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呪いの輪廻 王女の運命  作者: 鼎ユウ
アミュージィエの話
14/31

十三話  絶え間ない追撃

サブタイトル考えるのがつらいです。

もう放棄したい気分です。

 揺れる視界に数メーテ上を旋回する黒鳥が映る。こちらの様子を窺っている。遠くの音を聞くのに役に立つ能力(ちから)だが、まさかこんなところでそれが仇になるとは思わなかった。

 旋回していた黒鳥が動きを止め、降下の体勢にはいった。そして、急降下を始める。来る!狙われているのはもちろんセリエーヌ。それを見とめたサラはすぐに行動に移った。

 痛む頭を手でおさえ、美しい柳眉(りゅうび)にしわを寄せて、揺れる視界に目を細めながらサラは他人に何かを差し出すような動作で曲げていた肘を手のひらを上にして打ちつけるみたいに勢いよく伸ばした。

 それと同時に、突っ込んできた黒鳥の顔にしなった枝が叩き付けられた。

「――!?」

 思いがけない反撃に黒鳥は大きな打撃を受け、地面に落ちた。

 それを好機とみたサラにより、地面に縫い付けられ身動きが取れなくなると追い討ちをかけるように左の翼の付け根辺りに付いている核を破壊された。

「うっ……くっ……」

 身体が揺らいで膝から崩れ落ちる。

「サラっ!」

 ミュンとローラが同時に叫んだ。ミュンにいたっては悲鳴に近い。

 少し無理をしすぎたかもしれない。疲労や寒暖を感じにくい身体である住人達だが、身体の危険信号である痛覚は普通の人間と同じだ。けがをすれば痛いし、無理をすれば身体の動きがその分鈍くなる。そして、その回復に魔力を使う。

「だ、大丈夫です」

 心配をかけまいと引きつった笑みを浮かべて近くに来たミュンとローラに顔を向ける。

「うそっ!サラ顔が真っ青だよ。ごめんサラ、無理させて。それと、ありがとう」

「素晴らしいですわサラ。けれど、ずいぶんと魔力を消費していますわ」

「私は平気です。リーヌ様は?」

「大丈夫。もう、普通に歩けるよ。サラのおかげ」

 ミュンのことを『リーヌ様』と呼んだ。人前では愛称で呼ばないのに。大丈夫じゃない証拠だ。

「そうですか」

 ホッとしたように呟く。

「サラ、自分の心配もしなさいな。貴女の悪い癖ですわ」

 叱るようにローラが言う。

「そうだよ。サラ、一回画集に戻ってね」

「私は大丈夫ですから、進みま――」

「駄目。異論は許しません」

 有無を言わせぬ口調にしばし沈黙。

「わかりました」

 サラが折れた。

「あとは私にお任せなさい。進む方角は分かっています。少しでも距離を稼いでおきますわ」

 片目を瞑っておどけてみせる。

 頼みます、と一言残しサラが消える。

 さて、と前置きをしてミュンはローラに向き直る。

「ローラ、あなたにも戻ってもら――――」

「我が儘を言うようですが、私は戻りませんわ。姫様をここにお一人にはできません。第一貴女だけではあまりにも危険すぎますわ」

 ミュンに最後まで言わせず、まくし立てるように言い募る。

 ローラの言うことは間違っていない。ミュンのことを心配してくれているのも分かる。けれど、それと同じくらいミュンもローラのことが心配なのだ。

 サラに歩けると言ったのは嘘じゃない。まだ少しふらふらするが、ちゃんと歩ける。

 ミュンの心の内を見透かしたのかローラが一つ提案をした。

「では、こうしましょう。今から二刻ほど休みをとりましょう。そしたら二人で出発ですわ。よろしいですわね?」

 二人で、というところを強調してこれ以上は譲れないと暗に訴えている。

「……分かった。でもローラ、絶対無茶はしないでね」

 こちらも負けじと念を押すように言う。

「承知していますわ。それに、私はあの時何もできなかった分頭痛も目眩も治まってきていますの」

 サラにばかりいい格好をさせられませんわ、とウインクするローラに苦笑で返す。重かった空気が気づくといつも通りになっている。気持ちも少し軽くなり、前に進む意欲が湧く。

 大丈夫、なんとかなる。わたしは独りじゃない。自分に言い聞かせるようにゆっくりと心の中で繰り返す。



 前言どおり、二刻の休息のあと出発した。

 空を見上げて、太陽の位置でおおよその時刻と方角を確認し昨晩サラが描いた簡易地図と照らし合わせ進んでいく。

 惜しみなく降り注ぐ陽光が地面に反射して目が焼けそうだ。時折強く風が吹き、マントや髪をはためかせる。ふんわりと膨らんだマントの間から冷気が入り身体の熱を奪う。風になびく髪は視界を塞ぎ邪魔をする。乱れた髪を手櫛で梳き、整えるが風が吹くとまた元に戻ってしまう。四回目でミュンは諦め、顔にかかっているものを除けるだけにした。

 代わり映えのない景色に、ちゃんと進んでいるのかと不安になる。これでは道が逸れていても分からない。サラを喚びたい衝動にかられるが、あれだけ言い切ってしまった手前それはできない。無理はさせたくない。

 一旦画集に戻ればもう安心だが、画集に残っている魔力が減ってきている。そうなんとなくだが感じる。乱用(まが)いのことをしたことが今になって悔やまれる。その時は必要だと思っても今思えばそんな事はなかったのではと思えてならない。

 今晩もきれに月は出るだろうか?

 月の光には魔力がある。画集は月光の魔力で動いていて、毎晩月明かりを蓄積している。夜、月が雲で隠れてしまうと魔力の供給が絶たれて消費した魔力を回復することができない。画集が消費した魔力を回復することができないと負傷したサラが使える魔力が減り、その分治癒が遅れる。

 本調子でないサラを喚ぶなんてことはしたくない。

(このまま天気が崩れないといいのに)

「姫様、そろそろ休息を取りませんか?」

 前を歩いていたローラが振り返った。

「ううん、進もう。まだ歩けるから。それに少し前にも同じこと言ったばっかだよ」

「ですが、食事のために短い休息をとってから一度も休んでいませんわ」

 ローラに心配はさせたくないけど、時間は無駄にしたくない。進めるなら少しでも距離を稼いでおきたい。

 道案内のサラがいない分慎重になってちょっと遅くなるからなおさらだ。ローラは一度も休んでないと言うけど、合間合間に方角を確認しいしい進んでいるため実はその時に休めるのだ。たとえ、それが六〇秒に満たない時間であっても。

「大丈夫だよ、ローラ。ホントに辛くなったら言うから」

「分かりましたわ」

 頷きつつもまだ何か言いたげな目をしている。ミュンはそれに気づかないふりをしてほらほら行くよ、と急かす。

 景色は相も変わらず茶色と白。これではロッカの実の花が咲いていても見落としそうだ。まあ、葉が緑だからそんな事はないと思うけど、自分は大丈夫だと言い切れない。なぜなら、歩いている間ミュンはずっと考え事をしているからだ。

 ローラの後姿だけを追いながら頭の中では別のことを考えている。

 この悲しい連鎖はどうやったら終わるのか?終わらせることはできるのか?終わらせるためにはミュンに何ができるのか?

 そんなことを考えていたミュンの脳裏に新たに一つの疑問が浮かび上がってきた。この出来事の根本とも言えるもの。なぜ今までその事に気がつかなかったのだろうと思う。どうしてかこれだけがまだ思い出せずにいる。『そもそも何故こんなことになったのか』それがミュンには分からない――思い出せない。

 他のことはちゃんと思い出せているのにそれがけが謎のままなのだ。

 それらのことを悶々と考えているといつの間にかずいぶんと時間が経過し、それなり距離を歩いている。

 ローラに名前を呼ばれて我に返ったことも数回。

 それをローラはミュンが疲れているのだと思って心配してくれたのだ。そんな彼女の優しさに感謝しつつ己の事しか考えられない自分が恥ずかしい。               

 でも、考えても考えても答えは出ない。

「姫様――」

「ぱひゅっ」

「――お静かに願いますわ」

 何の前触れもなく足を止めたローラの背中に顔面をぶつけた。

(は、鼻打った)

 手で鼻を押さえながらこくんこくんと頷く。

 何だろう?

 中天にあると思っていた太陽はすでに傾き、空を赤く染め今日の終わりが近いことを教えてくれる。

「……来ますわ」

 周囲を警戒していたローラが目を細め、色付いた虚空を睨む。彼女がやると艶かしく映るのは何故だろう?

 空、ということはまたアレなのだろう。

 無意識のうちに胸元にある画集を持つ手に力が入る。

 ものすごい勢いで近づいてきた黒鳥はミュン達にぶつかる寸前で地面とほぼ垂直に上へ曲がった。

 それにより作られた風の流れで積もっていた雪が舞い上がり、視界が白一色で他に何も見えなくなる。

 逆巻く風に雪が舞う。白い世界に独り置き去りにされた感覚に陥る。一秒がとても永く感じる。体感時間とはこれほどに不的確で頼りにならいものか。

 ――誰か!

 声にならない叫びがミュンの中で響く。

「っ!?」

 いきなり腕を掴まれ、反射的にビクリと身体を震わせる。それを感じ取ったのか掴む手の力が弱まる。

 ローラだ。

 あの時すぐ近くにいたのは彼女だった。だが、そう考えるより先に直感で思った。不安と孤独感が退いていく。

 声は聞こえないけど、ミュンを気遣ってくれているのは分かる。永遠とも思える永い時間が終わり、ゆっくり動いていた時間が元の速さで動き出す。

 短い吹雪が去り、視界が戻ってくると隣にローラが見えて、空中に黒鳥が見えた。

 ローラは一瞬ミュンと目が合うと、大丈夫と言うように微笑みすぐに空中にいる黒鳥を見据えた。

 ミュンも同じ方向に顔を向ける。

 黒鳥は(くちばし)をめいいっぱい開いていて、吸い込んだ空気で肺が膨らむのさまが分かる。

 サラを傷つけたあれをまたやる気だ。どうしよう?

 いっぱいまで空気を吸い込むと、一拍の溜めの後一気に吐き出す。

 少しでも被害を軽減しようと耳を塞いで目を瞑る。ただの気休めにすぎないだろうが、やらないよりはましだろうと身構える。

 しかし、予想していたほどの衝撃はおこらない。それどころか

「同じ手は二度も通用しませんわ」

 と、ローラの声。驚いて目を開くと幻想的な光景が飛び込んできた。

 薄いベールのような半球型のものがミュンとローラを覆っている。表面では水が跳ねていらしく飛沫も上がっている。

「水で作ったベールですわ。アレが先ほどおこした吹雪を利用しましたの。宙を舞っていた雪からできているのですわ。水は音を通しにくい」

 ミュンがそれを凝視しているのに気づいたのかローラが説明してくれた。

 確かに、ベールの中まで届く音は激減している。人間が大声を出した程度だろう。うるさいとは思うが、我慢できない音量じゃない。まして、ちょっと前にあれを体験した後ではこんなのかわいいものだ。

「すごいっ!ローラ。まるで水の中にいるみたい」

 人魚達の目にはこんなふうに世界が映っていたのだろうか?今ではもう空想の生物となってしまった者達のことを想う。

「でも、このままじゃ――」

「ご安心くださいな、姫様」

 変化はその後すぐにおこった。

 水のベールはそのままに外側の面から何かが伸びてくる。

「何?」

 飛沫が邪魔するのも手伝って内側からはよく見えないが、棘にそっくりなものが生えてくる。そう、言葉通り生えてくると表現がぴったりなのだ。

 ぐんぐん成長をしていって、最終的には腕の長さほどにまで育った。それが半球型全体を等間隔に覆っているから外から見たら多分ハリネズミみたいになってるだろう。

 パチンとローラが指を鳴らす。それを合図に棘が一斉に発射した。

 一直線に飛んでいく。黒鳥も避けようとするが、なんせ範囲が広いものだから避けられない。巨体が仇となり小回りもきかず刺さった棘は約十本。

 断末魔の叫びを上げて黒鳥は霧散した。幸運にも核も同時に刺し貫いたみたいだ。散りゆく黒鳥だったものを水のベールの内側から見上げるミュンの手首をローラが掴む。

「先を急ぎますわよ、姫様」

「うん」

 ミュンが頷き、その後泡が消えるみたいにベールが弾けて消えた。

「昨日は何も仕掛けてきませんでしたのに今日になって二回も」

「それだけむこうも焦ってるって事じゃない?」

 憤るローラの背中にミュンが答える。

「そうですわね。早く終わらせてしまいたいのがあちらの心情でしょう。魔術を使うには体力と精神力の両方を消費するらしいですわ」

「なら、なおさらだね。これからが正念場だ」

「恐らくは、これからよりいっそう仕掛けてくる回数が増えるでしょう。今日、明日が山場ですわね」

「今日と明日?……あっ、そっか明後日は新月なんだ!月が出ないから魔力の回復もできない」

 すっかり忘れていた。迎春祭(スプリングフェスティバル)は新月の日に行われるのだ。年に一度、運命の女神ジュディエッタの力が最も弱まる瞬間でジュディエッタの加護も弱まり悪しき者達が悪さをしようと暗闇から狙っているのだ。

 だから、その日は朝も早くから夜が明けるまで賑やかに楽しく騒ぎ、悪しき者達を寄せ付けないようにする。

 さらに、豊穣の女神であるジュディエッタに一年間の恵みを感謝し、翌一年間の豊かさを願う。セリエーネの時代にはなかった行事だ。

 セリエーヌには魔術師の才能はない。ミュンについては言わずもがな。だから、ゼイスが画集に施してくれた魔術と月光の魔力に頼るしかない。

 改めて自分の無力さを思い知る。せめて、足手まといにだけはならないように画集を持つ手に力を込める。

「姫様、そろそろ今夜休む所を探した方がいいですわ」

「そうだね。せめて雨風がしのげる所で寝たいよね」

贅沢を言えないのは分かっているが、ここ二日の宿を思い返す。

「ごもっともですわ。あぁ、ですがもう少し後になりそうですわ」

「え?」

「来ましたわ。上です!」

 弾かれたように顔を上に反らす。

「いつの間に!?近い」

 日が陰って暗くなっただけだと思っていた。見渡せば鳥の形に影ができている。

「毎回、毎回上から見下ろして大変素敵な身分ですこと。話しをするときは他人と目を合わせてするものです、わっ」

「――――っ!」

 言い終わるのと同じタイミングで黒鳥が落ちてきた。その首にはローラ愛用の鞭が巻きついている。

 黒鳥は何が起こったか理解しきれないようで、憐れに翼をばたつかせるばかりだ。

 ミュンも脳内処理が追いつかない。突然空から降ってきた巨大物体を凝視する。

 ただ一つ、ミュンに理解できたのは……

(ローラさん、もしかしてご機嫌よろしくないですか?)

「これでお終いですわ」

 嘴の付け根辺りにあった核をローラがコツンと指で弾いた。たちまち核は凍りつき、表面を亀裂が走り砕け散った。

「さっ、参りましょう?」

 にっこりと微笑むローラを見ながら、ミュンは今後絶対に彼女を怒らせないようにしようと思った。



 パチパチと焚き火がはぜる。赤々と燃える火は熱を発し、冷えたミュンの身体を温めてくれる。

 狭い洞穴で二人、焚き火を挟んで向かい合って座っている。

 運のいいことにあれからすぐにここを見つけた。今は食事を終え、ゆったりとお茶を啜っている。しばしの間、現実を忘れさせてくれる。

「姫様、お疲れではありませんか?」

 ローラが訊いた。

「んー、疲れてはいるけどまだ眠くない、眠くないよ」

 ヤバい、一瞬意識が飛んだ。ローラもサラも目敏い。何で分かるの!?

 大丈夫、大丈夫と言ってみるもローラはあまり信じてないもよう。

「明日ですが、サラが動けるはずなので彼女が道案内をしますわ」

「ってことは、ローラと交代ってことだよね?」

「ええ、わたくしは画集の中で待機していますので何かあればすぐにお喚びくださいね」

「うん、ありがとう。今夜も雨降らなくてよかったね」

 岩の裂け目のような出入り口から外を見上げる。

「ええ、ですが少し空気が湿っぽいですわ。それに気温も下がってきていますし、雪が降るかもしれませんわ」

 冷えてきたと感じたのはミュンの思い違いではないらしい。雪も雨も降られるのは困る。

「雪か……。最近ご無沙汰だったのにね」

「天候はどうしようもありませんわ。せめて吹雪かないことを祈りましょう」

「うーん」  

 両膝を立ててその間に顔を埋める。しばらくその体勢で動かなかったミュンはやおら顔を上げて意を決したような目をしてローラに言った。

「ローラ、ちょっと先生に訊きたいことがあるんだけど、代わってもらえる?」

「……分かりましたわ。あまり長話になりませんように。睡眠はしっかりとてくださいね?」

 にっこり。

 何故とは訊かれなかった。ただ、ちゃっかりと釘を刺していくところが彼女らしい。

 その言葉に素直にはい、と返事をする。

 水が蒸発するようにローラの姿が消えた。

「先生、ゼイス先生」

「分かっておるよ。リーヌ様の言いたいことは大体な。分かっておるよ」

 ホッホッホ、とくぐもった声で笑うのは小さな老人だ。

「いつから……?」

 居たの?

「もちろん喚ばれてから出てきましたとも」

 土色のベストにややくくたびれた同色のボウシ。真っ白な毛が目と口元を覆っていて表情が読みづらい。

 モグラとウサギの丁度中間くらいの大きさで『ノーム』と呼ばれる種族だ。

「えっと……」

サラはもう平気?気を取り直して訊こうとする。

「サラの事ならもう大丈夫じゃよ」

 また……まるでミュンの考えていることを読んでいるみたいだ。

「先生、これじゃ会話にならないです」

 異議を唱えるミュン。

 リーヌはゼイスのことを先生、と呼ぶ。魔術師であると同時に医者でもあるため先生で定着しているのだ。

 ゼイスもリーヌのことを愛称で呼ぶ。産まれた時からずっと見てるから孫のように感じるのだろう。

 長い髭を撫でながら、好々爺はまたホッホッホと笑う。

「リーヌ様の訊きたい事はちゃんと分かっておるよ。永い時の中でわしにそのことを訊ねるのははて、何人目か……そう多くはないと記憶しとるが」

「それでも、過去にいたんですね?訊いた人が」

「ああ、だが実際に行動に移せた者はおらなんだ。あちらとてばかではないですからの」

 それほどまでに高リスク。ミュンがゼイスに訊きたい事、訊いたうえでミュンがやりたい事。それはそんなにも危険だということか。

 けれど、だからといってやらないとは言いたくない。自分のためにも、そして何よりも支えてくれる皆のためにも。

「それで、どうなんですか?」

 懇願にも似た問いかけ。期待と不安と切望がない混ぜになりミュンの心情を表そうとする。

 複雑な面持ちでゼイスの答えを待つ。

「ふむ――――」


サラ、負傷により戦線離脱です。本当はこんな子になる予定ではなかったのです。サラさんは。「できる女」にしたかったのですがいつの間にかこんな子に。どこで間違えたのでしょう?



閲覧ありがとうございました。

敵襲はまだまだ続きます。

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