『ミッション・インポータント』 その3
教会内に潜入し、恐るべきこの宗教の姿を目にした琉とロッサ。一方外では縛られていた見張りが仲間に発見されてしまい……!!
~メンシェ教会3階 資料室~
「案外すぐに見つかったな。しかし結構広いんだな……。よし、ここはいっちょ二手に分かれよう」
琉はロッサに、フードの男から奪った懐中電灯を手渡すと探り始めた。
「悪魔の瞳……ん? “悪魔関連の書籍”だと!? よし、探りを入れるか! ロッサ、何か見つけたらまずは俺のところまで来てくれ。良いな?」
琉は一つずつ照らしてはタイトルを確認した。因みにこの世界の“本”というのは電子書籍が大半で、カードを手持ちの携帯電話かPCに差すことで読むという仕組みとなっている。更にノート機能といい、内容をインストールして機械の中に保留することも可能となっているのだ。教会の中も例外ではなく、琉はヴァリアブールに関連する資料を見つけるとすぐさま携帯にそれを差し、全ての章を落とすとその場で読み始めた。
「えー何々……『ヴァリアブールには第3の目がある。これを失うと力の半分を失い、更に行動が混乱する。よってこれを殺すにはまずこの目を奪い、紅蓮のもとに清めると良いと言われている』……するとあれを取り戻すとロッサの本来の力が戻るという訳か。確かに、今のままでも便利な能力を持ってはいるがあまり戦えてる様子ではないしな……」
そうしてる最中だった。
「琉、あった! わたしの目!!」
ロッサが近くまで来て琉にそう言った。
「本当か! よし、俺もそっちに向かうぞ」
ロッサに袖を引っ張られ、琉は本棚の間を縫うように進んだ。やがてそこには、大きなガラスの箱に入れられた、真っ赤な宝玉が置いてあったのだ。
「どれどれ『悪魔の瞳』……よし! どれどれ、特に仕掛けをした跡はないな……そうとなりゃ、こいつを頂いてさっさとトンズラするぞ!」
琉がガラスの箱を開けようとした、その瞬間だった。
「緊急指令! 緊急指令! 教会内に不法侵入の形跡が発見されました! 総員、直ちに侵入者を排除して下さい!!」
アナウンスと共に、部屋中の明かりが点って更にサイレンがけたたましく鳴り始めた。
「しまった、いつの間に!? とにかくロッサ、こいつは頂いてくぞ!!」
そうしようとした瞬間だった。資料室の扉が強引に開けられ、中にフードの男達が5人ほど入ってきたのである
「探せッ! 探せェッ!! おいお前ら、そっちは見つかったか!?」
一人がこちらに近づいてくる。
「今のところ見つかってない! 何処にいるんだ!?」
ロッサが男声で話した。なんとも迫真の演技である。
「この部屋だというのは聞いたんだがな……。そうだ」
男はローブの内ポケットから何かカードを取りだした。
「そっちもカード見せてくれ。一応、確認取らないといかんから」
琉とロッサは真似してローブから同様のカードを取り出し、男に渡した。男はカードを受け取ると、まじまじと見始めた。一方琉はロッサの耳元でこう言った。
「こりゃばれるぞ。良いか、こいつが叫びそうになったらすぐに眠らせるんだ」
琉とロッサは構えた。男はカードを見ながら、怪訝そうな表情でこちらの顔をしきりに見てくる。そして……
「いたぞ!! ……うぐぐっ!?」
男は声を上げたが、顔をロッサの手で掴まれ、琉のパルトネールで鳩尾を突かれて気絶した。
「今声がしたな! あっちか!?」
フードの男達がこちらに向かってくる。
「ちっ、声が漏れたか! だが良い。むしろ好都合だぜ!!」
琉はパルトネールを思い切り振りかぶると、勢いに任せてガラスケースに叩きつけた。ケースは見事に砕け散り、中から出てきた宝玉をつかさずロッサが拾い上げて握りしめた。第三の目はロッサの体内に入り込んで行く。そこにまたしても教徒が駆けこんできた。
「貴様ッ! 我々の教会に直接殴りこむとはいい度胸だな!!」
「褒めてくれてありがとよ。んじゃ!」
そういうなり琉はパラライザーを放って次々に気絶させた。
「逃げるぞ! ……おいどうした?」
琉はローブを脱ぎ捨て、ロッサを抱えて走ろうとした。だが、ロッサの様子がどうもおかしい。額を押さえ、何やら呻いているのだ。
「……誰? 誰なの……?」
「おい! ロッサ!? ……これは!!」
なんとロッサの髪と胸が急激に回復している。そして手をどけると、彼女の額は何やら疼いているのだ。
「第三の目を入れた影響か? とにかく、戻らないと!」
道を急ぐ琉。気付いた教徒は槍を片手に走ってくる。
「悪いな! 俺は昔っから早撃ちは得意なんだ!!」
琉はパラライザーを放ちながら廊下を駆け抜けた。階段の手すりに乗っかって滑り降り、走ってきた教徒に蹴りをいれ、ロッサを抱いたまま全力疾走する琉。左手に女を、右手にはトライデントを変形させた銃を。
「これは……わたしの声……?」
青い影は聖殿を踏み荒らして駆けてゆく。駆ける間も、ロッサは上言を繰り返していた。一階に着くと、教徒の姿はほとんど見られなかった。裏口に向かって急ぐ琉。扉を蹴り、外に出た時だった。
「わざわざ自ら裁かれにいらすとは……ご苦労様です。彩田琉之助……でよろしかったですかな?」
ついに第三の目を自らの身に宿したロッサ! しかしこの目は一体彼女に何をもたらしたのか!?