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一人だと分からないこれ

「おはよう……」

「おはようございます。咲音様」

「咲音様は朝食はパンですか、ご飯ですか」

「……パン」

咲音様は寝起きだからか眠そうでそのまま黙ってしまいます。料理を続けながら1晩考え続けた結果を報告することとします。誰かに話しておきたい気分なのです

「僕のこれからの方針について考えてみたんです」

味噌汁はつくってしまったから、咲音様だけ洋食にしよう

「僕の理想は普通に友達や家族を過ごしていくっていう、それだけだったんです。実際は一人寂しく机に突っ伏してましたけど」

味噌汁の出汁用の鍋とやかんを火にかけ、鮭を2つグリルで焼きます。そして、大根と人参とトマトとキャベツをそれぞれ適量切ります

「飼殺しが1番僕にふさわしいと思いました。これまで何もしてこなかった僕には一生何もできない、だから何もしないのが似合ってるって思いました」

出汁の昆布をとり、鰹節をいれ、食パンをトースターに入れ、粉末にしたコーヒー豆からコーヒーを抽出します

「…………ん」

「でも、僕らしい僕は僕が嫌いな僕なんです」

鰹節を取り出し、出汁を2つに分け、一方には大根、ニンジンを入れ、一方にはニンジンとキャベツを入れ、ウインナーとベーコンをフライパンで焼き、サラダを盛り付けます

「でも、国のために働いたからって僕が望むものが得られるかわからない。僕は自由なんていらないんです。ただ……ただ…………僕が欲している何かが……一体なにがほしいんでしょうね。何を望んでいるんでしょうね。自分のことすらわかっていない」

「……やりたい事無いんなら、私の仕事の手伝いでもしてみる?」

「それはいいかもしれませんね」

乾いた笑いを浮かべながら、、鮭を取り出し、コンソメスープにコンソメを入れ、ベーコンの上に卵を落とし、味噌汁に豆腐を入れ、焼けたトーストを取り出し、ご飯をつぎ、抽出したコーヒーをカップに注ぎ、味噌汁に味噌を入れ、マーガリンをトーストの隣に盛り付けます

「一晩考えて出した答えが結論を保留する、だったんですけど咲音様の手伝い……悪くないかもしれませんね」

「うん、料理の手際が良いというか活き活きしてるね。私の仕事の手伝いよりこっちを…………」

「お?なんか部屋きれいになってる」

筒井さんが起きてきたみたいです。相変わらず禍々しいオーラを放っています。

「夜中、今後の事を考えていたら寝れなかったんで掃除しておきました。味噌汁の濃さはこのくらいでいいですか」

「答えは出たのかな?んーおじさんはもう少し薄い方がいいかな」

筒井さんは表面上は気さくで良い人?と感じますが、やっぱり笑顔とオーラが禍々しい。悪霊でも身に纏ってるんじゃないでしょうか

「わかりました。次から薄くします。答えというか、咲音様の手伝いをすることにしました」

「龍吾君の任務は共同限定ということだね。面倒だけど向こうとは話は付けておくよ。……咲音はなにをしてるんだい」

咲音様は眠そうに座っ……あれ?何処に行ったのでしょう。あ、帰ってきました。小さな体でズンズンとこちらに進攻してきます

「……味見」

半眼で睨みながらお玉を要求してきます。何故睨まれる?

「………………美味しい」

「よかったです。では早くついで温かいうちに食べましょう」

お盆に一気に乗せ運び並べの繰り返しを3往復でちゃぶ台に食事を並べる

「ねえ、龍吾。隣の部屋がきれいになってたんだけど」

「掃除しておきました」

寝れませんでしたから

「洗濯できたりする」

「はい」

できないと溜まります

「毎日3食作ってた?」

「昼はお弁当ですけど」

「皿洗い」

「料理するんだからしますよ」

「買い物」

「普通出来ますよね」

「家計簿」

「一応、つけてました」

「ゴミ出し」

「毎週火曜と金曜です」

「ご近所付き合い」

「僕に社交性はありません」

怒涛の質問ラッシュに舌がついていきません。何が咲音様を奮い立たせるのか。

「うははは、勝ってるの社交性だけじゃないか。味噌汁もいつもより旨かったし」

筒井さんが咲音様の肩をたたきます。僕が咲音様に勝てるわけがありませんし、社会性がないだけで十分駄目でしょうよ。あと、味噌汁が、え、何?まあ、美味しいのなら何よりです。

「…………ふふふふふふふ」

「はははは?」

何故か怒っています。何故か僕の両肩をつかんで笑ってます。僕も無理やり笑ってみますが別に可笑しくも楽しくもありません。そうしていると、いきなり肩から手を放し、手のひらを僕の胸に当てて上目使いで

「今日から掃除洗濯料理その他の家事全部やってね。それができたなら、私の手伝いについてきてもいいよ」

と言いました。こんなに近くて可愛い表情をしているのに何故か寒気が襲ってきました

「っふ。毎日のことだもの。例えすることが出来ても継続できなければできないのと同じなの。私もできな」

「もちろんやります」

僕にできることがあるなら、例え誰でもできることでもしましょう。発症前もやっていたし、喜んでもらえる分モチベーションは上がります。咲音様が見てないからって筒井さんは箸で鉛筆回しをしないでもらいたい

「いことはないけど…………そう、やるんだ。毎日なんだよ。できるのかなあ」

「咲音様に喜んでもらえれば家事くらい頑張れますよ。……冷める前に食べませんか」

「家事……くらい……ね」

「お、もう終わった?じゃあ、いただきます」

筒井ィ……さんのおかげでようやく朝食を食べ始めることが出来ます。筒井さんは「味噌汁うまい、鮭柔らかい、コーヒーまでなんか違う。全部すごい」と褒めてくれてすごく嬉しかった。しかし、咲音様は黙々と少しずつ食べています。洋食の方は何か失敗したでしょうか。心配になって見てみると目を逸らされた。まずい、やってしまったかもしれません。2人とも完食してくれたのですが……

「咲音様、何か不味いものでもありましたか」

「ううん、いつもより美味しかったよ。ありがとう」

そう褒めてくださった後、何かをつぶやきながら部屋から去られました。どこか投げやりな作り笑顔が気にかかります

「何か悪いことでもしてしまったのでしょうか」

「ああ、あいつ自信満々にやってたからなあ。いつも偉そうに『ふう、しかたないなあって』」

やっぱり悪いことしてしまったんだ。早く謝れば許してくれるかもしれません

「いや、待とうか」

筒井さん!?

「離して!こういうことは経験的に早めに解決した方がいいんだ」

「多分ん、君の経験則ではロクな事にならないだろ」

たしかに学校では最後までぼっちだったけれど

「咲音はたしかに傷ついてはいるが、お前は悪いことやってないだろ。悪いことをしてないのに謝ると信用を失うことになるから。経験的に」

……でも……多分嫌われた

「味噌汁用の出汁でコンソメスープ作ったから怒ったんだ」

「ふーん……コンソメスープに材料の臭みが全く出てなくてうまい。部屋には埃一つ落ちてない。全く、龍吾君は女性のハードルを上げるというか、独身女性から既婚女性までのすべての女の敵だな」

全人類の半分が敵か……それはボッチにもなりますよね

「でも、ぶっちゃけ動揺してるだけだから頭冷やせばなるようになるさ」

格好よく僕に指をさす筒井さんに時間が解決してくれるのかすごく不安になったのです

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