12話 力だけでは勝てない
俺が祇園の成長の中で一番驚いたのが精神力の強さだ。いつか言ったように異能は精神力が必要となっている。精神力を消費し、異能を使っているのだ。戦闘が始まってから既に10分以上祇園と俺は異能を使い続けている。ちなみに祇園も天性の異能者らしく、俺や夜桜達と同様に精神力を多く使う。それなのに俺はほぼ限界に達して傷も増えてきた。一方の祇園は
「ずいぶんと苦しそうだね。早く楽になっちゃいなよ」
「はぁ、はぁ……。そうだな。お前が早く倒れてくれたらこっちも楽なんだがな」
涼しげな顔でこちらを挑発する余裕までも見せている。
「それじゃ、そろそろ終わりにするよ。じゃあね、良知君」
また楊若仙を数枚取りだし俺に向かって軽く投げる祇園。そして
「攻撃弐型! 盛者必衰の理、猛者の召喚!」
次に現れたのは刀を持ち、鎧を来た武士が3体出てきた。これはいわゆるゴーレム、操り人形のようなものだ。これは過去に戦った時には使っていないのでどんなものなのかはわからないが……
「いずれにしても異能だろ! 俺に異能は……っ!?」
ヒュンッと、不快な音が耳のすぐ横を通る。間一髪で避けたが……。この持ってる刀
「ほ、本物かよ!」
異能は防げるが真剣なんて防げない。どうすると考えていたのがいけなかった。一瞬隙を見せてしまった。もちろん祇園がそれを見逃すはずもない。
「……カハッ!」
一気に吹き飛ばされる俺の体。どうやらあのゴーレムに突き飛ばされたらしい。肺の空気が一気に抜ける。そして壁に当たり止まる。
「……っ。よ、良知!?」
俺がぶつかった壁のすぐ近くに夜桜がいて、衝撃の音で目を覚ましたらしい。
「……お、おぅ。夜桜。無事か?」
「私の心配する前に自分の心配してよ! あんたこそ大丈夫なの!?」
珍しく俺のことを心配してくれる夜桜。だが、そんなことで嬉しがっている暇はない。
「……なんとか異能で急所は外させた。でも、ちょっと動き回るのはキツいかもな」
下手すりゃ肋骨の何本かは折ってるな……。しかし、困った状況になった。夜桜と俺の距離は3メートルほど。縄に縛られている夜桜の元へ行ってほどくなんてことはできない。動こうものなら祇園のゴーレムで今度こそ殺される。ほどいたにしても夜桜はシュバルツを取られているからなにもできないし。
「やぁ、感動の再開はそこまでだ。良知君。ようやく僕の無念も晴らせるよ」
ゴーレムの向こうから祇園が喋りかけてくる。立ち上がろうにも力が入らず座り込んでしまう。
「へっ。そんなの俺の知ったことじゃねえな。俺はこの通り動けない。……残念ながらな」
半ば、諦め口調で言う俺。仕方がない。動けないんだしな。
「へぇ、けっこう潔いんだね。昔はもっとしぶとかったはずだけど。ま、いいや。じゃあね、良知君」
そう祇園が言うとゴーレムの一体が刀を振り上げ俺に切りかかってきた。後ろの方で夜桜の声が聞こえる。……ごめん。助けれなくて。そう俺が心の中で呟いた次の瞬間。
「……ぐっ!」
視界が揺れる。しかし……痛くはない。すると目の前のゴーレムが倒れる。そこで俺はようやく俺の視界が揺れたのではなくゴーレム自体が揺れ倒れたのだと気づいた。
「……なっ!? なんだ!!」
驚いた声を上げる祇園。見ると夜桜もポカンとしている。するとそこに無線が入ってきた。
『……聞こえますか? 良知さん』
「そ、その声は神輿か!?」
神輿游。MRSの天才狙撃手。いったいどこに……
『そこから南南東約2.5キロメートル先のビルから狙撃しました』
淡々としゃべってくる神輿。2.5キロメートルって……。狙撃できる範囲なのか?
「でもなんで今になって? いや、ベストタイミングだけども……」
居るならもっと早く無線を入れてくれれば良かったのに。と思いつつ聞くと
『推測ですがそこにいる祇園琥珀が展開した術により無線妨害されていたのかと。そして良知さんを倒すことに気をとられたのでようやく無線も使えたと考えれます。あと、5階であなたを助けたのも私です』
「そ、そうか……。ありがとう」
なんか神輿って無線越しだとすごくハキハキ喋るな……。
「ん? そーいや、ずっとそこにいたならなんで俺が吹き飛ばされそうになったときに狙撃してくれなかったんだよ?」
と、疑問を言ってみると
『……私にも死角はあります』
ちょっとだけ怒ったように言ってきた。狙撃手にとって死角という単語はプライドを傷つけるのだろうか?
『では残りを……』
そう言って無線から乾いた銃声が2回したと思うと残り2体のゴーレムが次々に倒れた。
「そうか。君にも仲間ができたんだね。そこにいる夜桜さんとあと1人。姿の見えない仲間が」
ゴーレムを倒された祇園が俺を見ながら言ってくる。ちなみに神輿のナナトスは完全に対Aキラー用に作られているため普通の人間、生命体には効果がない。ゴーレムはAキラーではないが怪物と類いされたから効いたのだろう。
「ま、いろいろと成り行きでな。俺も変わったんだよ。昔みたいに孤立してるわけでもないんだ」
「……。そう。よくわかったよ。でも、君らしくないよね。こんなにも長々と話をするなんて」
少し眉を寄せる祇園。俺はそうか? と言ってから
「どちらにせよ、動けないからな。動くのは口と、頭だけさ」
まさに手も足も出ない状況。自嘲気味に俺が言うと
「そうだったね。なら……。ここで終わりにしようか!」
すると祇園が術式を展開し、あの高水圧の水が俺に向かって一直線に飛んでくる。そしてその0.数秒後に俺の体は飛んだ。貫かれたのではない。横に飛んだのだ。
「くっ! ……って、痛いな! どうやって助けてくれるのかと思ったら蹴るのかよ!」
本日何回目かのローリングをした俺。そして
「しょうがないでしょ。シュバルツないんだし」
と、夜桜が仁王立ちしていた。ま、助けてくれたことには感謝だな。危機一髪だったけど。
「なっ!? なぜ君が!? 身動きとれないはず……」
信じられないという表情をして驚く祇園。こいつはこいつで驚きっぱなしだな。
「あぁ、あの縄? 今度はもっと強くて太いのにしたら? こんな細いワイヤーで簡単に切れたもの」
と、本当に極細のワイヤーを手にとって見せる夜桜。もちろん始めから隠し持っていたわけではない。
「……くっ」
そして悔しさを隠さずに歯噛みをする祇園。そしてこれが俺たちの反撃開始の合図だった。
NCTも12話、どうでしたか?
次回もお楽しみください!
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