『琉の故郷と旅の支度と謎の宗教』 その1
朝が来た。ハイドロ島に初上陸するロッサ。島を案内することとなった琉。果たしてロッサはこの島で何を見るのか……。
朝。カレッタ号のキッチンには一人の影。
「昨日は御馳走だったな~。あの子意外とポテンシャル高いよな~!」
琉は昨日の御馳走の余りを朝飯のおかずとして作り直していた。コック時代に身に付けた賄い料理である。と、そこにもう一人の影が姿を現した。
「ふわ~あ……」
「おはよう、今朝は早いな」
二人は食事の席に着いた。
「今日は約束通り、島に上がるぞ」
琉はこの日のスケジュールを話した。
「ねぇ琉、島には何があるの?」
「そうだな……。なんて説明すればいいのやら。とりあえず“町”があってね、そこにはたくさんの人が住んでいて、“店”を開いていて……」
ロッサにとっては経験のしたことのない環境である。否、経験したことを忘れていると言った方が正解かもしれない。
「人? 住んで?」
「……まぁ、実際に自分の目で見ないことには分からないだろうな」
琉は先に食事を終えると、皿を洗い機に入れて鍋などを洗い始めた。
「そうだロッサ。次から魚を捕る時は、なるべく人に見られないように頼む」
「どうして?」
琉の警告に、ロッサは聞き返した。
「昨日怖い目に合っただろ? また来るかもしれん。……第一、発言からして新興宗教臭いな、アイツに聞いてみる必要がありそうだ」
「アイツ?」
彼女が琉の知り合いなど知っているはずがない。琉は補足した。
「ん? あぁ、要するに友達に会う予定があるってことさ」
「友達?」
「んー、会ってみれば分かるさ。楽しみにしといてくれ」
琉はロッサの出した皿も片づけると、操舵室に向かった。
「シャットダウン!」
琉がそういうと、船の装置が全て止まった。明かりもエンジン音も画面に映った海図も消え、船の中は静まり返った。
「よし、降りようか。着いてきて」
琉はロッサを連れて表の甲板に出た。甲板に出るとパルトネールを取り出し、
「ステア・オープン!」
そう言うなりスイッチを押した。すると甲板から手すりの付いたはしご状の階段が伸びて陸に降りた。
「落ちないようにな。気をつけろよ」
琉はロッサの前に立ち、そっと手をとると階段を下りた。すると、ある男がこちらに近付いて来た。頭にバンダナを巻き、細い眼鏡をかけている。
「よう琉! 約束通り来たぜ!!」
「カズか。久しぶりだな。相変わらずじゃねぇか」
「この人は……?」
ロッサがそう言って琉に聞く。それを見たこのカズと呼ばれた男は言った。
「ぬ、ぬな!? な、謎の美女キター!? っておいおい、何で琉が女なんか連れてんだよ! エリアβに行くんじゃなかったのか?」
「カズ、彼女はロッサ。ワケなら後で話す。ロッサ、この人は桜咲和雅、通称“情報屋のカズ”だ。俺の古くからの知り合いでね」
琉はロッサにそう紹介した。
「そう、オレはカズ! この島一番の情報通にして人読んでハイドロ一の色男さ!!」
「色男?」
ロッサにそんなんが分かるはずもなく、琉は和雅に突っ込みを入れた。
「……それは“自称”な。ロッサ、今のは無視して構わないぜ。まぁ、ノリは軽いが良い奴さ。いつも海に出てて情報が中々得られない俺にとってはありがたい存在だ。とりあえず、“例の店”に行くか?」
「“例の店”?」
「行けば分かる」
三人は町に出た。ロッサは初めての環境に、目を輝かせて周りをきょろきょろと見た。
「そんなに珍しいモノでもあるのか?」
「カズ、彼女にとってこの島は初めてだ。……いや、町に入ること自体が初めてだな」
「そーなのかー……。いや~素性不明の美女か、たまらんねぇ~。ってか、何気ににオレより身長高くないか?」
和雅は、ロッサの背が以外と高いことに気が付いた。
「そういやカズの身長は165cmだったな。ついでに俺は180cmか。そうやって考えると……大体170cm位かな?」
実はロッサ、女性としては結構背が高い。そのために余計言動の子供っぽさが気になるのだが。
「しっかしこんなゴージャスボディのお姉様をゲットするとか……オレも探検家をやれば良かったぜ……」
「早いところワケを話さないとダメだな、こりゃ。……お、あったあった。ロッサ、ここだ」
どうしても台詞の少ないロッサさんw
徐々に増やしていく予定です。