『ワケが分からないよ』 その3
遂に放たれた処刑の炎。琉とロッサ、紅蓮に散るか!?
騒然となる教徒達。焼け跡には十字架と鎖しかないのだ。
「こんな状況で抜け出せるモノか。きっと灰まで残らず燃え尽きたのだろう!」
「そんな馬鹿なことがあるか。探せ!」
男達は探し始めた。だが、
「その必要はない。パルトネール!」
辺りに低めの声が響く。直後、男の一人が持っていたパルトネールが勝手に動き出し、何処かへ飛んでいったのである!
「あの銃を追え! その先にいるはずだ……うッ!?」
飛んで行ったパルトネールを一人の男が追う。しかし彼はオレンジの閃光に撃たれ、動かなくなった。
「寝込みを襲おうなんて味な真似をするじゃねぇか。そんなにロッサの寝顔が見たかったのか?」
琉はパルトネールを構えたまま、島の奥の森から出てきた。
「貴様! いつの間に抜けだした!?」
「抜けだしたのは俺だけじゃないぜ。ロッサ、液化攻撃!」
琉が茂みに向かってそう言うと、そこから謎の赤い液体が飛び出て来る。液体は男達の間を素早く飛び回り、ぶつかった者は次々と吹き飛ばされた。男達を一掃すると、液体は琉の近くで女性の姿となった。
「馬鹿な! 弾は当たったはず……」
「弾? こいつの事か?」
琉はポケットから銃弾を出して見せた。
「摘出したらご覧の通りさ」
「な!? いつの間に?」
~数十分前~
十字架にかけられた琉。しかし火を放たれる直前、琉はすでに鎖を解いていた。長い遺言の正体は“時間稼ぎ”だったのである。
「“芸は身を助ける”か。しかしメンシェ教には、どうやらこの業界の人間がいなかったらしいな」
抜けだした直後、琉はそう言った。ラングアーマー装備者は皆、水中でロープやハルムの触手に絡まれた際の為に“縄抜け”というスキルを身に付けているのだ。これは縛られた部位の関節を外し、すり抜けて再びくっつけるという荒業である。琉は高く積まれた薪と炎を隠れ蓑にして脱出したのだ。
「ロッサ、今助けるぞ!」
琉はロッサの十字架の背後に回ると、その十字架を豪快に引き抜いた。火から離して見てみると、彼女の左肩には穴が開いている。先程の銃弾である。
「こいつを撃たれてからだ、様子がおかしいのは。確か彼女の力を封じる効果が、て言ってたな。よし、摘出してやるか!」
琉は懐からメスとピンセット(この業界の人は常に持っている)を取り出すと、彼女の左肩にその先端を入れた。
「うっ! ……ぁあっ!!」
「ロッサ、我慢してくれ。すぐに終わる!」
激痛に声を上げるロッサ。彼女を励まし、弾丸を取り出す琉。
「よし、取れた! ロッサ、出られるか?」
するとロッサは液状になり、鎖をすり抜けた。
「予想が当たったか。ロッサ、隠れよう!」
琉はロッサの肩を担ぎ、近くの茂みまで走ったのである。
「ロッサ、けがは大丈夫か……!?」
「けがなら大丈夫、問題ない」
ロッサの左肩はすっかり元通りとなっていた。
「……なるほど、液化した際に治ったか。よし、あの炎が消えたら攻撃する。さっきまでの借りを返すぞ、良いな?」
~回想終了~
「ロッサ、先にカレッタまで飛べ!」
琉がそう言うとロッサは液化した。メンシェ教徒達の間を突き抜けて、カレッタ号まで飛ぶロッサ。彼女は相手に当たる瞬間のみ実体化し、強烈な体当たりを食らわせていた。蹴散らされる男達。そこを更に琉のパラライザーが襲う。相手は手も足も出ず、瞬く間にロッサはカレッタ号にたどり着いた。
「パルトネール・チェイン!」
琉はパルトネールからトリガーパーツを外し、チェインに変えるとカレッタのへりに向かって分銅を放った。鉤を引っ掛けると、そのまま琉は鎖を縮める事で飛び乗った。操舵室に走り、すぐさまシステムを立ち上げるとカレッタ号は勢いよく走りだした。相手も相手で船に乗り込み、こちらを追って来る。
「全く、しつこい奴らだぜ! ヌーカスパウダー!」
そういうなりスイッチを押す琉。すると船の後方から特殊な粉が吹き出した。たちまち辺りの海水が粘液状に固まり、メンシェ教の船はその場から微動だに出来なくなった。
「な、しまった!」
パニックを起こすメンシェ教の船内。するとモニターに琉の顔が映った。
「ええい、殺すなら殺せ! こんな生き恥さらすくらいなら……」
一人がそう叫ぶ。しかし琉はこう返した。
「俺に“前科”は不要だぜ。しばらくそこでじっとしてるんだな。グッバイ!」
遂に危機を脱した二人。危うくこんがりローストされる所でした。しかしメンシェ教って恐ろしい宗教ですね! 自分で描いといて何ですがww