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Mystic Lady ~復活編~  作者: DIVER_RYU
第十章『アルカリアへの旅立ち』
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『アルカリアへの旅立ち』 その4

オキソ島で、顔をそろえた琉、ロッサ、和雅、ジャック。ひと時の再会も束の間、琉とロッサはついにオルガネシアを出る時が来た……。

「そうか、もう出航するんだね」


 あの後四人は一端解散し、それぞれの場所に行っていた。琉とロッサは長旅のための買い出しに、ジャックは一か月後の教え子のために基地に、カズは自分の欲しいモノのためにアーケード街に。そして夕方。ジャックと和雅の二人が波止場に来ていた。


「ロッサ様、しばらく会えなくなるんですね……」


「そう落ち込むなカズ。時々電話で声聞かせてやるから! ジャック、良い先生になれよ!」


 琉が後部甲板から彼らに話しかける。隣にはロッサもいた。


「ジャック、またピンチになったら助けてね。カズ、今度会ったら、また一緒に飛ぼ!」


 ジャックは黙って頷き、和雅は完全に呆けていた。


「それじゃあ、またここに来る時は連絡するぜ。……ロッサ、行こう。」


 操舵室に向かう二人。琉は舵を握るとロッサに行った。


「ロッサ。甲板に出て、手を振って来なさい。あいつら喜ぶから」


 ロッサが甲板に出ると、ジャックと和雅がっこちらに向かって手を振っている。ロッサも夢中になって手を振り返した。徐々に船は港から離れていく。ロッサはふと琉の方を見た。すると琉は悪戯っぽい笑みを浮かべ、投げキッスの動作をとって港の方を指差した。つまりそれをやれってことである。

 ロッサは甲板の後方に走ると、風でなびく髪をかき上げた。そして未だに手を振っている二人に向かい、さっきの動作を真似して投げキッスを決めた。


「うっひょおーー! オレのファーストキッスはロッサ様の投げキッスーー!」


「ロッサさん!? ……彩田君、相変わらずだね……。って、えぇっ!?」


 ジャックの隣には、鼻血を出して倒れている和雅の姿があった。彼の顔はとても幸せそうな表情を浮かべていたという。


「フヒヒ、あいつらどうなったかな。……お、戻って来たか」


 ロッサが操舵室に戻ってきた。


「ねぇ、琉。アルカリアには何があるの?」


「うーん、そうだね。よし、航路に出たから自動操縦にして飯にしよう。その時にじっくり話そうか。でも、何があったっけな……」


 自動操縦に切り替え、琉はロッサと食堂に向かう。


「あの国は主にディアマンが住んでるんだ。乾燥したところでね、島の中心にはでかい砂漠が広がっている」


「砂漠?」


 ロッサは聞き返した。ほとんど記憶のない彼女にとって、砂漠という所はまさに未知の環境である。


「砂漠。一面砂に覆われた、とても熱い所さ。そのくせ夜になると震え上がるくらい寒くなるんだけどね。まぁ、実際見てみないと分からんかな……。あ、そこの引き出しから缶詰出してくれる?」


 野菜を切りつつ、琉はロッサに話していた。アルカリアの島はどれも一面を熱砂に覆われた不毛の土地である。ディアマン以外の種族は海沿いかオアシスの周りにだけ住んでいる。

 ディアマンは水を苦手としている。体の鉱物が占める割合がかなり多く、全く泳げないためだ。更に湿り気の多い場所に行くと体表に苔が生えてしまい、ボロボロになってしまう。そのため、アルカリアのような砂漠地帯はまさに理想郷ともいえるのだ。


「実際彼らはアルカリアから出ようとしない。せいぜい来てもオルガネシアのオキソ島くらいだ。その代わり、あちらの砂漠を回るのにこれほど頼りになる存在もないけどね」


 琉は中華鍋で今朝の御飯を炒めている。ケチャップと缶詰の肉、細かく切った野菜を混ぜ込むと、それを皿の上に乗せた。


「わーい、出来たー!」


「ロッサ、残念ながらまだだ。ちょっと見てなさい」


 琉は卵を割って解くと中華鍋で焼き始めた。たちまち卵はオムレツに変わってゆく。


「良いかい。こうして出来たやつを乗せて、ナイフで切れ込みを入れると……」


 ナイフの刃先が触れた瞬間、半熟のトロリとした卵が御飯を包みこんだ。途端にロッサの目が輝き始める。


「こいつはオムライスだ。どうだ、旨そうだろう? そいつはロッサの分だから先に持ってって食べても良いぜ」


 ロッサは喜々としてオムライスを持って行った。


「ふっ、こういう所が可愛いんだよな」


 琉は自分の分も作るとテーブルに着いた。


「さて、さっきの話の続きだ。今向かっているのはアルカリアの中で……いや、この世界で一番広い島であるソディア島だ。と言っても、アルカリアはこのソディア以外は全部小さな島で構成されているんだがね」


 ソディア島はこの世界で最も広い面積を誇る。しかしその七割は砂漠に覆われており、ディアマン以外の種族には非常に住み辛い所でもある。そのため人口はむしろ少ない方である。そして砂漠には凶暴なハルムが多く住んでおり、ディアマンのガイドなしで入るのはまさに自殺行為といえよう。


「ハルムがいっぱい? ジュルリ……」


 ロッサからすればご馳走オンパレードだろう。琉は考えた。


「そうだな、ちょっくら形質を集めに行くのもありだな。丁度ディアマンの知り合いもいるし、頼んでみるかな。とにかくロッサ、五日後を楽しみにするんだね」


 不可思議な運命によって巡り会った琉とロッサ。彼女の謎を解き明かすため、自らの記憶を取り戻すため、二人はついにオルガネシアの国境を越えた。目指すは熱砂の国アルカリア。果たして二人はこの国で何を見、何を知るのか。二人の旅は今、本当の始まりを迎えたのである!


~次回作予告~

 手掛かりを探し、オルガネシアを出た琉とロッサ。彼らを待つモノ、それは新たな遺跡、新たな謎、そして新たな協力者。だがしかし海底の闇に、熱砂の下に、そして忘れた頃に危険は迫る。果たして二人の目には何が映るのか? 熱砂の国、アルカリアに第二幕が開く! 

 『Mystic Lady ~邂逅編~』 お楽しみに。 http://ncode.syosetu.com/n2630u/

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