笑いの祇園。こいつ……ひょっとして……
「あー、祇園? 間違ってたら大変失礼だが、たぶん合ってると思うので言うぞ?」
「え? あ、どうぞ……?」
俺がいきなりそんなことを言ったので祇園も少しなりに驚いたのだろう。少しびっくりしていた。
「……もしかしてお前。女子っぽい水着とか遠慮してる?」
「うっ……」
うん。図星らしい。こいつは男として育ってきたからいきなり女物の水着は難易度高かったのが知れない。そう言えば前見た女子制服でもだいぶ恥ずかしがってたからな。
「まぁ、抵抗があるのもわからんではないがせっかくの海だぞ? 好きなもん選んでけって」
俺は水着なんて気にしないがオシャレしたい時の十代乙女。そこらは譲れないなにかがあるんだろう。いや、知らないけど。
「そ、そかな……。でも、似合わないし……」
なんてまだブツブツと一人言を言っていたので俺はさっき祇園が見ていた水着を手に取り
「ここは水着売り場だ。もちろん試着室も備えてある。これを使わない手は無いだろう?」
と、近くにあった試着室を指差しながら言う。一回着てみないとわからないこともあるだろうしな、とあとから付け加えた。すると祇園はうむ~……。と一回唸り水着を俺から取り試着室へと入っていった。
「……おい? 祇園どうした??」
女子の水着の試着とはこんなに時間がかかるものなのだろうか? もうなんだかんだで30分近く試着室に入ったまま出てこない。そろそろこの空間、一人でいるのに耐え難くなってきたんですけど……。
「おーい……。祇園さーん?」
全く返事がない。うんともすんとも言わない。もしかしたら誰も入っていないんじゃないかと思うぐらいに反応も気配も無い。
「……ま、あいつはあいつなりに悩んでるのかな?」
ずっと立ちっぱなしで疲れたので試着室の横にあった棚に俺は少し体を預けようとした。……すると
「うわっ!?」
その棚が突然後ろに動き出した。きっと棚の足にローラーが付いていたのだろう。いきなりのことに驚いた俺はとっさに棚の横にあった布を掴もうとする。……しかし掴み損ねて前傾姿勢のまま倒れる。するとその掴もうとした布へ突っ込むわけで。その布とは……。
「いってて……。……あ」
「……。」
祇園が入ってる試着室のカーテンだった。もちろんカーテンの向こう側まで俺は倒れてしまった。まだ着ている途中だった祇園はいきなりのことに思考回路が停止しているのかポカーンと口を空けこちらを見ている。対する俺も同じような顔だろう。
「えっと……だな。祇園。これにはふかーいわけが……」
特に無いがここは言い訳を考えておかないよヤバイ。まぁ、言い訳したとこで許してもらえそうにないけど。
「い、いつまで見てんのよ! 早く出てけー!!」
「わ、悪い!」
ダッシュで試着室を飛び出す俺。ちなみに祇園の体は神様のなんかで大切な部分は見えなかった。うん、良かった良かった。……良かったって!
「あ、あんた……」
一人で必死に祇園の体の記憶を消そうともがいていた俺に声をかけてきた。俺は集中を途切れさせたくなかったので
「はい? すいません。今忙しいので……」
「な・ん・て?」
その声に聞き覚えがあり、その人物の顔が浮かんできた瞬間、全身に冷や汗をかいた。
「いえ……。なにも……」
振り返ると後ろには鬼の形相の夜桜と、静かに遠くから俺の頭を狙っているだろう神輿が居た。
私情により、だいぶ空いてしまいました……。申し訳ありません。
これからもペースは遅いですがよろしくお願いします!
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