『ワケが分からないよ』 その2
十字架にかけられた二人。果たして二人に何があったのか?
男達はいきなり飛び掛かってきた。
「パルトパラライザー!」
琉の早撃ちが炸裂し、男達は瞬く間に倒れ込んだ。しかしまだ足音がする。琉はパルトネール・シューターを構えたまま、部屋を飛び出た。このままではロッサが危ない! 案の定、ロッサの部屋は開けられていた。直後、液化したロッサが部屋から飛び出てきて琉の目の前で実体化した。
「ロッサ! 大丈夫か!?」
「琉! 怖い人達が入ってきて、それで……」
ロッサは怯えている。
「何処だ! 何処に行った!!」
ロッサの部屋の中から怒号が響く。たちまち男が一人出て来た。そこにつかさず、オレンジ色の閃光が襲いかかる。琉はロッサの部屋に入ると、男達目掛けてパラライザーを撃った。たちまち男達の動きが止まってゆく。
「ロッサ、こっちだ!」
琉はロッサを連れてブリッジまで走る。襲いかかるフードの男達。迎え撃つ琉。ブリッジに着いた時だった。
ダーン!!
背後で強烈な銃声が轟いた。
「うっ!?」
銃弾はよりにもよってロッサに当たってしまった。
「くそ、不意打ちか!」
琉は撃った男を見つけて尽かさずパラライザーを放った。
「ロッサ! 大丈夫か!?」
そう言う間にも男達の攻撃が続く。琉はパルトネールを通常形態に戻すと、ナイフを弾いて応戦した。しかし、
「彩田琉之助! 無駄な抵抗はやめろ!!」
ロッサが捕まった。
「ふん、押さえた所でどうにもならんのは分かってるはずだ。ロッサ、液化するんだ!」
しかしロッサが液化しない。息を荒げ、苦しそうである。
「バカめ! あの聖弾には悪魔の力を封じる効果があるのだ。大人しく裁きを受けよ!!」
流石の琉も多勢に無勢。更に入り込んできたメンシェ教徒。琉は押さえつけられ、腹を強く殴られた上にパルトネールを取り上げられた。こうしてメンシェ教徒達の手に落ちた琉とロッサ。二人は無人島まで引っ張り上げられ、十字架に縛り付けられたのである。
~回想終了~
メンシェ教徒達は十字架の下に薪を並べ始めた。
「おいお前ら! “裁き”を通り越していきなり死刑とは何事……アガッ(痛っ)!?」
琉は薪を並べている男達に怒鳴りつけたが、その薪で腹を殴られた。ほとんど動けなくなっていたロッサに対し、琉はひどく殴られて体中にアザが出来ていた。そうこうしている間に、十字架の下には薪が並べ終わっていた。
「火を着けろ!」
男達が松明を掲げて近付いてくる。
「おい! 火ぃ着ける前にこれだけは聞いてくれ!!」
諦めたのか、琉は男達に言った。
「良いだろう! 何が言いたい?」
男の一人が火を着けるのをやめさせ、琉に聞いた。
「へっ、話の分かる奴で良かったぜ。良いか、俺が死んでもカレッタ号は残しておいてくれ。将来、ラングアーマーを着る事になる子供達の為にな。それから俺とロッサの灰はハイドロ島に埋葬してくれ。俺に限らず、船乗りっていうのは死んだ時くらい故郷の土になりたいモノだからな。それからこうやって火刑にするのは俺とロッサで最後にしてくれ……」
琉は男達に片っぱしから願いを言った。全て言い終わると、琉は一息ついた。
「……これで全部だ。短い人生楽しかったぜ。親父、俺もそっち行くよ……」
琉はそう言って目を閉じた。
「分からないよ……」
隣ではロッサが、息も絶え絶えに言った。
「どうして皆、琉とわたしをいじめるの? わたしが、何をしたっていうの? ワケが分からないよ……!」
「ロッサ……。守ってやれなくてすまなかったな……」
悲痛の声を上げるロッサに、琉はそうとしか言えなかった。
「さぁ、異端者と悪魔の最期だ! 火を着けろ!!」
松明から薪へと火が移る。たちまち二人の影を炎が覆い尽くす。しばらくして、炭と化した十字架と、鎖がそこに残っていた。
「ついに死んだか!」
「見ろ、骨すらも残ってないぞ!」
メンシェ教徒達の歓喜の声が上がった。しかし、その一人があることに気が付いた。
「いや、待て! 灰すらも残ってないというのはどういうことなんだ!?」
一体どうなったのか? 次回をお楽しみに!