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Mystic Lady ~復活編~  作者: DIVER_RYU
第九章『琉は見た! メンシェ恐怖の秘密』
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『琉は見た! メンシェ恐怖の秘密』 その4

辛くも怪物化した神父を打ち倒し、メンシェ教の魔の手を逃れた二人。その五日後のことである。

「う~む、五日経ってもこの騒ぎか……」


 銭湯のフロント。番台に置かれたテレビを見つつ、琉は呟いた。戦闘があってからわずか一日でこの一件はトップニュースとして扱われ、その騒ぎは未だ衰える気配を見せない。そしてこの事件がもとで、カルボ島におけるメンシェ教信仰は一気に衰退したという。何故かというと、


「……資料によりますと、このハルムは近年急速に信仰者を増やしているメンシェ教の“神の力を得た人間”に姿が酷似しているとのことで、すでにネット上でも話題となっている模様です……」


 アナウンサーが淡々と原稿を読み上げた。


「まぁ、あれだけ派手にやって目撃者が出ないはずがない。あの神父、意外とドジだったんだな。まぁ、被害にあったのは俺とロッサだけだが」


 その琉のケガも、思いのほか軽いモノであった。巨大な槍でなぎ払われた流だが、偶然にもロッサが盾に、それもよりによって彼女の胸がクッションとなって衝撃が和らぎ、おまけに落ちた先が海の中だったため軽い打撲で済んだのだ。


「そう言えばわたしの火傷は治ったけど、琉は大丈夫なの?」


 ロッサが言った。確かに彼女を助けようと炎の中に飛び込んで火傷を負った琉だが、炎に触れたのは一瞬な上にこれまたすぐさま海水に浸って体を冷やしたため大事には至らなかった。医者に言わせればこれで済んだのが奇跡だという。この火傷を治すべく、琉はまたあの温泉に通っていた。


「あぁ、随分良くなったよ。それにしても、容赦なかったよな」


 琉は笑って返した。そんな折、琉の懐に振動が走った。


「メールか? どれどれ……お、アードラーが直ったか!」


 送り主はドックのおやっさんだった。以前にカレッタ号の修理を依頼した人物である。あの時電撃を浴びて大破したアードラーは、このおやっさんのもとに預けられていたのだ。琉は早速向かうことにした。


「来たか。お、今回は彼女も一緒かね?」


 作業着を着た背の低い老人が琉を出迎えた。


「あぁ、彼女がロッサだ。そんなことよりおやっさん、早くアードラーを見せてくれよ!」


 琉はおやっさんにそう言った。早く顔を合わせたくてたまらないらしい。


「よし、良いじゃろう。早速呼んでみなされ」


 おやっさんに言われ、琉はパルトネールを出してアードラーを呼ぶ。すると離れた位置からこちらに向かって真っすぐに泳いで来る影が一つ。それは紛れもなく、きれいに修理されたアードラーだった。


「アードラー! すっかり綺麗になって……。しかし心なしか大きくなってないか?」


 五日ぶりに元気な姿を見て、琉は歓喜の声を上げた。確かにアードラーは機械だが、琉にとっては長年一緒にやってきた相方である。その様子を見ながらおやっさんが言った。


「まぁな。これなら二人でも十分乗れるじゃろ。更に今回はちょっとオマケもしといたぞ」


「オマケ?」


 首をかしげる琉。すると老人はこう言った。


「なぁに、ちょっと陸上でも使いやすくなるようにしただけじゃ。次のコードを入れれば分かるはずじゃぞ」


 パルトネールを出した琉に、おやっさんは紙を取り出して見せた。


『Change! Machine Adler!!』


 紙にはこう書いてある。


「勢いよく、な」


 おやっさんに言われた通りに、琉はパルトネールを取り出して叫んだ。


「チェィンジ! マシン・アードラー!!」


 すると水の中から勢いよくアードラーが飛び出て来た。そして次の瞬間、腹部が開き、ヒレをたたみ、頭が伸び、尻尾をたたみ、腹部から二つの車輪が出して、アードラーはなんと大きなバイクに姿を変えたのである!


「これは!? 流石はおやっさん、頼んでもないことを平気でやってのけるッ! ……それにしても、本当に派手だな……」


「おやっさん、すごーい!! うわぁ、これどうなってるんだろう……」


 琉は驚き、ロッサはアードラーのあちこちをちょこちょこと触っている。その様子を見て、老人は笑いながら言った。


「なぁに、これはサービスじゃ。二人とも、ワシらトヴェルクの技術を舐めるんじゃないぞ! カッカッカッ……」


 高笑いするおやっさん。トヴェルクという種族は高い技術力を誇り、バイク変形はその基本と言われるほどである。同時に派手好きな者が多く、彼らの作るモノはとにかく大きかったり装飾が多かったりするのである。しかしただ派手好きなだけでなく、アードラーの濃い青に白のマダラ模様は陸上で見ると確かに派手だが、水中では保護色になるように設計されているのだ。


「なぁ、おやっさん。喜んでいる所に本当に申し訳ないが……」


 二人を驚かせて満足するおやっさんに、琉は言った。


「実は俺、大型二輪の免許持ってないんだが……船舶ならあるけどね」


 その後、一週間ほど教習所に通うことになったのは言うまでもない。


~次回予告~

「こいつがオムライスだ」


「オルガネシア? アルカリア?」


第九章、完結です。そして重要なお知らせ。

タイトルを変更致しました。『Mystic Lady ~復活編~』

そして、次回の第十章で第一部を完結致します!

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