二話 夢・1
今回も短いです
腰まである栗色の髪に、整った顔立ちの少女が一人。真っ白なワンピースドレスの服が汚れてしまうのも構わず、草の上に直接座りながら差し出された花を受け取り、真剣に編みこんでいく。
あともう少しで花の冠が出来上がる。
母に教わったとおりに慎重に、花が萎れてしまわないように丁寧に編んでいく。
最後の一本を編み終わると、花を集めてくれたモノ達に見せる。少女の周りを飛び交いながら花を集めていたモノ達は少女を褒め、頬や髪を撫でていく。そして、早く行けと急かす。
少女は立ち上がり花の冠を大切そうに持つと、とてとてと駆けて行き、日よけ用のパラソルの下でゆったり紅茶を飲んでいる一人の女性へ、先ほど作ったばかりの花の冠を差し出した。
「どうぞ、おばあ様」
「あらまあ、とても上手に出来ていること。貴女はお母様に似て手先が器用ね」
白髪の髪をきれいに結い上げ、飾り気がなく簡素ではあるが、質の良い生地で作られたドレスを着こなしたどこか気品のある淑女だ。
にっこりと柔らかく微笑み、おばあ様と呼ばれた女性は一度イスから降り、少女と目線が同じになるように屈んだ。少女はその頭に花の冠を載せると無邪気な笑顔で
「おばあ様は何でもお似合いになるわ。キラキラ光る宝石の冠もお似合いだけど、こちらもお似合いね」
と言った。そんな少女の頭を撫で、おばあ様は悲しそうな目を向けながら言い聞かせるように言った。
「いつか、その宝石の冠をかぶる日が貴女にも来るわ。幼くして両親を亡くした貴女に私ができることは多くないけれど、せめて貴女が成人するまでは私がこの玉座を守りましょうね」
「?」
少女は向かい側のイスに座り、おばあ様を真似て淑やかに紅茶を飲む。
「貴女にもそろそろ絵の描き方を教えてあげなくてはなりませんね」
「本当?わたしにも絵の描き方を教えて下さるの?」
「ええ、本当ですよ。今度時間ができたときに教えてあげましょうね?リーヌ」
今や少女のことをリーヌと愛称で呼ぶのは現、女王陛下であり、少女の母の母であり、少女の祖母である彼女と数えるほどの人しかいない。
母もよく絵を描いていた。リーヌが褒めると、貴女のおばあ様に教わったのよ、と言って、いつか貴女にも教えてあげましょうね、と続けた。
その約束は、今はもう叶わない約束であるが代わりにおばあ様が教えてくれると言う。
絵の描き方を教えてもらえるのは嬉しいが、そんなことよりも大好きなおばあ様と一緒に居られる時間が増えるということの方が、リーヌにとっては嬉しかった。
…………そう、ちゃんと覚えている。
幼いリーヌさん、「純粋」を意識して頑張りました。
閲覧ありがとうございました。
興味がありましたら次回もよろしくお願いします。