『ワケが分からないよ』 その1
~前回までのあらすじ~
海底遺跡の棺から目覚めた美女、ロッサ。彼女の記憶を探るべく、発掘したキャプテン琉は各地の海底遺跡を回る事を決意した。謎の宗教に狙われながらも、何とかエリアαに向かった二人。そこでオドべルスの襲撃にあった二人であったが、ロッサの不思議な(かつ恐ろしい)力で見事乗り切ったのであった!
さて、今回のお話は?
「くっ……」
「うぅ……」
無人島。海底遺跡“エリアα”のすぐ近くにあり、探索船の基地としても利用されている島である。しかし今は……。
3つ程連なる船の残骸。島の浜に立てられた2つの十字架。そこに縛り付けられた男女。そしてそれを取り囲むのはフードを被った男達。手に持った火の着いた松明が、夜の闇を明るく照らしている。
「偉大なるメンシェの神の名の元に、異端者彩田琉之助と悪魔ヴァリアブールを火刑に処す!」
リーダー格と思われる一人がそう言って松明を掲げると、周りの男達もそれに同調して声を上げた。
「異端者と悪魔には死を!」
周りがそう連呼する中、一人の男が縛り付けられている者、琉とロッサに近付いて言った。
「何か言い残すことがあるか?」
「どうして、どうして……」
ロッサは、自分に降りかかった理不尽に対し涙を流した。
「フリムン(馬鹿者)が……。こんなことをして、タダで済むと思うなよ?」
聞いてきた男に啖呵を切る琉。果たして、この二人に何が起こったのか。
~数時間前~
オドべルスの襲来を退けた琉とロッサ。近くの島に停泊し、食事を取った後、二人は壊された箇所を直して回り、ロッサはその手伝いをしていた。
「扉のダメージがひどいな。ガチガチに閉めといたはずなのに無理やり剥がされたのだから相当なモノだよな」
琉は予備の材料を取り付け、簡易的な扉を作り上げた。
「ロッサ。そっちの様子はどうだ?」
「どこもかしこも傷だらけ。多分、掴まってた跡だと思う」
ロッサは背中から翼を出し、傷ついた箇所に塗料を塗って回っていた。
(助かるぜ、今までより断然効率的だな。ただ、周りの船にだけは気をつけておかないと……)
作業は夕方までかかった。
「ふう……。ロッサ、今日はもう晩飯にしよう」
「うん!」
琉はロッサにそう言うと、そのまま食堂へと向かった。
食事を終えると、二人はそれぞれ自分の部屋に戻った。
「明日は早速作業だ。今日は早めに寝ておこう」
琉がロッサにそう言ったのだ。今日はロッサに早めに休ませないとダメだと考えたためである。
「もう電池を換えないとな。しかしこれからは消耗が激しくなりそうだ」
琉はパルトネールの手入れをしていた。この道具、実は電池で動いている。
「トライデント用の電池が今までよりもっと欲しいかな。明日辺りオキソ島に行っとかないと……」
“パルトネール”というのは彼の付けた名前であり、道具の名称としては“トライデント”という。ラングアーマーの装備者でなければ扱うことが出来ず、訓練を終えると訓練施設からこれを一つ送られるのである。装備者はその時自分のトライデントに名前を付けるという習慣がある。因みにトライデントの電池は施設でしか買うことが出来ない。そしてオキソ島というのは、琉がかつて訓練した施設のある島である。同時にここからの距離も比較的近い島でもあった。
「オキソか……。懐かしい。こっちならまだ安全なはずだよな」
オキソ島には亜人種も棲んでいるためメンシェ教は布教し辛いはず、琉はそう踏んでいたのだ。
夜も更け、琉はそろそろ寝ようかとふとんを敷き始めた。が、そのときだった。
「うわっ! 何だ、何だ!?」
船に大きな衝撃が走った。琉は大きな揺れが収まってすぐに窓を開けると、そこには見事に横付けされた船があった。直後、こちらの船の中をバタバタと走る音が聞こえて来る。
(海賊か!? よく嗅ぎつけてきやがったな)
そう思った瞬間、自分の部屋の扉がこじ開けられた。
「ルームサービスか? お断りだぜ」
琉はそう言いながら、パルトネールを構えて後ろを振り返った。しかしそこにいたのはなんとフードの男達ではないか!
「な、メンシェ教!?」
「いたぞ! 捕えろ!!」
いきなりピンチなロッサ&琉。どうやって切り抜けるのでしょうか!?
なお、今回から章の最初に「前回までのあらすじ」を入れる事にいたしました。