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3年目に問い詰められるあれ

ぼーっと何も考えていないと知らないうちに寝てしまっていたようです。それに気づいたのは柔らかくヒンヤリとした手の感触と少し眉が下がったパッチリつり目に遭遇したからで、びっくりして掛布団に潜ったらそのままの状態で告げられました

「とにかく、早く来なさいよ。じじいの説教はしつこいわよ」

鋭く放たれた言葉に意味不明の恐怖が走って反射的にふとんから飛び出しました。呆れたオーラを出す同居人を追いかけて3歩後ろをついて歩きます

「筒井さん、僕はどんな用事で起こされたのですか」

なぜ筒井さんなのかというと表札が筒井だったから。推理とか、かっこいいものではない

「筒井?私の苗字、神変」

あちゃー。親子じゃないんだった。僕と同じで連れて来られた人なんだった。でも、

「僕、それ初めて聞きましたよ」

「聞かれなかったからね」

「なるほど。それはそーですねー」

ははは、と二人で談笑しながら歩いていると居間につきました。中にいたのは坊主で眉毛が太い、和服を着たおじさんでした

「…………」

「……えーっと、君は何をしてるのかな」

神変さんに隠れているだけですが……ああ、神変さんの背中見てると落ち着くなあ

「ははは、咲音

さきね

は懐かれてるなあ」

そうやって笑顔で笑っているが、異様な雰囲気をまとっています

「それにしても、その反応は新鮮だなあ。龍吾君、面白い」

愛想笑いをしているが殺気を纏っているに違いない。僕も負けじと威嚇する

「何してんのさ。うっとおしい」

神変さんが僕を引き離そうとしてきます。坊主が笑っていてめっちゃ怖い。涙も怖がって出てこない

「様、見捨てないで!」

「咲音……サマ?」

動揺している?畳みかけてしまえ!

「咲音様、僕は貴女ほど魅力的な人を他に知りません。どうか、僕をそばに置いてください」

「はい?えーと、嫌です」

見捨てられた?嫌だ、振りほどかないで!呪われたくない

「………………なんでも言うこと聞きますから」

「……君が……わかった。じじいが怖いのわかったから」

咲音様は嫌な顔をしつつも振りほどくのを辞め、ちゃぶ台の前に座って用意してあった食事を食べ始めた。僕もしぶしぶ席に加わります。坊主と咲音様が楽しそうに雑談しているがそこに入れるほどの社交性

はありません。あと、坊主怖い……………………

あー、食事も終わりさっさと部屋に戻ろうとすると「ちょっとまった。大事な話があるから」と坊主が言ってきた。部屋の外へ逃げ出そうとすると「いやいや、本当に大事な話だから。座って座って」と咲音様に止められてしまいました……う…………

「ほら、早く」

上目使い……可愛い

「はい」

なすすべなく腰を落とします

「うん、何でこんなに怖がられるか不思議だわ。まあいいや。大事な話っていうのは、君がこれからどうするかってことだね」

どういうことでしょう

「どういうことです」

「君は能力、つまりは病気を発症したことで、この神社と周辺に隔離されたわけだ。実感はわかないだろうけどな」

「…………周辺ってどこまで」

「半径2㎞、めぼしい施設は温泉とコンビニ位なものだな。でだ、龍吾君には3つの選択肢がある。一つ目は病気を治すこと」

治るものなのでしょうか

「うん。疑惑的になるのは判るよ。でも、治った例もあるんだ。此処で神主になる修行をしてね。精神的なこともあるから。研究チームの作った薬でも治る……かもしれないし」

かもしれない……治らなそうな響き

「君たちの病気が便利だよね。それを社会のために役立てようっていうのが2つ目。権力者の出す任務をこなしていけば隔離が監視になっていき最後には自由になれる……かもしれない」

かもしれない気になる

「最後のはこのまま隔離されたままって選択。社会は君たちを病気としているけど脅威に感じているんだ。宇宙人だ!!!いつの間にか我々も入れ替わっているんだとか、ミュータントだ!!!我々は新人類に駆逐されてしまうぞとか否定できない想像を膨らましている」

少なくとも宇宙人ではない……かもしれない

「だから、病人は何もしないならその方が良い人もいるんだ。だから、龍吾君が安寧に隔離されているなら恐らく飼い殺しにするだろうね。これが一番幸せ……かもしれないよ」

気になったことを咲音様に聞いてみる

「お嬢様、筒井さんは何故かもしれないをつけるのですか」

「……お嬢様じゃないから、もう、呼び方は咲音でいいからお嬢様とか辞めて。かもしれないを付けるのは、あくまで君自身が判断すべきだ。とか考えているからかな」

きちんと答えてくれる咲音様はいい人だと思います

「咲音様……。筒井さん、少し考えてみます」

僕はゆっくり立ち上がり、ゆっくりと部屋へと向かいました

布団を敷き、掛布団の中に潜り込みます

「……なんで!!僕がこんな選択を迫られないといけないんだ」

部屋の外に聞こえないように、小さい声で唸ります。僕はこんなことは望んでいなかった。ただ、普通に学校で友達と駄弁って、家で家族とテレビを見たり、なにもない日は古本屋で立ち読みしたり、そんな普通の日々がよかったのに。もっとも、それは僕の希望で僕の日常ではないですけどね。平凡以下の底辺だと思っていた日常は異常な何かに変貌したのです。ただ、どの異常を選ぶかだけは僕の手にゆだねられたのです。困る、選びたい選択肢がありません。それでも考えなければならない自分のこと。僕は1晩、同じような考えをめぐらせていたんだ

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