10話 過去の栄光
祇園編は長くなってしまいそうです……。
すいません。
しかし、楽しんでもらえると光栄です!
今から2年前の夏。当時、中学2年の俺はごく普通の中学に通っていた。2年前だがすでに新細胞の接種はほぼ終わっていたので全ての生徒、教師、事務員は異能者だった。その中で季節違いの転校生がやって来た。
「今日は転校生を紹介する。……祇園君。入って」
担任の男教師が促すとガラリと戸を開けて入ってきた。それまでざわめいていた教室が一瞬で静まり返った。その理由は……
「どうも。祇園琥珀です。これからよろしくお願いします」
男子も女子もその転校生。祇園琥珀に見とれていたからだ。これが、俺と祇園琥珀の出会いだった。
朝のホームルームが終わったあとの休み時間。もちろん教室は……。いや、学校全体が謎の美少年転校生、祇園琥珀を話題にしていた。廊下から遠巻きに見る者、あからさまにアタックしにいく者、友達からはじめようと慎重な者、様々だった。対する俺は
『……馬鹿らしい』
そう思い横を見ていた。人数の関係もあり一番後ろで隣がいない教室の端の絶好なポジションを自席としていた。しかし、そのせいで隣に祇園琥珀が座ることになったのだ。
『まぁ、俺には関係ないけどな』
当時の俺はだいぶ冷たい性格でほとんどしゃべらず表情も顔に出さないやつだった。それゆえ、他人に興味はなかった。
今日もようやく授業が終わり帰宅の時間。部活はやってないのですぐに帰れるのだが……。帰ろうとげた箱に向かうと
「あれ? 」
靴がなかった。隠されたというわけでもなさそうだ。なぜなら靴の代わりに手紙がおいてあったからだ。出した相手は
「……祇園琥珀」
その後、指定場所があったのでそこへと向かった。
「遅かったね。由来良知君?」
「あぁ、別に急ぐ必要もないと思ったからな」
指定された場所は屋上だった。転校初日によくもまぁ屋上に誘い込もうと思ったな。少し感心するよ。
「どうでもいーけど、なんで靴とったんだよ?」
誘き出すためなら別に手紙だけでも良かったと思うが……。
「そうしないと、君は帰っちゃうでしょ?」
うん。確かに帰りそうだ。たぶん帰るな。
「良い作戦だな。で? ただなんの用事もなくこんなとこに呼び出したけじゃないんだろ?」
そうだったね。と祇園は言ってからこちらを改めてしっかりと向き、こう言った。
「僕のチームに入らないかい? 未接種者さん?」
「!?」
俺は思わず数歩下がってしまった。なぜだ?なぜ転校初日のこいつが俺のことを、俺が未接種者だということを知っているんだ?
「ち、チームだと? あいにく俺は、群れることが嫌い……」
「冷静を装ってるけどバレバレだよ?」
くくく……と、小さく笑ってこちらを見る祇園。腹立ってきた。
「ふざけるな。まずなんだチームって」
「チームはチームだよ。仲良しが集まって楽しく行動、楽しい毎日が待ってるんだよ?」
両手を大きく広げておおげさにアピールする祇園。こいつにはなにを話しても無駄だと悟り俺は
「さっきも言った通り、群れるのが嫌いなんだ。他を当たれ。祇園琥珀」
突き飛ばすように良い放った。そして屋上の出口に向かう。祇園は追ってきたり待ったをかけたりはしなかったがなにか後ろで呟いたように思えた。
『……まったく。転校初日から色々とやりやがるな。祇園。まずあんな馴れ馴れしいとは思わなかったぞ』
少々、俺はイラつきつつ靴を取り返し(屋上の隅っこに置いてあったから持ってきた)すっかり遅くなったが、げた箱に靴を置き学校を後にしようとすると……
「あ、良知。遅かったじゃない?」
不意に後ろから声をかけられた。びっくりして後ろを振り返るとそこには
「……なんだ、斎か」
そこにはクラスメイトの久遠斎が立っていた。背は150と女子の中でも低く、体型はスラリとしていてなかなかカッコいい。地毛である金髪が短く揃えボーイッシュなやつだ。そして昔に俺がプレゼントした赤と青のミサンガを手首につけている。こいつは俺の昔からの知り合いでほとんど俺が学校でしゃべるのはこいつくらいだ。昔から気が知れてるので絡みやすい。仲間って感じだ。
「へ? なんだって……。もしかしてこれを待ってたの?」
ピンッと小指を立てニヤニヤしてくる斎。めんどくせえな、と思いつつ
「俺がそんなのを作る気があると思うか?」
「いや? 全然?」
と、いつものやりとりを交わしていっしょに下校道を歩くのだった。
「ところでさ。良知」
突然、斎がしゃべりかけてきた。手が寂しいのか左につけているミサンガを右手でいじりながらこちらを向いて
「なんで今日はこんなに遅かったの? 僕は生徒会の仕事が終わって帰るとこだったのに……」
斎は生徒会に入っており、その仕事が終わってから帰宅した。つまりけっこうな時間が経っていたということだ。
「いや……。俺にも色々あってな」
うまい言い訳が思いつかず言葉を濁しただけとなってしまった。こんな言い方をされたら誰でも気になるわけで……
「余計気になるよ! 教えてくれてもいーだろー!」
だだっ子のように斎が俺を掴んで揺らしてくる。もうすでに斎の家には着いているのだがこの様子だと言うまで帰してくれそうにない。弱ったな……と思っていると
「おいおい……って。ん?」
ピチョンと頭になにか液体が当たったような……? 空を見上げてみるとまさに雨が降ってきそうな天気で……少し雨も当たってきた。これは幸いと思った俺は
「あ! 傘持ってねーや。早く返るわ! じゃーなー」
そそくさと退散した。百計逃げるにしかず、だったか? そんなことを思いつつ全速力で走る。
「あっ! ……もう。また明日聞くからね!!」
と、斎が後ろから叫ぶ。明日はどうやってごまかそうか考えながら帰宅を急ぐ俺だった。
新キャラ設定は難しい……。
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