『キャプテン琉のカレッタ号案内』 その3
発掘した当初から、ロッサの無邪気さに色々な意味で振り回される琉。なんやかんやで一日が過ぎ……。
翌朝。琉は操舵室にて舵を切っていた。
「この調子だと思ってたより早く着きそうだぜ。港に着いたら飯にするかな。……そうだ、彼女を起こさないといけないな」
琉は目の前の画面に部屋の一覧を出し、ロッサの部屋を選んだ。
「ロッサ、生きてるか? もう朝だぜ」
部屋の中に琉の低めの声が響き渡り、ロッサは目を覚ました。
「……んー。ここは……って、船の中か……」
ロッサはふとんから出るとケープとサッシュを着け、琉の声のする装置の前まで行った。
「起きたか。操舵室に来てくれ。もうすぐ島が見えてくるはずだ」
ロッサは部屋を出るとそのまま操舵室に向かった。操舵室では琉がおにぎりを片手に舵を切る姿があった。
「来たか。島はもうすぐだ。とりあえず、おにぎり作っといたから食べときなさい。君の分はこれだ」
琉は自分のとは別の皿を指さして言った。大きめの皿に、これまた大きめの海苔を巻いたおにぎりが三つほど並んでいる。
「おにぎり……これ?」
「そうそれ。こうやって食べるんだ」
琉は手元のおにぎりを手に取り、かぶりついた。
「はむっ。……」
よほど腹が減っていたのだろう。ロッサは夢中になっておにぎりを食べていた。
「食べ終わった皿は食堂まで持ってってね。後で洗っとくから。場所が分からなくなったら言ってくれ。ついでに俺のも頼む」
ロッサはおにぎりを食べ終わると自分のと琉の皿を持って食堂に向かった。食堂に入ると、そのまま洗い機に向かった。
「確か、ここに入れてたはず……」
琉がやったのと同じように、洗い機の中に皿を入れた。入れたらそのまま食堂を出て操舵室に向かった。
「ありがとう、助かるぜ。……数人で船に乗るのも悪くないな」
ロッサは操舵室に戻った後、興味深そうに外を見ていた。青い空、白い雲、眩しい太陽。何もかもが今の彼女にとっては新鮮なものである。心なしか、彼女の赤い目はルビーのように輝いていた。その体つきや声こそ大人のロッサだが、中身は純粋な少女そのものであった。
「あっ! ねぇ琉、あの海の上にあるのは何?」
「お、見えるか? あれが“島”だ。俺の故郷のハイドロ島だ!」
琉は島を確認すると港に直行した。カレッタ号が港に入ると、そのまま船を岸壁に近付けた。
「アンカー・シュート!」
琉は錨を下ろし、停泊した。
「島に行くの?」
「いや、それは明日だ。今日は船の整備と、あと案内だな。ついてらっしゃい」
琉はロッサを連れ、後部甲板へと案内した。
「今から船のメンテナンスをして来る。その間、ちょっと魚釣りをしててもらえないかな?」
「魚釣り?」
「あぁ、魚を捕って昼飯のおかずにするのさ。まぁ、見てなさい」
琉は立てかけてあった釣り竿を取り出した。そして近くにいたフナムシを捕まえると、針に付けて海に投げる。
「今日は海の透明度が良いな。魚が寄って来るのが分かるだろ?」
ロッサは身を乗り出し、魚を指差して見ていた。
「やはり興味が尽きないみたいだな。まぁ、待つことだ。そのうち餌に食いついて……ってロッサ!?」
急展開!? 果たして彼女に何が起こったのか?
次回をお楽しみに!