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呪いの輪廻 王女の運命  作者: 鼎ユウ
アミュージィエの話
20/31

エピローグ

前の一八話を二分割して無理やり作ったエピローグです。なのでそれっぽくないところもあります。


ライラのミュンに対する印象。幼馴染とはそんなものだと思っています。

 町の大通りを二階建ての馬車が着飾った人々を乗せて通り過ぎていく。結い上げた髪に生花を飾り、遠目からでも分かるほどにレースやシルクをふんだんにあしらった豪華なドレスを身に纏い、にこやかに手を振るのは女神ジュディエッタ役の女性だ。その両脇に控えているのが、別に控えているわけではないが、彼らも一応主役で彼女に比べれば、どうしても見劣りしてしまう冬の神と春の女神だ。ジュディエッタがあそこまで目立っていては他は全てがおまけになって見える。

 この迎春祭(スプリング・フェスティバル)一番の見せ物であるパレードを見ようと大通りはつめかけた人々でいっぱいだ。

 店で買った食べ物、小麦粉を牛の乳で溶き、薄くのばして焼いた生地で煮込んだ肉と野菜をくるんだものを頬張りながら、離れた所からその光景をライラと二人で眺めていたミュンは真顔でポツリと漏らした。

「わたし……あそこには混ざりたくないわ」

 パクリと一口かぶりつく。

「同感」

 言って、ライラもかぶりつく。

 モグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグ……。

 独り言を言うようにミュンが漏らす。

「元々はさ、このお祭りはずっと昔にいた女王の誕生と戴冠を祝ったもので神様も女神様も関係ないものだったんだよ。それが、いつの間にかジュディエッタの新月の儀と冬の神、春の女神へ捧げるお祭りみたいになっちゃったんだよね」

 珍しくミュンが歴史を語る。その隣で、開いた口が塞がらずポカンと呆けた顔をしたライラがミュンを凝視していることにミュンは気づかない。

「あ、そうそう。ジュディエッタといえばさ。森の近くの教会って、本当は運命の女神ジュディエッタを奉った教会なんだって。で、そのジュディエッタ像のモデルが亡国の女王陛下らしいの。なんでも、最も長く玉座に座り続けて国を守り、公の場を退いた後も彼女のあとを継いだ孫を陰で支え続けたすごい人なんだよ。その偉業を讃えて国民が彼女をモデルにしたらしいよ」

 さすがわたしのおばあ様、声には出さずに付け加える。

「ミュンッ!」

「うわ、何!?」

 いきなり肩を掴まれた。ライラは口をわななかせながら、信じられない物を見たような顔をしている。

「どうしたの!?熱でもあるの!?何か悪いの物でも拾って食べた!?頭は?…ううん、お腹は大丈夫!?」

 ガクンガクンとミュンを前後に揺らす。目が回る。気持ち悪い……ていうか

「ライラはわたしをそんな目で見てたのかっ!!」

うぅ……らくらする。

 肩を掴んでいたライラの手を剥がす。焦点が定まってきた目でジーと拗ねた視線を送る。

「し、心配してるんだよ?」

 そう言いながらなぜ目を合わせない、ライラ。

「へ~……」

 ジト目をやめないミュン。

「それはそうと、どこで知ったの?そんなこと」

 自分に刺さる視線を何とかしようと、一気に逸らさずに微妙に話題をずらすライラ。巧い。ここで、いきなり話題を逸らしたらさっき言った自分の言葉が軽薄に聞こえてしまうことをちゃんと分かっている。

「……本で読んだの。ずいぶん古い本だったけど、そこに書いてあったの」

 と、いうことにしておく。本当のことを言ったところでライラが信じるわけないし、ミュンも話す気はない。

「へぇ~、珍しくミュンがこないだ借りた本?そんなことが書いてあったんだ。歴史書だっだの?」

 一番に気にかけるところはそこですが?まあ、いいけど。

 


 教会での出来事の後、ミュンはすぐにライラの家へ行って清水とロッカの実を届けて、家に戻り即行寝た。数日ぶりの柔らかくて暖かい寝床にミュンはすぐに眠りに落ちた。

 それからお昼くらいまで爆睡して、ミュンがお昼と食べて自室に戻るとゼイスが居た。

 ベッドの上に置いてあった画集を無言で見つめている。

「戻られましたな?」

 ミュンが部屋に入ってくる気配を感じとり、ゼイスが顔を上げた。

「先生どうかしたんですか?」

 ゼイス自ら画集から出てくるのは珍しい。

 ゼイスの所まで歩いて行き、ちょこんと正座する。そうすると、ベッドに座ったゼイスと丁度目の合う高さになる。

「リーヌ様に一つ頼みがあるのです」

「何ですか?」

 今までずっとセリエーヌのために一緒にいて知恵を貸してくれたゼイスの頼みだ。ミュンにできることならきいてあげたい。

「これを――」

 くるりと画集をミュンの方にむけ、裏返す。

「ここの文字を一つ、どれでも結構ですので削ってもらえませんかな?」

 ゼイスの指した先にはこの画集を常によい状態に維持し続けるために刻まれたルーン文字がある。円を描くように刻まれたそれは半永久的に施行される魔術だ。

「でも、これを消してしまったら画集が……」

「ふむ、徐々に朽ちて消えてなくなるでしょう」

「先生達はどうなるんですか?」

「わし等の運命は画集と共にあります。わし等は役目を終えました。これ以上ここに留まることは世界の理に反します」

 いつまでも彼等を縛り付けておくことはできないということだ。薄々は勘付いてはいたのだ。でも、いざその時となると寂しいと思ってしまう。これからもずっと傍にいてほしいと思ってしまう。いけない。

「リーヌ様、またいつかどこかで必ず会えます。その時は互いを覚えていないでしょうが必ず会えますよ」

 ミュンの心を見透かしたようだ。

「リーヌ様とわし等の輪廻の輪はそれぞれどこかで交わっております。ですから、いつかどこかで必ず会えます」

「はい……」

 ぽろりと目から雫が落ちた。後から後から溢れてくる。止まらない。

 ミュンはまだメイフェに返していなかったナイフで魔術の円に一つ小さくキズをつけた。

「リーヌ様、永い間よく耐えられました。いつ終わるとも知れぬ呪いの連鎖の中よくぞ耐えられた。常に貴女がわし等の事を想ってくれていたことはシ知っとりす。(みな)を代表して礼を言います。ありがとうございます、セリエーヌ女王陛下。わが国最後の愛しき姫。これからの人生が良きものでありますように、心より祈っております」

 そう言ってゼイスはいつものようにホッホッホと優しく笑いながら髭を撫でた。

 その身体が徐々に消えてゆく。

 ゼイスが消えた跡には何もなく、全てか幻であったかのよう。けれど確かにミュンの目の前にはキズのつけられた画集が置かれている。

 画集の変化はすぐにはおとずれなかった。変化に気づいたのは、ライラが祭りに行こうとミュンを迎えに来たときだ。

 窓から射し込む光が傾き、空が赤く染まり始めた頃で、それでも些細な変化に気がついたのはミュンだったからかもしれない。画集のページの隅の方が少し黄ばんでいたのだ。長い年月が経って紙がだんだん褪せて黄ばみ、朽ちていくように。こうやってこのまま少しずつ本来の姿に戻ってゆくのだろう。玄関ではライラが待っている。ミュンは画集を置いていく気にはなれず、急いでリュックに詰め込むと自室を後にした。



「……ン……ミュン、ちょっと、聞いてる?」

「え?なに?」

 全然聞いてなかった。完全に自分の世界だった。ヤバい、ヤバい。

「だからさ、これ終わったら次何食べる?って訊いたの」

 口を尖らせてライラが言った。

「もう次?まだ食べ終わってすらないのに?」

「…………終わりました」

 最後の一欠片を口に放り込み、呑み込むと何もないよ、と言うように手をひらひらさせて見せる。

「わたしはまだだよ」

 あくまで自分のペースで食べる。と、言ってもミュンも残りわずかだ。ミュンの食べ終わったのを見計らって、ライラが大通りの方へ歩き出す。丁度行列が途切れて、横切るなら今だ。

「次は甘い物が食べたいよね~」

「甘い物ねぇ、いつものでよくない?」

「だよね、いつものハニーラクス。どこに店あったけ?」

「えっと……この通りでよかったはず」

「よし、行こっ!」

「ちょっ、そんな引っ張らない!転ける、転けるから!」

 ライラはミュンの手を引いて上手に人を避けながら歩く。何だかそんなやり取りが可笑しくてミュンはつい笑ってしまった。ライラもつられたのか笑い出し、結局は女の子二人が笑いながら歩く構図が出来上がってしまった。それがまた可笑しくて、さらに笑ってしまって息が苦しい。

 先生、サラにローラ。グレドイとそれにみんな。ミュン(わたし)に明日をくれてありがとう。お互いのことを覚えていなくても、またいつかどこかで必ず会おうね。絶対に。



終話でございます。

いろいろとグダグダですがこれにて終了となります。


終わり方が下手で申し訳ないです。もう少しきれいにまとめられたらよかったなと、心の底から思います。


閲覧ありがとうございました。

本編は終わりですが、できたら番外や前にも書きました本編に組み込めなかったかわいそうなNG集を載せられたらと思っています。

ただ、これはあくまで願望ですので期待はしないでください。

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